いちばん
一番にきっとなる
テストのたび
成績が良かった私は言った
結局なかなか一番なんて取れなくて
10位以内がやっとだった
高校になる頃には
一番なんて言わなくなった
近いけど遠い距離
私には無理だったんだ
私は遊びだして
どんどん、成績を落としていった
ある日友達に演劇の代理を頼まれた
背格好が似ていて
頭がいいからセリフを覚える事ができるだろう
それだけの抜擢だった
だけど演劇の世界は私を夢中にさせた
のめり込んで
友達よりもずっと役をもらえるようになってた
友達は誘うんじゃなかったと
よく私を小突くけど
嫌味な感じはない
ライバルになって追い抜いて行くのを
むしろ喜んでくれてる感じだ
初主役を取った時
家族が総出でみにきてくれた
母や父は家に帰ってこい
主役一つで食べて行ける世界じゃないぞと
言われたけど・・・
おばあちゃんが舞台裏に迷子になりながら来て
座ってる私の頭をなでてくれた
「やっと元の喜代に戻ったね」
私は不思議そうにおばあちゃんの顔を見る
「一番なんてどうでもいいのよ
でも一番になろうと頑張ってた喜代は輝いてた
夢を追っかけてる喜代はあの頃に戻ってるよ」
私はその一言で
涙があふれた
大事なもの何もわかってなかった
今の今まで
一番なんてどこに行っても何をしても一人しかなれない
でも何かを頑張ろうとすることは
みんなできる
私は今舞台役者の卵として頑張ってて
それは小さい頃頑張り続けてた
私が居てこそなんだ
ありがとう・・・私
そして、おばあちゃん
2023.9.20
咲いた咲いた 御等野亜紀 @tamana1971
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