アベレージ

ヤナミ ウリュウ

プロローグ

照りつける日差し、響く声援


人々は白球の行方に一喜一憂し、熱気がスタンドを包み込む




そんな熱い試合の中、1人熱くなれない少女がいた




夏のリトルシニア女子野球全国大会の決勝


2点ビハインドで迎えた9回裏、ツーアウトランナー1塁


一弓はバッターボックスで構える後輩の姿を、ネクストバッターズサークルから見守る




「絶対に先輩まで繋ぎます!」




バッターボックスに向かう直前、彼女は一弓にそう宣言した


そして今、相手投手から8球も粘りなんとか出塁しようと必死になる彼女を


一弓はどこか冷めた気持ちで見つめていた






そして9球目、相手投手の決め球であろうカーブに彼女のバットは大きく空を切る




ドッと球場が沸き相手チームのメンバーがマウンドに集まり抱き合う




「先輩...すみません...私...」




「別にいいよ、来年頑張って」




大粒の涙を流す後輩の肩を軽く叩きベンチへ下がる


悔しさとか悲しさなんて感情は全く無かった


野球というスポーツに対する情熱を、いつの間にか失ってしまっていたから




こうして一弓の中学最後の試合は幕を閉じた

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