第37話⁂愛する琉生兄ちゃん!⁂
2017年5月昴24歳は、六大学最高峰K大学を卒業して、警視庁刑事部捜査第一課勤務に勤務している。
昴は、今尚悪夢に苛まれている。
昴は何故、刑事になりたいと思ったのかというと、今から彼此15年以上も前に起こった連続行方不明事件、南砂町近辺で行方不明になった18歳から25歳までの男性6人の行方を追っているのだ。
それは父幸三郎の言った一言が、引っ掛かって頭から離れないからなのだ。
あんなに優しい兄が「行方不明事件に関与しているかもしれない」
そんな言葉を聞いて憤りを感じた昴は、何とかあの兄の無実を証明してやりたい一心で、刑事になったと言っても過言ではない。
あんな異質な兄だったが、昴にはとても優しい大切な兄だったのだ。
両親がラ-メン店の仕事で家に居ないのを可哀想に思い、よく森に連れて行ってくれたものだ。
森に出掛ける時は真夏だろうと、真冬だろうと、ぬかるみが有るので昴が嫌がるのも聞かず、長靴をはかされて出掛けたものだ。
まだ歩く事もおぼつかない昴は、よく駄々をこねたものだ。
「こんなんじゃ歩けな~い」
すると決まって兄は「もう昴は甘えんぼだな~」
昴はその言葉を待っていましたと言わんばかりに甘えて「わ~いうれちい~」
兄の背におぶられながら喜び勇んで出掛けたものだ。
兄のあの優しい背中の温もりを、今でもはっきりと覚えている昴。
まだ赤ちゃんに毛の生えたような昴だったが、今でも鮮明に覚えている。
あの森に連れて行ってくれた日の高揚感を、昨日の事のように思い出す。
嬉しくて嬉しくて気持ちが高ぶり「もっと奥まで連れてって!もっと!もっと!」
森の中をあてもなく、まだ3歳になったばかりの昴を、背におぶりながら、ぶらぶらあてもなくどこまで出掛けたものだ。
美しい野花や鳥のさえずり、更には昴の大好きなカブト虫や蝶々、カラフルな虫などに「キャ-キャ-」喜び興奮しておしっこをする事も忘れて、よく兄の背中におしっこを漏らしたものだ。
優しい兄は、おしっこの付いたパンツを袋に入れて、まだ17歳の男の子のやる事はこんなもの。
仕方なくタオルで縛り付けて、「○ン○ン隠そうね」と優しくさとして、またぶらぶら森の中を連れ回してくれたのだ。
17歳の男の子に出来る精一杯の賢明な選択なのだが、人から見れば笑いの種。
どういう事かと言うと、替えのパンツを用意してくればいい事を、そんな事がまだ分からない兄琉生なのだが、そのお陰で反対に昴は大満足。
タオルの絵が大好きな名探偵コナンだったので、どこか誇らしげだった昴。
また静寂の中、月光に照らされ紫に光る神秘的な森の美しさに圧倒して、一瞬歩く事も忘れ只々立ちすくんだものだ。
又遠い日の、まだ昴が幼い頃、よく渋谷のラーメン倉庫にも琉生兄ちゃんに連れられて行っていた思い出がある。
両親も店が軌道に乗って忙しいさ中の事だ。
あんな特異性のある琉生だが、昴の子守だけは自分から買って出るほど一生懸命やってくれた。
北山の暴言暴力が日常茶飯事だった絶望的な琉生の日々に、ある日奇跡が起きるのだ。
それは琉生が中学3年生の時に、突如として現れた坊や。
昴が現れてからと言うもの琉生の心には一筋の光が宿った。
いつもどんな時も、漫勉の笑顔を向けてくれる、向日葵🌻のような可愛い坊や。
この可愛い昴にだけは、固く閉ざされた心の扉を開いた琉生なのだ。
邪険に扱われる事しかなかった幼少期の琉生だったのだが、昴の出現によって唯一笑顔を向けてくれる可愛い昴に、いっときの安ど感を見出していた。
昴も何かに付けて、琉生兄ちゃんの後を付け回していたものだ。
あの冬の日の琉生の最初の凶行の日も、昴は琉生兄ちゃんと一緒だった。
{あの日も「昴はこの部屋で宝探しゲームをしていてね。兄ちゃんはお友達とお話が有るからね。そう言って琉生兄ちゃんは鍵を掛けて隣の部屋へ行ったんだ。」そして琉生兄ちゃんが、折り紙で作った、まあるいコインと猫やパンダを何処かに隠してくれたんだ……俺はそのゲ-ムが大好きで夢中になって捜したんだ…そして等々全部探したんだ……アア~?でも・・兄ちゃんがいない?、、、つまんないな~?…そう思い・・俺は別の扉を開けて…兄ちゃん探しに・・ウロウロ探し回ったんだ……そして・・そしてお兄ちゃんの居る部屋を見付けたんだ……アアアアアア!!!!あの時‥あの時見た真っ赤な花の形・・床に大きな真っ赤なバラの形の絵の具で塗りつぶされた?…アア~?余りにも綺麗だったので暫く見入っていたんだ……あれは誰かを殺害した・・血が飛び散った後だったのでは???}
父幸三郎が「……琉生は狂っているから何とかしなくては」電話でおばあちゃんと話していたのを耳にした昴だったのだが、きっと自分でその言葉を頑として受け付けないように、仕向けていたような気がして来た。
{実は俺にも父の幸三郎が、ポロッと口走った事が有ったのに……その言葉を無下に突っぱねていたんだ…アア本当にバカだ!「琉生が行方不明事件に関連しているかもしれない?」……その時は・・その時は‥父を恨んだものだ‥「あんなに優しい兄ちゃんを殺人者扱いして許せない!」……ああああ!琉生兄ちゃんの傍で……そんな恐ろしい凶行の一部始終を…知らず知らずの内に断片的に見て居ながら・・アア~?今更俺が犯人探しだなんて・・・とんだお笑い草だ……どうして‥どうして琉生兄ちゃんの異常性に気付けなかったんだ。あああああ!}
それから北山のおじちゃんと琉生兄ちゃんが死んだ日の事も、あまりの恐怖に無理矢理記憶の奥にしまい込んでいた昴だったのだ。
今でもあの時の悪夢が一瞬蘇る事がある。
小学校3年生の昴は、近年近所で行方不明者が続出している事を危惧して、家にはおいて置けないと両親に連れられて、あの夜ラ-メン倉庫の二階に上がった時に見た光景を一瞬思い出す事があるのだ。
きっとあまりにも恐ろしい出来事だったので、自分自身に知らず知らずの内に、自分の記憶からシャットアウトしていたのではないだろうか?
断片的に襲ってくる記憶。
{父幸三郎が物凄い剣幕で北山のおじちゃんを罵りまくし立て……?どの位経ったのか……?北山のおじちゃんの、もがき苦しみ目ん玉をひん剝いて、うめき声をあげながら死に行く姿、確か???首に???そして血の海の中で横たわる兄琉生の悲惨な姿!!!!…でも核心部分が…アアアアアア思い出せない?}
そしてその後、慌てて家路を急いでいたのだが、父の携帯電話に警察から通報があり、また逆戻りしてラ-メン倉庫に向かって見たあの炎の凄まじかったこと。
{ガガガガアアアアアア――――ッ!嗚呼あああああ――――怖い‼怖い‼怖い!!ああああああ!ううううう~!ガ———ッ!ああああ!真っ赤な炎が勢い良く爆発して、その塊が物凄い勢いで襲ってくる!一体何なんだ?何かが焼ける???異様な匂い……それは……?人なのか……?ああああ!}
そして山田君殺害犯人を追い詰めて見えてきた真実に、成す術もなく立ち尽くすのだった。
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