第35話⁂徐々に浮かび上がる真実!⁂


 山田君が八代先生と昴の関係を友達に話した事によって、あわや懲戒免職処分を受けそうになった八代先生だが、昴の発言で事なきを得た。


 だが、八代先生と昴の噂を聞いて心穏やかじゃない人物がいる。


{例え噂であっても、よりによって星友学園きっての美男子昴とそんな噂になるなんて、子供と言えども強敵どころか、こんな俺では歯が立たない}


 諦めきれない水嶋先生は、八代先生を取られたくないばかりにとんでもない強行に出る。


 何とか八代先生を振り向かせるために、水嶋先生は山田君にとんでもない頼みごとをした。

 その2日後に変わり果てた姿で発見された山田君なのだ。


 それは水嶋先生の、何としても八代先生の気持ちが昴に傾かない為に考えた、苦肉の策。

 実は水嶋先生はスポ-ツ万能で転任早々、卓球部のコーチに就任していた。

 その為接する事も多かった卓球部の顧問の八代先生に、一方的に思いを募らせていった。


 水嶋先生が山田君にとんでもない頼みごとをしたとは一体どういう事?

 それはこういう事だ。

「俺は昴君と八代先生の噂を耳にして心を痛めているんだ・・そこで相談なんだが、このままでは2人の未来が台無しになる………そうだろう?‥だって八代先生は懲戒免職処分、それから・・昴君だってこれからの人生にそんな……先生とのスキャンダル……良くないに決まっている・・そこで思い立ったんだが、かなり荒業だとは思うのだが、2人を何としても引き裂きたいと思っている・・・そこで相談なんだが昴君の悪い噂を流して学校に通えないくらいの打撃を与えてやって欲しいんだ。何か良い策は有るか?」


「アッ!それは有ります。………昴君を快く思わない連中も少なからずいます・・何故かと言いますと……?昴君のせいで好きな女子から振られた奴は沢山います………口にこそ出しませんが、かなり頭にきている奴は多いと思います・・・それに女子の方も誤解している子が少なからずいます………それは昴のせいではないのですが・・あちこちで声掛けられたり、プレゼントを貰ったりしているので・・パッと見で軽い浮ついた誰とでも付き合うプレイボーイに移っている事も事実です………実際にはそんな奴ではないのですが」


「アッそれ良いね!どうしようもないプレイボーイで男子の彼女を奪っていい気になっている。又女子との付き合いも千々に乱れて、あんな男と付き合ったらゴミクズのように捨てられる。全員の敵だ!………そう噂を流せばいい!‥それから君の全国高校選抜新人合宿の件、絶対に行けるように取り計らってやるから!」


 そして山田君は、全国高校選抜新人合宿に出場が決まった。


 だが、この噂に異議を唱える生徒が現れ、山田君はとんでもない目に合う。

 それが引き金になり死へのカウントダウンが?



 また元演劇部員の中にも、山田君を恨んでいる河野君と言う男子が居るのだが、実は山田君の発した言動によって、半年前に河野君の彼女が自殺していたのだ。

 そこには思いも寄らない事件が隠されている。


 実は河野君の彼女直美ちゃんは、幼少期から山田くんと家が近所という事も有り友達付き合いが続いていたのだ。


 硬派な山田君は中学の3年間、いつ告ろうか考えあぐねていたにも拘らず、シャイな性格が災いして等々告白する事が出来なかった。


 一方の直美ちゃんは近所ということもあり、赤ちゃんの頃からの顔見知りだが、兄弟のような感覚でしかなかったのだ。


 さしてときめく程のイケメンでもなく、ずんぐりとしたひょうきんボーイに親しみこそあれ、男と意識した事など一度も無かった。

 だが、彼此16年の付き合いも有り、強い信頼関係で結ばれていた。


 そんな時に事件は起きた。

 河野君はスポーツ万能でやんちゃな風貌の、照れたしぐさが何とも可愛い万人受けする、昴の次に人気の学年ナンバー2のイケメン。


 その風貌から自分に自信があり、高校生の癖に女の子をひっかける事しか頭にない、とんでもないイケイケのマセガキなのだ。


 直美ちゃんは、こんな女をひっかけ弄ぶ事しか出来ない、とんでもない男に引っ掛かりながらも夢中になってしまったのだった。

 そして妊娠してしまった。


{こんな一大事何とかしなくては?}

 そこで河野君にその事実を告白したのだ。


 すると案の定、直美ちゃんを避け出したのだ。

 やっぱり卑劣な男。


 直美ちゃんは河野君と連絡が付かず、お腹の赤ちゃんは段々成長するし、かといって親に相談する事も出来ない。


 そこで竹馬の友山田君に藁をもつかむ思いで相談したのだ。

 こんな重大な事を誰にも相談出来ない。

 山田君の他に誰に、こんな恥ずかしい事を話せようか?どうにもならなくて山田君に相談したのだった。


 山田君にして見ますと、もう顔を合わせても以前のように仲良くしてくれる筈もなく、煩わしそうに足早に去って行く直美ちゃんの後ろ姿を見るのが常日頃となっていた今日この頃。


「今日相談に乗って欲しい事があるんだけど、いつも遊んだ近所の公園で会ってくれない?」


「ああ~?アア~いいとも!」


 山田君は嬉しくて嬉しくて夢のよう。


{又以前のように付き合って行けるかもしれない、そうなったら今度は自分の気持ちを正直に話そう}そう思いイソイソと出掛けていった。


 すると思いも寄らない言葉に、あまりのショックと同時に、自分の中の何かが完全に粉々に壊れてしまった感覚に襲われたのだ。


{男女が付き合っていたら当然の事なのかもしれないが、俺の中のあの直美ちゃんが男とそんな関係を結んでいたなんて………そして、その証の赤ちゃんが出来たなんて・・許せない!許せない!許せない!汚らわしい!}


 我慢が出来なくなった山田君は2人を恨みボロボロにしてやりたくなったのだ。

 そしてその事実を友達に話した。


「あの女ったらしの河野の奴が、赤ちゃんの頃からの俺のマブダチ直美ちゃんに手を出して妊娠させたらしいよ?‥酷い奴だな河野は……俺が言ったとは言わないでくれよ!」と口止めして言い触らした。


 その噂はあっと言う間に学校中に広まり、学校の校長先生、更には担任の先生それに直美ちゃんとその両親、河野君とその両親交えての懇談会のが、毎日のように行われた。

 そんなある日直美ちゃんが電車に飛び込み自殺してしまったのだ。


 若気の至りで行ってしまった行為だが「まだ子供なのに不届き旋盤」


「こんな事が教育委員会に知れたら一大事!名門校の名前が地に落ちる」


「高校生で妊娠したなどハレンチにも程がある!どうやって育てるの?」


 学校側と家族から2人は責められまくっている。


 その中でも一番傷付いたのは直美ちゃん。

 若気の至りで行った行為と言えども、産むにしろ中絶するにしろ身体は傷つき、河野君には捨てられ、先生と両親たちにも散々攻めまくられ、行き場を失った直美ちゃんは等々自殺を図ってしまった。


 だが、この自殺の裏には思いも寄らない真実が隠されていた。

 河野君は一見ヤンチャなイケイケプレイボーイに思われていたが、あの時直美ちゃんの為に高校を中退する覚悟をしていたのだ。


 親にも全てを打ち明けてこっ酷く親に怒られ、まだ結論が出ないので直美ちゃんと会う事が出来なかったのだ。


 そんなさ中に直美ちゃんを失って、噂の発信者が山田君だと分かり、怒り心頭の河野君だが、その恨みは相当なもの。


「あいつは殺しても殺したりない!グウウウウウウウ――――ッ!」

山田君を八つ裂きにしたい思いで一杯。


 10月31日のあの山田君殺害事件の日は、舞台衣装担当者達が製作した新着衣装のお披露目も兼ねての練習が行われていた。


 魔法使いとおばあさん合わせて6人がロ-ブ姿だが、あの日、魔法使いのA君が具合が悪くて学校を中途で帰っている。

 誰かがA君に成り済まして故意に紛れ込んでいたのだ。



 後で分かった事だが………{今日は新着衣装のお披露目の日なので何としても出席しなくては}と思ったA君だったのだが、それでも容態が思わしくなかったので、親友のB君に演劇部に連絡して貰ったのだ。


 実はこのB君は元演劇部員の河野君だったのだ。

 この裏には恐ろしい真実が隠されている。


 段々事件の核心部分が見え隠れてして来たが…………?



 それから事件の数日前に、幸三郎家の離れに上った時に、山田君は重大な過ちをしていた。


 それはどういう事かというと、その日は、たまたま琴美は様態が悪く朝から離れで休んでいたのだ。

 幸三郎も琴美に付きっきり。


 その時に山田君はこの離れの事を、ひた隠しにしている幸三郎が居るにも拘らず、ご丁寧に自分の自己紹介を行っていた。


「あの~?僕は昴の友達の山田隆です。昴君に用が有って来たのですが?……何か物音がしましたので………?誰か居らっしゃいますか?」


 幸三郎家が、ひた隠しにしている妻琴美の病名は、絶対誰にも知られたくない。


 やがて恐ろしい事件の真相が浮かび上がって————




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