第33話⁂自傷行為!⁂
そういえば昴が実母弓枝と15年ぶりに再開したにも拘らず、自傷行為にふけるようになったのは何故なのか?
それは確か、中学3年生の青々とした空に、コスモスが燃え立つ炎のように揺れる秋の日の、あの電話から始まった。
実はそこには驚愕の真実が隠されていたのだ。
それは頻繫に感じる、昴の跡を執拗に付きまとう誰かの、怪しげな影の正体。
その怪しげな影は、日を追うごとに頻度を増し押し迫って来る。
それと父幸三郎の余りにも卑劣な行動だ。
ある日の事、何かしら感じる胸騒ぎ。
{ひょっとしたら僕の思い過ぎかもしれないが……?それでも余りにも頻繫に感じる影の正体}
後を付け狙う影に怖くなって、等々父幸三郎に相談した。
「最近、頻繫に僕の後を付きまとう人影を感じるんだ。僕の思い過ぎかもしれないけど?」
そんな話を父幸三郎に話した数日後に、幸三郎と琴美が昴が住んでいる祖父母宅に、顔を出した。
たまたまその日は祖父母は留守だったのだが、そんな時は大概近所のステ-キ屋さんに連れて行ってくれるのが習わしだ。
だが、今日は何か様相が違う。
あれだけオシャレに気を使う母が、どういう訳か?髪は乱れて、ワンピ-スが所々汚れていた。
まあ~?そうは言っても、祖父母宅と実家は、歩いても1時間と掛からない近距離の為に、健康を気遣って歩いて様子伺いに顔を出す事もチョクチョクある。
{うっかり者の母が足を踏み外して、どこかで転んだのだろう}とさして気にも留めずにいた。
それでは何故母のワンピースが、汚れていたのかということだ。
それはある日、突然祖父母宅に掛かって来た一本の電話なのだ。
「あの~?まことに不躾ですみません。……あの~?昴君いますか?」
「アッ!ハッハイ!・・・どちら様ですか?」
「……上野と申します。昴君を電話に出して欲しいのですが?」
「……上野?……エエエエ-?どちらの上野さん?」
「…………」
「……ひょっとして…?生き別れのお母さんですか?今更何の用ですか……」
「プ-プ-プ-」
祖母とのこんなやり取りが有ってからと言うもの、祖母が電話に出ると電話がプツリと切れてしまう事が度重なった。
祖父母にして見ると{今更息子を返せなどと虫が良すぎる、ましてや琉生も死んでしまった今、大切な昴を取られて堪るものか!}そう思い琴美に早速電話した。
そんな事を聞いた琴美は心配になり、居ても立っても居られず、昴の後を付けていた。
又幸三郎も最近は琴美も容態が安定しているので、安心して自由にさせていたのだが、昴の言葉に啞然とする。
{まさか琴美がまた病気が発症して、昴の後を付け回しているのでは?}
そう思い後を付けたら案の定、祖父母宅に向かっている琴美を発見した。
そこで連れ戻そうとして、手荒な真似をしてしまった。
その為に倒れてしまい、ワンピースが汚れてしまったのだ。
後で分かった事だが、あれだけ頻繫に付きまとっていた人影の正体。
実は母琴美だけでは無かった。
実は成長した翔が双子の存在に気付き、どうしても昴に会いたいと言うので、仕方なく伝えた。
「有名ラ-メン店、三郎軒の息子よ」
一方の弓枝も今更気が引けたのだが、一気に会いたい気持ちが押し寄せてきて、堪える事が出来なくなってしまった。
母弓枝にしても、お腹を痛めた可愛い息子、一分一秒たりとも忘れた事の無い息子に、一気に愛おしさが込み上げ祖父母宅に電話をして来たのだ。
母から「昴は、有名ラ-メン店三郎軒の息子として成長している」そう聞いた翔は居ても立っても居られず、昴会いたさに有名店三郎軒を探し当てて、昴を尾行していた。
するとやはり夕食は、三郎軒に寄る事も多い昴に会う事が出来た翔なのだ。
こうして翔は、頻繫に昴の後を付け回して話す機会を狙っていた。
兄弟に会いたい一心で、付きまとってくれた事は嬉しい限りだが、何も分からない昴には只の恐怖でしかなかった。
こんな負の連鎖が重なり昴は、自傷行為に走ってしまった。
それでも昴も両親に久しぶりに会い、楽しい会話と美味しいステーキをご馳走になりその後別れたのだが、一瞬目を疑う行為に啞然となった昴なのだ。
それはどういう事かというと………。
別れて直ぐに、一瞬昴が振り返った時の事だ。
昴がもう見ていないと思ったのか、母の手に手錠の様なものを掛けているではないか……?
そこで、これはただ事では無いと思い後を付けたのだ。
暫く後を付けていると、「何よこんな事をして~外しなさいよ!」
母琴美が文句を言っていたかと思うと、その時父幸三郎が母を思い切り叩いた。
一瞬目を疑ったが………。
{これは何かあるに違いない?あんな優しい父にこんな恐ろしい一面が有ろうとは……?あのワンピ-スの汚れといい、これはひょっとして僕の知らない所で母琴美に暴力を振るっているのではないだろうか……?昨今テレビで取りざたされているDV夫なのかもしれない?}
父幸三郎の裏の一面を知った昴は、兄の琉生が亡くなってショックも冷めやらぬ中、母までが父親のDVによって命を落としかねないと思い、早速祖父母に頼み込んで夏休み明けに家に戻った。
家に戻った昴は、今まで祖父母の家にいたので、親の事など全く気にも留めていなかったのだが、早速目を凝らして両親の実態を探っている。
するとやはり時折何やら不審な行動が見られる。
受験生だから、塾に出掛けて夜遅く帰宅する事が多い昴だが、時折塾の都合で早く帰宅する事があるのだ。
2人は何やら凄い剣幕で夫婦喧嘩の最中。
「お前が北山と浮気したから悪いんだ!このヤロウ!」
バタン〷ドスンψ//〷ガタン〷〷
「キャ――――ッ!ヤッヤメテ――――ッ!」
こんな事が度々繰り返されていたのだ。
幸三郎は北山との浮気を、今尚根に持って許せずに暴力を振るう事で、うっぷんを解消していた。
まあ~仕方のない事だが、何も弱い女性に暴力を振るう事は無いと思うのだが…………。
最近はこれでも暴力はかなり減った方だ。
それは琴美の統合失調症の発病が原因だ。
幸三郎も、これでもかなり抑えているのだが、””カ――――ッ””となると見境が付かなくなる。
両親の事で心を痛めていた、そんな秋の日に、本当の母親だと名乗る弓枝から電話が入った。
そして、いつの間にか強引に、強制的に、本当の両親徹と弓枝の家で、生活する事になった昴。
マンションでの生活は本当に充実した幸せな日々だったのだが、父徹の兄が交通事故で亡くなり、独り身の兄が飼っていた引き取り手の無いペットのニシキヘビを、檻に入れてマンションに運んで来た。
その時に記憶が一瞬蘇った。
{北山のおじちゃんの、もがき苦しみ目ん玉をひん剝いて、うめき声をあげながら死に行く姿、確か???首に???そして血の海の中で横たわる兄琉生の悲惨な姿!!!!}
それから頻繫に後を付け狙う影の恐怖が、交互に押し寄せ、悪夢にうなされる日々が続いた。
「ガガガガアアアアアア――――ッ!嗚呼あああああ――――怖い‼怖い‼怖い!!ああああああ!ううううう~!ガ———ッ!ああああ!今日も真っ赤な炎が勢い良く爆発して、その塊が物凄い勢いで襲ってくる夢を見た!一体何なんだ?何かが焼ける???それは……?人なのか……?ああああ!怖い!怖い!怖い!」
恐ろしい悪夢に苛まれて、更には、全く知らない双子の兄弟翔が存在する事など全く知らない昴は、頻繫に後を付け狙っている、只々見えない影の恐怖に脅かされているのだった。
また父幸三郎の母琴美に対する、言われ無き暴力に心を痛め、無力感に苛まれて正常な精神の容量を超えてしまった昴は、自傷行為をする事で精神の安定を図っていたのだ。
{ガガガガアアアアアア――――ッ!自分を傷付ける事でアアアア‼……この恐怖から解放される}
そして、その恐怖から逃れるために、家にある使い捨てライターでスポーツ焼けした健康的な黒褐色の腕を、じりじりと焼いている。
{ああああ!こうしている時だけが嫌な事から解放されてスッキリする。命を絶とうとは思わないが、死んだらどんなに楽か~?}
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