第32話⁂離れの住人は?⁂

  



 2017年8月下旬の事だ。

 太陽の欠片をしたひまわりがポトリ、ポトリ、と落ちて**・🌻

 名残惜しそうに夏の終わりを告げている。


 昴は、現在六大学最高峰K大学を卒業して警視庁に勤務。

 高校生の頃に両親の下で数か月間生活をして、その後幸三郎家に戻る時に、実母弓枝から聞いた幸三郎家の秘密それは…………。


 幸三郎一家に送り込まれた翔が、離れで見たものだった。

 それは琉生の忘れ形見である、巨大化したペットのアミメニシキヘビ3匹と更には、他の部屋には開かずの間が存在していて、床下に続く地下が有った。


 その開かずの間には何が隠されているのか?

 更には、翔の証言では床下に続く地下には、何か意味不明な水槽が所狭しと無造作に放置されていたとの事、そして何やら怪しげな匂いがしたとの事。


 そして秘密の断片が少しづつ明らかになって来た。

 両親から離れへの侵入を堅く禁じられていた昴はあの日、両親が出掛けた隙にあの日はしごで二階によじ登って、すりガラス越しに見た素早く勢い良く動く正体。

それは琉生が飼っていた、3匹のニシキヘビ蛇の仕業だという事が、分かって来たのだ。


 蛇が巨大化しているので、六畳間が蛇専用の部屋になっている。

 特に餌の冷凍マウスには勢いよく飛び付く。

 その素早さときたら迫力があり、恐怖で足が竦む思い。


 昴がはしごで二階によじ登ってすりガラス越しに見た時、たまたま誰かがニシキヘビに餌の冷凍マウスを与えていたのだ。

 3匹もいる蛇が勢い良く一気に加速して、餌に飛び付いていたので余計に迫力が有ったのだ。


 じゃ~?あの日部屋で餌やりをしていたのは誰だったのか?

 それは幸三郎。


 あの日は琴美の様態も落ち着いていたので、幸三郎は琴美と連れ立って店に出勤したのだが、琴美の容態が急変した為に急遽帰宅したのだ。


 店にいても、いつ暴れるか分かった者じゃないので、自分では運転せずに琴美を押さえ付けて店の従業員に家まで送って貰ったのだった。


 だから、車がなかったのだ。

 昴も車が有ったら離れの二回に上ったりしない。

 車も置いてないし、母屋は物静かだったので、両親が家に居ないと思い梯子で二階に上がった。


 それでも家族だったら母の病気くらい知っている筈なのだが、何故何も聞かされていなかったのか?


 それは幸三郎が、病気が病気。

 こんな統合失調症の母では可哀想だと思い、隠していたのだ。

 それと、店が忙しかった為に、母も容態が良い時は店に出勤していたので、あえて話さなかった。

 また母の容態が悪化する事も有ったので、学校が母の実家から近い事もあり、小、中学校時代は祖父母宅から通学していたので、分からなかった。


 父幸三郎にしたら、たった一人の大切な息子{いつ急変するかもしれない、統合失調症の母では昴が可哀想、また学校に知られてもチョット恥ずかしいので……それから、また暴れ出して昴に何かあっては取り返しが付かない}と思い学校に近い琴美の両親宅で育ったのだ。


 それはそうだ。実は母琴美は統合失調症が悪化すると、暴れる事が度々有った。


 症状が悪化すると物凄い力で、何かに取り憑かれたような状態で暴れ出し、外を歩き回るので、出歩かないように離れに閉じ込め、厳重に鍵が掛けられていたのだ。

病状の悪化時には幻覚や被害妄想が現れ、悪魔に取り憑かれたかの如く暴れ回り、奇声をあげるのだった。


「アアアアアア!殺される――――ッ!キキキキキ――――――――ッ!」


「オイ!しっかりしろ!俺が付いている!」


「ギャギャ———————ッ!ウウウウッ!」


「大丈夫だ!」


「グウウウウッ!ガアアアアアア――――!」


 薬で落ち着く時もあるのだが、チョット薬を止めると、こんな状態。

 その為、症状が悪化すると離れに閉じ込めていた。


 こんなきちがいでは近所に気付かれてしまう。

 ご近所さんに気付かれないように、離れは防音室になっている。

 世間体もあるから、ご近所さんには妻の病名は伏せてあるのだ。

 幸三郎も大変。



 それでも離れで生活する、30歳過ぎのフードを被った人物は誰だったのか……?

 実はそれは琴美だったのだ。


 琴美は、以前統合失調症で1年程入院生活を送っていたのだが。

 容態が急変する時もあるので入院させたいのだが、入院を嫌がり容態が悪化の一途を辿っていた。


 それでも最近は良い薬もあるので、そんなに嫌がるのに無理強いも出来ない。

 その為、家で療養していたのだ。


 だが、大暴れする時は離れの6畳間に閉じ込めても、興奮状態が収まらず危険。

 余りにも酷い時は紐で縛り付け動けなくして、猿ぐつわをしていた事もあるのだ。


 それは琴美が、暴れ出して怪我をするかもしれないから。

 それでも薬が効いて機嫌のいい時は、パソコンをのぞき込み笑顔を見せる時もあった。


 あのフードを被って口角を上げて笑っていた30代の人物、それは琴美だったのだ。

{エエエエ———————ッ!琴美はあの時はもう既に50歳過ぎ。一体どういう事?}


 まあ~?それは女性だから~?お化粧もしているし…?元々琴美は、若く見えるから……?


 **統合失調症**

【統合失調症は、考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く精神疾患で、その原因は脳の機能にあると考えられている。

約100 人に1 人がかかるといわれている。

思春期から40歳くらいまでに発病しやすい病気。

症状:妄想、幻覚、思考障害、陰性症状感情の平板化(感情鈍麻)思考の貧困意欲の欠如、自閉(社会的引きこもり)、認知機能障害、記憶力の低下、注意・集中力の低下、判断力の低下】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る