第31話⁂北山殺害犯人!⁂



 あんなに相容れない北山と琉生に一体何が有ったのか?


 時間の経過とは思い掛けない奇跡を起こすものだ。


 ひと頃はあんなに琉生を邪険に扱っていた北山だが、一体何処、北山と琉生が最近は頻繫に一緒に出掛けるようになったのか?


 それは北山にまだ子供が居ないという事が挙げられる。

 実は北山は乏精子症(精子が少ない)が原因で、結婚して早3年、未だに我が子をこの手に抱くことが出来ずにいる。


 先生からも子供を授かる可能性は極めて薄いと言われている。


 人間とは勝手なもので、この手に抱くことも出来ないと思えば思う程、どんな事をしても手に入れたいと思うものなのだ。


 あんなに煩わしい、恋敵の幸三郎にもどことなく似ている琉生が、憎たらしくてならなかった北山だが、最近は一変して、琉生か昴のどちらかを我が子にとまで思うようになって来ている。


 そこで仮初めの親子関係に浸っているのだ。


 それは一方的な北山の思い。


 琉生の思いは全く違う。

 そんな両者の相反する思いから残虐な事件が起こってしまう。


 現在琉生は都内の私立六大学の一角H大学四年生の22歳だ。

 ラ-メン倉庫の二階に隠し持っていた、ホルマリン漬けの小動物を親にとがめられて、最近はラーメン倉庫の二階の出入りを固く禁じられていたが、相手が北山だから両親も文句は言えない。


 幸三郎にして見ても仕事にかまけて、構ってやれない負い目があるので。


 そこに、まるで我が子のように可愛がってくれる北山に感謝こそあれ、文句なんか言えた義理ではないのだ。


 二人はラ-メン倉庫に向かった。

 そして親子のような穏やかな時間が流れる。


 やがて何か……琉生の異常な目付き…………不穏な空気が?


 幸三郎夫婦も不穏な空気を隠しカメラで確認して、居ても立っても居られず慌てて現地に向かう。

{まさか?あれだけ言ったにも拘らず、異常性愛者の琉生がまた興奮して北山を残酷に、殺害するかもしれない?}



 どれだけっ経ったのか、いきなり琉生が背後からダンベルで北山の頭を殴り付けた。


 ””バタン””と倒れる北山。


 完全に意識が無い。


 背後から襲い掛かる琉生。


「アアアアアアアア———————————!憎い!憎い!憎い!・・・・アアアア!グウ!グウウウウ!………それ以上に興奮する!嗚呼‼嗚呼‼」


 するとその時、北山が息を吹き返し物凄い勢いで琉生に襲い掛かって来た。

 そして傍に有った箱型パソコンを、琉生目掛けて勢い良く投げ付けた。


「ギャギャ———————————!」


 辺りは血の海と化した。




 ラーメン倉庫が炎に包まれ大惨事となったあの日、2002年6月の事だ。

 幸三郎と琴美は、昴も連れて渋谷のラーメン倉庫の二階に上がった。


 凄惨な現場となった部屋に入った3人が見たのは、おびただしい血の海で倒れた琉生と北山だった。


「オイ!オイ!大丈夫か?オイ!」


 幸三郎と琴美は琉生と北山に歩み寄り揺り動かす。

 するとその時、2人に気付いた北山がムックリと起き上がった。


「ああああ~!良かった~!もうどうなったかと心配したよ」


 一方の琉生は出血が酷くて既に息絶えていたのだ。


「ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭琉生~!ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」

「よくも俺の可愛い琉生を殺したな~!許せない!許せない!許せない!」


 すると北山が{琉生が・・琉生が……悪いんだ!………………}延々と自分の自己弁護をする。

 北山に完全にキレた父の幸三郎が凄い剣幕でまくし立てている。


「クッソ——————ッ!この野郎!俺の大切な息子を殺しておいて・・自己防衛ばっかりで……お前みたいな奴は真っ先に刑務所にぶち込んでやる!……それから・・それから…お前たち………北山、それと…琴美……俺が何も……知らないとでも思っているのか……この野郎…よくも…よくも…俺の目を盗んで長きに渡り、乳繰り合いやがって…………クッソ———ッ!よくも騙してくれたな————!」


 昴はあの時、誰かが凶器で北山を……殴り付けて・・?そして勢い良く炎が燃え上がったと言っていたが、肝心要の犯人が全く思い出せない。


 実は昴がおぼろげに見た現実は、若干どころか…?

 大きく異なっていた。


 あの時、琉生と北山はダンベルと箱型パソコンで、恐ろしい殺し合いの果てに琉生は、残念なことに22歳の生涯を閉じたが、その後もっと恐ろしい現実が待っていたのだ。


 箱型パソコンを思い切り投げた事によって、アミメニシキヘビの檻が壊れた。

 そこにドカドカと幸三郎と琴美、更には昴が現れ怒鳴り合いが始まった。


 蛇は普段は温厚な性格だが、比較的にデリケ-トで環境の変化に左右されやすい動物。


 檻に勢い良くぶつかって来た箱型パソコンの、威力と余りの爆音に、檻がぺっしゃんこに潰れて、ヘビは恐怖のあまりに””ニョロニョロニョロニョロ””外にはい出て来た。

 そこにきて、愛する飼い主、琉生を殺してくれた恨みだったのか、どうだったのか、

 分からないが(残念ながら多分違います)


 もう5年も買われていた、この巨大化したニシキヘビが、あまりの出来事に興奮状態に陥り、北山の首目掛けてグルグルと巻き付き、不気味に舌をペロリと出して北山を舐めています。


 ヘビは舌を出して匂いの粒子を集めて、獲物か外敵かを判断するらしいのだ。

 残念なことに巨大化したアニメニシキヘビに、人間が飲み込まれた事例は現在も後を絶たない。

 本当に恐ろしい事。


 そしてニシキヘビは、勢い良くギュギュっと北山の首を絞めた。

 その時に琴美が、仮にも一時は死ぬほど愛した男。

 助けようと台所にあったすりこぎ棒を、勢い良く蛇に投げ付けた。


 だが、その時首の骨がポキポキと折れる音がしたのだ。

 北山は完全に死んでしまった。



 するとその時、幸三郎が「ヤメロ興奮状態の蛇にそんな事をしたら危険だ逃げろ!」

 そして3人は、この興奮状態の蛇の恐怖に慌てて逃げ出した。


 運良く渋谷と言えども、人通りの少ない場所にあった為に、誰に目撃される事もなく車で一目散に逃げる事が出来たのだ。


 その時に北山のタバコの吸殻を、ニシキヘビが暴れた拍子にひっくり返して、瞬く間に火の海と化したのだ。


{エエエエ———————ッ!じゃ~?琉生の死体はどうしたかって?}

大切な息子しっかり持ち帰ったのだ。


 それはそうだ。あんな不気味な暴れる蛇の傍においてはおけない。


 その後、蛇も隙間から逃げ出して保護された。

 生前、琉生が唯一可愛がっていた忘れ形見。


 こんな不気味な蛇など直ぐにでも手放したかったのだが、息子の形見どうしても手放せなかったのだ。








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