第19話⁂家族一丸となって!⁂


 ある日幸三郎の母親が三郎軒に電話を掛けている。


「おふくろ~?なんだよ~こんなに忙しいのに~?何の用だい?」


「何か……家の中が妙に異臭が漂っているけど~?見てくれない?」


「ああ~?分かった!」


 三郎軒の定休日の月曜日に、早速実家に顏を出した幸三郎夫婦。


「フ~ン?……確かに・・何か匂うな~?」


「何か………二階から匂いません~?」


 琴美の一言に、以前幸三郎夫婦が住んでいた二階に上がる。


 何か…………感じる胸騒ぎ————

 以前夫婦の寝室として使っていた部屋から何か………異臭が?


 ドアを開けようと近づくと鍵が掛かっていて開かない。

 そこで鍵をぶち壊して中に入った。


 すると恐ろしい事に寝室には青白く、如何にも、恨めしそうに、こちらを睨み付けるように、ホルマリン漬けにされた人間の生首が五体もあった。


「キャ——————————————ッ!」


「なっなんてこった~?ああああああ!どうしたら?どうしたら良いんだ~?」


「あなた~?ワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭」


 すると姑が凄い剣幕で「琴美さんあなた何しているのよ~!こんな恐ろしい事が起きるまで何も気付かないなんて————もう!…何とか言いなさいよ!全く出来の悪い最低の嫁だ!今まで何してたのよ!…………全部あなたの責任よ!嗚呼~?何て事を……近所での異臭騒ぎはコッこれだったのね!…琴美さんあなたが悪いのよ~!そうでしょう?幸三郎が修行で岩手に出掛けている時に男を連れ込んでいたらしいじゃないの?……琉生が小さい時に家で何度か預かった事が有ったのよ、その時にこのアザどうしたの?って聞いた事が有ったのよ、すると『おじちゃん……北山のおじちゃんが殴ったワァワァ~~ン😭ワァワァ~~ン😭』って言って泣いたのよ、それで私カ——ッ!と頭にきて琴美さんあなたに『あなた達を養うために幸三郎が修行してるっていうのに男連れ込むってどういう事!いい加減にしなさい!』と言って電話したでしょう?………そうしたら『高校の時の同級生で幸三郎の友達で、そんな変な関係じゃ無い、子供の躾の一環で軽く手を出した事もあった』って言ったじゃない、私もそれ以上言えなかったけど?………全くあなたの不行き届きよ!」


「おふくろ~?今更そんなこと言ったってどうしようもないじゃないか?……それより琉生を警察に突き出したら昴の将来だって滅茶苦茶だし、俺が苦労して築き上げたラーメン店もおしまいだ……第一こんなとんでもない殺人鬼が俺達の子供だと知れたら一家諸共社会から抹殺されるどころか、名前を変えて生きていても直ぐにバレる。どこで写真が出回るかも知れない……そんな事したら行く先々で殺人鬼の家族と罵られてちゃんとした仕事にも就けない………絶対にこの事は隠し通して俺達の手で琉生の奇行を監視しよう!」


 こんな恐ろしい現実を目の当たりにして家族は、一家心中も視野に入れるほど追い詰められている。


 行き着いた先は(この悍ましい現実を絶対秘密にして、何が何でもしらを切り通そう!噓を付き通そう!こんなケダモノ、きちがい、殺人鬼をどんな事をしても守ろう!)という事になった。


 そして早速行動開始。

 家族一丸となって琉生の行動をチェックしている。

 最近琴美は、もう店には殆ど出ないで従業員に任せきり。


 幸三郎は定休日の月曜日に琉生の行動を監視している。


 そんなある日の幸三郎の店の定休日の事だ。

 大学を出て来た琉生は、駅方向に向かったかと思うとマ○ド○ル○に入り、お気に入りのハンバ-ガ-セットを注文している。


 30分位すると店から出て来て駅前の本屋に入って行く。

 何か………物色するようにウロウロうろ付いた挙句……見知らぬ若い男の子に声を掛けている。


 自分のルックスに自信が有る琉生は、何のためらいもなく男の子と何やら話し合っている。


 何を話していたのか分からないが、二人は笑顔で別れたのち琉生は、書籍を2~3冊買って、愛車に乗り込み都立図書館に向かう。


 そこでPM7時まで時間を潰すと愛車に乗り込み夜の闇に消えた。


 勿論幸三郎もタクシーで後を付けた。


 すると先程の本屋で話していた男の子と、東京駅八重洲南口で待ち合わせていたらしく、琉生の愛車に乗り込み走り去った。


(一体何処に向かうのか?)


 するとやはりその男の子を誘って実家の、二階に上がって行った。

(琉生の奴一体何の為に男の子を殺害して、ホルマリン漬けにするのだろうか?)


 いつも窓ガラスが、半開きになっている箇所がある事を知っていた幸三郎は、そこから様子を伺っている。


 もう…携帯も出回っていた時代の事だ。

 幾ら親子と言っても相手は人間の皮を被ったケダモノ、何か有ってはと早速一階のおばあちゃんに電話した。


「俺に何か……あってからでは遅い、今から俺も中に入るから待機して居てクレ!」

そう電話したのだ。


 しばらく様子を見ていると・・男の子の身体を引き寄せ見つめ合っている。


 そして何か……男の子同士でキス・・?何か如何わしい行為に及ぼうとしている。


「コッこれは何を仕出かすか分かったもんじゃ無い!」


 慌てて部屋に入った幸三郎。


 するとその時、頭に鋭い激痛が走り記憶を失ってしまった幸三郎。


 欲望を成就する為なら親を殺す事など……?

 只の化け物化してしまった息子琉生。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る