第17話⁂山田君殺害犯人?⁂
あんなに相容れない北山と琉生に一体何が有ったのか?
時間の経過とは思い掛けない奇跡を起こすものだ。
ひと頃はあんなに琉生を邪険に扱っていた北山だが、一体何処、北山と琉生が最近は頻繫に一緒に出掛けるようになったのか?
それは北山にまだ子供が居ないという事が挙げられる。
実は北山は乏精子症(精子が少ない)が原因で結婚して早3年、未だに我が子をこの手に抱くことが出来ずにいるのだ。
先生からも子供を授かる可能性は、極めて薄いと言われている。
人間とは勝手なもので、この手に抱くことも出来ないと思えば思う程、どんな事をしても手に入れたいと思うものなのだ。
あんなに煩わしい、恋敵の幸三郎にもどことなく似ている琉生が、憎たらしくてならなかった北山だが、最近は一変して、琉生か昴のどちらかを我が子にとまで思うようになって来ている。
それだけ2人の坊や達が、可愛らしいお坊っちゃんだからという事になる。
かと言ってそんな夢みたいな話、絶対にあり得ない事。
そこで仮初めの親子関係に浸っているのだ。
それは一方的な北山の思い。
琉生の思いは全く違う。
そんな両者の相反する思いから、残虐な事件が起こってしまう。
現在琉生は、都内の私立六大学の一角H大学四年生の23歳。
ラ-メン倉庫の二階に隠し持っていた、ホルマリン漬けの小動物を親にとがめられて、最近はラーメン倉庫の二階の出入りを、固く禁じられていたが、相手が北山だから両親も文句は言えない。
幸三郎にして見ても、仕事にかまけて構ってやれない負い目があるのだ。
そこに、まるで我が子のように可愛がってくれる北山に感謝こそあれ、文句なんか言えた義理ではない。
二人はラ-メン倉庫に向かった。
そして親子のような穏やかな時間が流れる。
どれだけっ経っただろうか、いきなり琉生が背後からダンベルで北山の頭を殴り付けたのだ。
””バタン””と倒れる北山は完全に意識が無い。
背後から襲い掛かる琉生。
「アアアアアアアア———————————!憎い!憎い!憎い!・・・・アアアア!グウ!グウウウウ!………それ以上に興奮する!嗚呼‼嗚呼‼」
するとその時、北山が息を吹き返し、物凄い勢いで琉生に襲い掛かって来た。
「ギャギャ———————————!」
辺りは血の海と化した。
「オオオッ!お~い!物凄い火の手が上がっているぞ~?」
その夜この倉庫は、物凄い勢いで炎が燃え上がったのだ。
幸三郎夫婦も慌てて現地に向かう。
「キャ———————————!まさか?まさか?ル 琉生が焼け死んだ???」
焼け跡から焼け焦げた死体が、一体見つかった。
その死体は一体誰なのか???
**********************
そして年月が経ち*⋆*・。
2010年10月31日山田君が殺害された日。
実はあの日は11月15日に行われる、この星友学園の学園祭に向けての演劇部の衣装合わせの最終チェックが行われていた日なのだ。
その為ロ-ブ姿に身を包んでの練習が行われていた。
演劇部部長のB君が脚本を手掛けた意欲作『魔法使いのおばあさんと王子様』魔法使いの衣装に身を纏い、本格的な練習に余念がない。
あの日もすっかり遅くなっていた。
だが、人の噂によると、どさくさに紛れて人数が多かったのではないかという事なのだ。
ともかくオタク気質で凝り性の部長は、臨場感を出すために暗闇での練習を強要してくる。
部員たちの意見も聞かず、強引にライトを落としての練習も多かったことから………?
これを誰かが、千載一遇のチャンスと思い紛れ込んでいたのでは………?
そして着々と山田君殺害に向けての準備をしていたのでは?
それでも山田君は人当たりの良い、誰からも悪く言われる筈の無い人物なのでは?
確かに、一見山田君は温和で優しそうな人物に移っているが、反面、実は裏では酷い暴言を吐いて弱い者いじめをしていたらしいのだ。
要は良い恰好しいの最低男子。
利用価値のある相手や強い相手にはとことんへいこらして、弱者にはその反動から陰で散々弱い者いじめをしていたらしい。
長い間、柔道教室にも通っていた山田君は、柔道2段の腕力で散々弱い者いじめをしてその挙句「バカ、死ね、カス」とやりたい放題だったらしいのだ。
まあ~?山田君も可哀想な子だ。
こうなる動機?発端というものが有ったのだ。
実は母親が子宮癌で亡くなり、悲しみも癒えない内に後添いがやって来たのだが、その継母が何かにつけて山田君虐めをしていたのだ。
連れ子の可愛い我が子は可愛くて仕方ないのだが、山田君が目障りで気に食わない。
そして壮絶な継子いじめが始まった。
そのはけ口が弱者に向かったのだ。
山田君に殺意を抱いていた人物は、他には八代先生も挙げられる。
昴との関係が学校側に知れたら即刻首どころか、もう公務員として働くことは出来ない。
まあ~?それでもこんな事位で人殺しをしていては、たまったものではない。
だから——この線は薄いが?
それからこの事件の数日前に、昴の家の離れに山田君が忍び込んだ事は………?
これは何か………?関係があるのか???
山田君は誰に殺害されたのか………?
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