第12話⁂行方不明の北山は?⁂




 昴がこの港区のマンションに越して来て、3ヶ月程経ったある日の三郎軒社長、山本幸三郎邸で不審な行動をしている男の姿が有る。

 と言ってもまだ若い少年のようにも思える?


 実は、それは何と昴があの日見た瓜二つの男子翔と言う男の子なのだ。


 この運動神経抜群の翔は学校から帰って来ると、離れを隈なくチェックしたのち、本家と反対方向の窓が開けっぱなしになっている所を、確認して雨樋の金具部分に足を引っかけ二階に上った。


 又何故そんな無鉄砲な事をしたのか?


 一体何のために??

 実はこの家庭ではとんでもない恐ろしい事が、起こっているという噂がまことしやかに囁かれている。

 それでもそんな事は警察の仕事、関係無いのでは…………?


 だが、あの港区に住む徹と弓枝には大有り。

 大切な息子昴の住んでいた家なのだから。


 丁度時期的にもクーラ-を入れるほど暑い訳でも無く、かと言って締め切っていれば暑苦しい、そんな紫陽花も見頃を迎えた6月の事だ。


{この日を待ってました!}とばかりに二階に上る翔。

 そして部屋の中を覗き込んでいる。


 するとテーブルの上でパソコンに向かって、パソコンをいじっている人物を発見、

コッソリと部屋の中に侵入した。


 そろ~り!そろ~り!とそのテーブルの人影に近づいてソ~ッと覗き込むと………?

 何とみかん箱に、頭ほどの大きさのぬいぐるみを置き、フード付きパ-カ-が掛けられていた。


 今まではあんなに厳重に四隅を締め切っていたのに、まるで部屋の中に入ってくれと言わんばかりにカーテンが靡いて………?


 その時、後ろから忍び寄る影………翔は思い切り強く鈍器の様なもので殴られ、その場に倒れた。



 その夜お店から帰宅した幸三郎と琴美夫婦は、昴がまだ帰って居ない事に気付き大騒ぎをしている。


 昴と言っても昴に瓜二つの翔の事も見破れない、この夫婦の余りの観察力の無さには呆れ果てるばかり。


 まあ~?言ってみればそれだけ思春期という事もあり、親を避けて顔を見せないのもあるが?

 でも?瓜二つでも雰囲気で分かりそうなものだが………?


 実はこの夫婦には人知れず思い悩み、苦しみ抜いている秘密があるのだ。

 神経を病むだけの、大きな悩み事があるのだ。

 ですから………何の問題も無い昴にまで気配りが出来ない精神状態なのだ。



 先ずは、行方不明の北山に関する警察からの度重なる追及に、ホトホト頭を悩ませている。

 まあ~?疑われても仕方ない一面もあるので仕方ないが。


 この家庭では、三者三様に北山を殺害する動機がある。


 愛する息子琉生は、あの北山の暴言とあまりの酷い暴力、更には母との如何わしい関係に八つ裂きにしたい思い。

 殺しても殺したり無いと言った方が正解なのだ。

 あの男の自分勝手な身勝手さに、業を煮やして殺害したのだという事なのだ。



 いや~?それは幸三郎も同じこと。

 実はある日、幸三郎が思いの外早く帰宅すると、愛する息子琉生が頭から血を流し倒れているのに気付き、余りの出来事に気が動転して立ち上がる事も出来ない。


 それでも何とか愛する息子を助けたい一心で「オイ!………ルイしっかりしろ!……おい!誰がこんな酷い事を?」


「あああ~!き・た・や・ま・のお・じ・さ・ん!」

そしてルイは気を失ってしまった。


 只々「お~い!琴美居るのか———ッ!タタ 大変だ———!ルル 琉生が?ルイが———!」


 慌てふためいて奥の洋間に行くと、何と愛する琴美と北山が丁度愛欲にふけっている事に””カ———ッ!””となり幸三郎が北山を殺害したのだという事なのだ。



 イヤ!イヤ!妻の琴美も北山に深い憎しみを抱いている。

 愛する息子琉生をこんなかたわ同然の身体にして、その挙句、弄ぶだけ弄んでまるでごみクズでも捨てるように琴美を捨て、若い女性と結婚した北山を到底許せないのだ。


 そしてあの離れの床下には人骨が埋められて………?









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る