第9話⁂弓枝の正体!⁂
昴はある日、母と名乗る女、弓枝に誘われるがままに、郊外の小洒落たイタリアンレストランの個室に入って行った。
もう最近は、気も許せる身内と寸分変わらない位の間柄になって来ている。
昴も人に言えない悩み事をこの母と名乗る女弓枝には、相談出来るまでになって来ている。
もうすっかり手懐けられた感のある昴。
それでも育ての母琴美には無かった温もり、安らぎ、更には優しい子供を思う母の眼差しを、この母といるとひしひしと感じるのだ。
だから琴美が実母では無いと分った時も、普通ならショックで食事も喉を通らないほどのショックなのだが(ああ!やっぱり!)
そんな感覚を覚えたものだ。
レストランで食事を取った後に、デザ-トとコーラを飲んだのだが、その後から全く記憶がなくなった。
一体何があったのか?
それは、この弓枝がこっそりとコーラに睡眠薬を混入させていたのだ。
この弓枝は昴にとっては唯一の安らぎの場所の筈だが、本当は???
(どれだけ経ったのか?…………目が覚めた時には東京のどこなのだろうか?)
オシャレなマンションの一室の、ベッドの上に寝かされている。
目を覚まして見ると、もう5時間以上は経ったのか?
マンションからの夜景は、今までとはまるで違う*⋆。*
トワイライトタイムになるタワーマンション・オフィスビルの明り・築地大橋・勝鬨橋がライトアップし始め*⋆✶
トワイライトの空色と築地大橋やタワーマンションは、ディ-プブル―の夜空にキラキラ輝きなんとも幻想的な世界。
暫くすると弓枝と見た事もない男性が一緒に帰宅した。
その男性はどこか懐かしい、どこかで会った事のあるそんな感覚を覚えるのだった。
(そうだ!この顔は俺に…俺にどことなく似ている???・・・でも?なんか~?どう見てもまともな人間には思えない………?目付きといい、格好といい、まるでチンピラ風情、俺は一体この2人に何を強要されるのか?)
「一体何の真似ですか~?僕をこんなとんでもない所に連れ込んで?」
「ああ~?ゴメン!ゴメン!ここは東京都港区の、カレッタ汐留近くのマンションなのよ!」
弓枝がバツの悪そうな顔で謝る。
すると今度はチンピラ風情の昴に似た男が「実は僕の知り合いの北山が、君の家族と親しくしていた挙句に消息を絶ったんだ・・・それで君にこの家から暫く学校に通ってほしくて、こんな新手な手法を取らせてもらった…チョットあの家族は・・・いわくつきで………?それから何より君に危険が及ぶかもしれないから?・・・それでこんな無茶な事をしたのだ!…実は紹介が遅れたが………急にこんなこと言って君を困惑させたくなかったんだが、君は俺と弓枝の子供なのだ!・・・あの時君を捨てたのには・・・事情があり………どうしようもなかったんだ?許してくれ!」
「エエエエ———ッ!こんな立派なマンションに住めるぐらいの生活に困らない人が、何故僕を捨てたのですか?可笑しいじゃないですか?」
「それには事情が有るんだ・・・・」
この2人の言っている事は本当なのか?
また、あんな商社勤務のエリ-ト北山と、どう見ても裏社会にどっぷりと浸かった、はぐれ者風情の男にどんな繋がりがあると言うのか?
北山は一体何処に消えたのか?
それとも?もう誰かの手によって消されているのか?
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