第8話⁂実母と?⁂
どこで昴の学校を調べ上げたのか、ある日学校の校舎の前に母と名乗る謎の女性の姿が有る。
スラリとした長身美女でド派手な、如何にも水商売風のその世界にどっぷりと染まった年の頃は、どう見ても30代前半にしか見えない女性の姿が…………。
何か怪しげなその風貌は辺りを不気味に………一気に深い闇に誘い込むような、何とも言えない独特の世界観を創り上げている。
この女は一体誰なのか…………?
この謎の女は、昴が校門から出てくると足早に昴に近づいて行く。
「あ~ら昴君?私が・・・?あなたの・・?悪い母親で…本当に御免なさいね、名乗る資格なんてないわね!………会いたくて頻繫に電話している上野弓枝です。『どうしても会いたい!』と言っても会って下さらないので・・・強硬手段に出たのよ!ああああ!どんなに会いたかった事か?」
昴に抱き付き嬉しさのあまり泣きじゃくる母弓枝。
「ああああ!やっと会えた!ウウウウウウッ( ノД`)シクシク…」
「ああああ!止めてくれよ!こんな所で~?」
数人の友達がひそひそ話をしている。
「あの女は誰なんだ~?葵がいるっていうのに全く、モテる男は違うよな~!」
誰も母親とは努々思っていない。
どう見ても年の離れた恋人同士にしか見えない。
それだけ母親弓枝も、稀代のモテ男と釣り合うぐらいの美貌で、何の遜色も無いという事なのだ。
「今日は15年ぶりに会ったんだから、ゆっくり食事でもしながら色んな事を話し合いましょうね!」
「でも家族にも何も言わないで勝手に、捨てた母と会ったら怒られちゃうし~?」
「今日だけは私の我がままを聞いてお願い!」
この母と名乗る女と距離を置いているにも拘らず、強引に押しかけて来るので、度々会うようになって行った。
昴にしてみると育ての母琴美に対して、何か打ち解け切らない距離を感じていた。
それが何なのか?美しく冷たい母に日頃から疑問を感じていたのだ。
それは先ず、家の離れへの立ち入り禁止が挙げられる。
本当の親子なら何でも話せる筈なのに、奥歯に物の挟まったような?
「あそこには絶対に入らないで!」
「何故?僕あのお部屋に入りたい!何があるんだよ~?」
「う~んちょっとね?」
その挙句に父にまで離れへの出入りを強く禁じられているのだ。
「子供は大人の言う事に逆らっちゃダメだよ!」
父にも母にも離れへの侵入を堅く禁じられているのだが、そんな事を言われれば言われるほど入りたくなるのが人間。
ある日両親が店に出払っていない時に、はしごで離れの窓ガラスまで上った事があった。
防音設備の整った部屋にも拘らず、大音響で暴れまくる声なのか、動物が吠えているのか?また生き物の影が……?
あれは人間だったのか?凄いスピ-ドで横切って行く。
「ガガガガ———!グウウウウ———!ガアア———ッ!」
「だだだだだ 誰かいるのですか———ッ?」恐々話し掛けてみた。
するとその大音響がピタリと止まったのだった。
やはり血の繋がりたる由縁なのか?
そんな気を許せる弓枝に家族の秘密も徐々に話し出して行った。
それは父も知らない母の裏の顔なのだ。
「母の琴美には、僕が幼稚園の頃から男がいたんだ。何故分かったのかと言うと、僕が幼稚園の頃に具合が悪くなって、先生に送ってもらった事が有ったんだ。
家も大きいので先生の声が母に届かなかったらしく、仕方なく先生は帰ったんだ。
俺は母の居そうな所を探しまくったんだ。すると奥の客室で母が男と抱き合っていたんだ。…その時は意味が分からなかったが………?僕は見てはいけないものを見てしまったと、子供ながらに感じて自分の部屋に行ったんだ。・・・何か冷たい人を寄せ付けない一面もある母が、あの男にだけは目を輝かせて???………その後2~3回仕事関係の人と紹介されてその男を見掛けた事があったが?ある日を境にピタリと見なくなったんだ!一体何処に行ったのか……?」
本当に北山は何処に消えたのか?
またこの母と名乗る女の本当の目的は何なのか?
生き別れの息子に会いたかっただけではないのだ。
果たしてその目的とは???
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