蜘蛛男爵

鍋谷葵

蜘蛛男爵

 柔らかな日差しが木陰をうねるように差し込むある森のある一本の杉の木の枝と枝の間に、蜘蛛男爵は巣を構えていた。粘着性と強度のある蜘蛛の糸を太っちゃの図体からは考えられないほど器用に張り巡らせていたその巣は、立派なことこの上ない。糸と糸の間は全て等間隔で、枯れ木の葉などのゴミも無く、整然と整えられ、見事な調律と銀糸の輝きを見せていた。


「今日も綺麗だ。我ながら素晴らしい住処だ」


 そして蜘蛛男爵は日々、巣を手入れしながら、どっしりと腰を据えている。他の蜘蛛のように忙しなく獲物を求めて動くこともせず、黒と黄色の縞模様のどっぷりとした腹を呼吸と共に膨らませて、呑気に腹の縞模様と同じ洒落た長い二本の前足で頭を掻きながら朝露の雫を啜り、巣の中で八つの赤い目を全て閉じてくつろいでいる。悠々とした態度は、蜘蛛男爵自身が自分のことを王とまではいかないが、それなりの実力者だということを自負していることの現れであった。

 しかし、それは他の蜘蛛と同じように種族としての習性が為の実力では無い。他の蜘蛛であるのなら、巣を構えたのならわざわざ枯れ木の葉を片付けることなどしない。むしろ、効率よく獲物をおびき寄せるために、大切に木の葉を扱うはずである。特に杉の木の葉は、枯葉になっても枝から生い茂る葉とほとんど変わらないため、ありとあらゆる杉の木を住処とする蜘蛛たちにとって良い隠れ罠である。

 けれども、蜘蛛男爵はこの罠を嫌う。だが、蜘蛛男爵の腹はこの森に住みつく、並べては全世界に住むありとあらゆる蜘蛛の腹よりもどっぷりと太っている。果たして、なぜか? もしかしたら自然界に存在しないはずの銀糸の中に飛び込んで行く阿呆な虫が居るのか? いいや、そんな虫などいくら虫でも居ないはずである。銀糸を見たら大抵の虫は、「蜘蛛だ!」と羽を翻して消え去ってしまう。だからこそ、大抵の蜘蛛は枯葉を罠として活用し、春に散々降り積もる厭わしい黄色の花粉を巣に着けたまま、わざと汚らわしくするのだ。

 ならば、どうして蜘蛛男爵の腹はでっぷりと太っているのか? それは蜘蛛男爵が、男爵である所以である。何の理由も無しに、ただの女郎蜘蛛を男爵呼ばわりしない。蜘蛛男爵は、紛れも無く男爵なのだ。何とも面倒なことに、自然界たるこの森の世界でも階級がある。誰もが王を名乗ることは無いが、それ以外の爵位を名乗ることままはある。無論、それは森の中でも実力ある虫や生き物たち(もっとも叙任式など無く、爵位を持つ者たちが勝手に称号をつけているに過ぎない)が名乗る。

 実力の無い虫が爵位を名乗ったのなら即座に他の爵位を持つ生き物たちに食い殺されてしまうだろう。

 実際、この慣習ができたばかりの時(蜘蛛男爵がまだ子蜘蛛で世間を知らなかった頃)、ブナの倒木に住みついていた一匹の白蟻が自身の一族の安泰を願うため、一種の捕食に対する牽制として伯爵を名乗ったことがあった。これはもちろん、捕食者から腐りきった倒木に住みつく一族を捕食者たちから守るための背伸びをした叙任である。しかし、現実は弱肉強食である。実力に見合わない爵位を名乗った白蟻は、森の中のマスコミたる兜虫や黄金虫などの甲虫によってすぐさま森中に広がってしまい、これを良しとしない蛙伯爵、蛇侯爵はてらてらと皮膚を不気味に輝かせながら、白蟻伯爵の住処へと跳ねて這って行った。


「さてさて食べるとしまいますかな伯爵さん」


「ええ、そうしましょう侯爵さん。けれど、私を睨まないでくださいね。侯爵さんに睨まれたら私の一族は、この悪党に住処に生える平茸のように動けなくなってしまうんですから」


「分かってますよ伯爵さん。何も、私も食いしん坊ではありませんから。たらふく食べてでっぷりと太っている伯爵さんを食べたりはしませんよ。どうせ、白蟻伯爵の一族を食べればお腹いっぱいになりますからね」


「そうですかそうですか」


 飛び跳ねて、這って行く蛙伯爵と蛇侯爵がこうした楽しげな会話をしていたことを兜虫は聞き、広めた。そして、後は想像の通り、兜虫が広めた話の通りである。

 蛙伯爵と蛇侯爵は、ブナの倒木に住みつく白蟻伯爵一族を全て食い殺してしまった。この殺戮もかのマスコミたちよって広められた。そしてこの事件以降、弱き生き物たちは爵位を名乗らなくなったのだ。

 さて、こんな蜘蛛男爵が子供だった頃の残忍な昔話は置いておこう。今重要なのは、どうして蜘蛛男爵が、蜘蛛にもかかわらずでっぷりとした腹を持っているのかどうかの話である。ただ、話はそう絡み合った複雑な話では無い。爵位を持つ人間の生活程面倒臭い話では無い。

 蜘蛛男爵は、単純に森の間で取引をしているだけなのだ。蜘蛛男爵は、取引相手たちからしたら毒にも薬にもならない虫を運んできてもらって食べる。その代わりに、蜘蛛男爵は朝露と杉の樹液を混ぜ、かつて白蟻が住んでいた穴の中で熟成させた酒の様な飲料を報酬として渡している。このように取引を交わしているのだ。ただ、取引相手はもっぱら兜虫や黄金虫などの甲虫である。

 しかしこの甲虫たちが取引相手なおかげで、蜘蛛男爵は寂しい思いもしなければ、新しい情報も手に入れられた。また、この取引と取引相手こそが蜘蛛男爵が爵位を名乗って良い理由なのだ。そして蜘蛛男爵は、他の爵位を持つ者たちが暴虐に振舞っていないか、鳥たちの巣がどこにできたかなど、生存にかかわる情報をほんの少しの労働で手に入れていた。こうして安易に手に入れた情報をもってして、蜘蛛男爵は器用にかつ安全に生きることができていたのであった。

 これが蜘蛛男爵の太った腹の理由である。これだけ聞けば、なるほど蜘蛛男爵は誰からも恨まれることなく、器用な生き方をしていると思われる。

 だが、実際は同胞たちから嫌われており、残酷なる蛙伯爵と蛇侯爵にも何時も何時も高い所に居座って自分たちを見下していると思われている。ただ、この点で留意しておかなければならないのは、蜘蛛男爵はそれらの生き物たちを見下したことはただの一度も無い。むしろ、同胞たちに天敵たる鳥の巣が住処の付近に出来たことを甲虫伝いに伝えたり、蛙伯爵や蛇侯爵には夏の乾いた時期どこが湿っているかをやはり甲虫を橋渡しに伝えていた。しかし、その恩があろうとも蜘蛛男爵は同胞に、他の爵位を持つ生き物たちに嫌われていたのだ。悪戯な話である。

 そうして蜘蛛男爵は知らず知らずの内に、嫌われながら日々を生きていた。ただし、その無知なままの生活が何時までも続くことは無かった。

 終わりはある夏の日。

 正確な年は分からない上、日ひちも分からないがとかく、いつかの夏の話である。その夏は雨が降り過ぎた。随分と長く振り、例年は耳をつんざくほど鳴く蝉も雨天に元気を無くして鳴くことを止め、また雨音のせいで森に住みつく生き物たちの生活音がほとんど聞こえなくなるほど雨が降り続けた。

 降り続ける雨による湿気は、蜘蛛男爵が酒を醸造していた穴にカビが群生させた。見事なまでの白カビが白綿のように木の穴を全体を覆ってしまい飲料の生産ができなくなってしまった。つまり、蜘蛛男爵は甲虫たちとの取引を行えなくなってしまったのだ。


「はて……困った」


 蜘蛛男爵は右往左往してしまった。何しろ今まで拠り所としてた生活手段を奪われてしまったのだから。加えて、蜘蛛男爵はこの夏に入ってからまともに甲虫との取引をしていない。誰のせいでも無い、自然、雨のせいである。蜘蛛男爵は無情に降り続ける雨のせいで、羽が濡れることを忌み嫌う甲虫たちとでは僅かな、救援的な取引すら行えなかった。もっとも、今雨が降り止もうとも蜘蛛男爵が甲虫と取引することは出来ない上、おおよそ甲虫に蜘蛛男爵に無償で食料を与えることは無いであろう。ただ、蜘蛛男爵はこの非情な甲虫の功利的な心を知らないのだ。だから、蜘蛛男爵は情けの救援を心の隅で願っていた。

 如上したように蜘蛛男爵は、生存に必要不可欠な身動きが取れなくなってしまい、一縷の望みも絶たれた。そして、でっぷりとした腹は飢えに飢えていた。数日間の空腹は、冷静な蜘蛛男爵を僅かに焦らせた。ただし、気が動転するほど焦っていたわけでは無い。心の余裕が少しばかり減っただけである。しかし、いくら心を平静に保っていようとも生物としての活動に必要な食料が無ければどうしようない。

 ならば、どうするか。蜘蛛男爵の頭に浮かんだは考えは、今まで助けてきた同胞たちに頼ることである。これだけの雨であろうとも、地面近い場所、露草の間に巣を張っている同胞ならば餌の一つでもあるのではないかと期待してのことである。もちろん、あまり期待してはいないが、それでも何か食料を恵んではくれないだろうかという僅かばかりの甘い期待はあった。

 この期待を胸に蜘蛛男爵は、しばらくぶりに巣から出て行き、杉の木を下って行った。ただ、蜘蛛男爵にとって木を下ることは容易な行動では無かった。なぜなら肥えた腹が重くて、身体が重力のままに地面へと落ちそうになるのだから。


「運動しなければな」


 蜘蛛男爵は自身の不摂生に苦言を溢しながらも、何とか長い八本足を器用に動かして杉の木を、でこぼこで雨に濡れて滑る木の皮の上を下って行った。そして、地面付近に着くころになると蜘蛛男爵の体力はほとんど無かった。これから同胞を手当たり次第に探し回らなければならないのにもかかわらず、これ以上歩けない状況となっていたのだ。

 しかし、蜘蛛男爵の悪運は良いのか、すぐさま同胞を見つけることができた。蜘蛛男爵の八つの赤い目は杉の木下に青々と茂る露草の中に同胞を見出したのだ。

 これは重畳と蜘蛛男爵は、重い腹を引きづりながら露草の中の同胞へと近づいた。ぬかるんだ地面は、ただでさえ体力の無い蜘蛛男爵の体力を奪う。


「やあ、こんにちは」


「こんにちは」


 同胞たる女郎蜘蛛は、蜘蛛男爵の巣とはまるで異なる汚らしい濡れた巣の中で、疲労を全身に浮かべて、それを癒すために一口雨雫を飲みながら挨拶にぶっきら棒に答えた。あまりに愛想の無い返事である。けれども蜘蛛男爵は、そんな無愛想な女郎蜘蛛にも愛想よく返事をする。これはお喋りな甲虫たちとの取引の際に身に着けた一種の処世術である。


「すみません。どうか私に食料を恵んではくれませんか?」


「嫌だね。大体、俺の所に食料は無い。さっき全部食べちまった。それに、男爵様が俺みたいな一般の蜘蛛にたかるんじゃない。それに男爵様はずっと自分で狩りをしないで、手に入れたその贅肉があるじゃねえか。なら、そいつを燃やしてしばらくいるこったな。まあ、あと二三日もすれば雨も止むと思うからよ。待ってろよ」


「ええ、分かりました」


 蜘蛛男爵はこの時、自身に明確な悪意が向けられていることを感じられた。そして、こういった嫌悪を向ける相手に対しては何を言っても仕方が無いことも、やはり甲虫たちとのやり取りの間で身に着けていた。いくら取引相手と言っても、友好的な甲虫たちばかりでは無いのだ。中には、蛇侯爵にそそのかされて悪態を吐く甲虫たちも居る。中には、蜘蛛男爵が作ったかの飲料だけを奪い取ろうとする甲虫も居るくらいである。だからこそ蜘蛛男爵は、自身を嫌悪する相手を前にしたら、相手が過度な反応を見せる前に目の前から消えるようにしているのだ。

 経験から学んだ通り蜘蛛男爵は、自身をなぜか嫌悪する同胞の目の前から去って行った。


「はてさて困った。体力も無ければ、動く気概も無い。ここが私の墓地かしら?」


 露草の中の同胞の巣からぬかるむ土を歩いて、蜘蛛男爵は自身の位に見合ってない言葉を漏らした。

 しかし、現状の容姿にはとてつもなく似合っていた。現在の蜘蛛男爵は、綺麗な縞模様の足もでっぷりと肥えた腹も泥に汚れている。しかもあからさまな疲労も顔に浮かべている。このような様は同胞たちが、自身の巣を必死に造り、そして造り終えた時の様子に非常に似ている。もちろん、蜘蛛男爵もあくせく働き例の美しい巣を造り上げたが、それはあまりに昔の話である。少なくとも取引で、生計を立てる前の話だ。

 疲労の中で蜘蛛男爵は、泥の中の水溜り越しに昔を思い起こさせる自身の姿を見た。すると、昔の自分が感じていた疲労が頭を過ぎった。清々しくも、骨の折れる日々であったあの頃が頭を過ぎった。そして、同時に現在の自分をあさましくも思った。楽な労働だけで、同胞たちが必死になって集める食料と同量の食料を得ていたことがみじめに感じられたのだ。加えて、同胞や他の爵位を持つ生き物たちへの自身の独善的な良心が決めた一種の救済をどこか誇らしげに思っていたことを恥じた。そうして内向的な批判が蜘蛛男爵の頭の中で巻き起こった。すると、突発的にある考えが頭の中に浮かんだ。体を動かし、明日を思い悩む労働こそが、生きていくうえで最も大切なことでは無いかという労働の根本的な考えが浮かんだのであった。

 けれどもそんな原始的な考えが浮かぼうとも、餓えている現状をどうすることも出来ない。ただ、考えを行動に反映させることは出来る。

 蜘蛛男爵は考えを改めた。今までは他人の食料を頼ろうとしていたが、新たな、回帰的な発想を得た蜘蛛男爵は自身の足で食料を稼ぐことを決めたのだ。本当に久々の狩りを実行することを決めたのであった。それは種としての優位なる特徴を無視することであるが、それでも蜘蛛男爵は今のあさましい自分を少しでも昔の自分に、あくせく働いていた時の自分を思い出すために泥臭い労働へと走るのである。

 空腹、されど贅のある腹を泥濘に引きずりながらも蜘蛛男爵は自身の食料を求めて歩き始めた。歩みは遅いが、確固たる捕食者としての意志がそこにあった。もはや、爵位などどうでも良い、蜘蛛男爵は自身の餌食となる小さな虫を泥臭く探すのである。

 しかし、重い雨粒を背負いながらの歩行と餌食になる餌を見つけるため八つの目を動かすのは、しばらく動いていない蜘蛛男爵には重労働であった。体力の無さから来る地の底の様な赤貧の疲労は、蜘蛛男爵の意識をもうろうとさせた。けれども、蜘蛛男爵は歩むことを止めず、眼を動かすことも止めなかった。なるほど、それほどまで蜘蛛男爵は過去を見ているのだ。過去の自分を見て、そこへと回帰したがっているのだ。蜘蛛男爵は、朦朧とし、ふらふらとおぼつかない足取りで食料を捜し続けた。歩いて歩いて、探し続けた。


「蟻だ」


 すると願い叶ったりか、蜘蛛男爵は一匹の黒蟻を目の前に見つけた。おおよそ黒蟻は、自身の群からはぐれてしまったのであろう。雨の日が続くときならば、なおさらはぐれやすくなる。昔の蜘蛛男爵であれば、この黒蟻も見逃していたであろう。それは生活の安定から来る余裕のためである。だが、今の蜘蛛男爵はそんな情けを掛けることは無い。むしろ絶好の食料としてしか見ていない。

 それだから黒蟻を見つけてからの蜘蛛男爵の行動は早かった。蜘蛛男爵は、黒蟻を見つけるまで朦朧としていた意識を覚醒させて、俊敏で静寂なる足運びで黒蟻に飛びついた。そして、黒蟻が牙を向ける前に、首を噛みきって飲み込んだ。味は蜘蛛男爵の好物であるアゲハ蝶に比べれば酷いモノであった。アゲハ蝶は蜜を吸っているため甘いが、この黒蟻にはそんな甘美な味は無い。あるのは酸味と苦みだけである。この好かない味に蜘蛛男爵は、顔をしかめ、吐き気すら覚えたが、それら不快感を帳消しにするほどの確かなる達成感は得られた。自分が成りたい自分に、過去の自分へと回帰できたという達成感を味わえたのだ。


「これだ。これこそが私の望んだ生き方だ。あの生き方も私には適っていたが、本来はこうして生きてゆくことこそが私に一番適った生き方だ。ならば、生きよう。そして、明日もこうして狩りに出かけよう。いや、今日もまだ狩りをしよう」


 よし、ならばと蜘蛛男爵は意気揚々と泥濘の中を歩き始めた。

 だが、そんな決意は一瞬にして暗がりになってしまう。蜘蛛男爵はうごめくどう猛に気付けなかったのだ。

 蜘蛛男爵は食べられた。歩こうとしたその瞬間、いつの間にか背後に居た蛇侯爵に一瞬にして頭を食いちぎられてしまった。

 そして蛇侯爵が蜘蛛男爵の頭を飲み込むと、露草の茂みから綺麗な緑色のてらてらとした蛙伯爵が飛び現れた。


「おや、侯爵さん。何やら美味しそうなモノを食べていますね」


「ええ、丁度良い所に丸々と太った女郎蜘蛛がいたものですからねパクリと。どうです伯爵さん? 貴方も食べますか?」


「良いんですか? なら遠慮なくな食べさせてもらいますよ。けれど、私を睨むことはしないでくださいね」


「しませんよ。私も食いしん坊では無いので」


 こうして蜘蛛男爵は、蛇侯爵と蛙伯爵に食べられてしまった。

 それから数時間たつと、空は晴れ渡り、雨は降り止んだ。鳴り止んでいた蝉たちの鳴き声もざめざめと森の中に響く。そして、雨粒を受けていた今は亡き蜘蛛男爵の巣は燦然と輝いている。


 ただ、この話はこれで終わりでは無い。

 蜘蛛男爵が亡くなってから数日後、かの蜘蛛男爵を厭っていた一匹の女郎蜘蛛が杉の木を登り、蜘蛛男爵の巣へと住み着いた。それから蜘蛛男爵の醸造所に群生していた白カビを取り除き、もう一度使えるように手際よく掃除をした。こうして女郎蜘蛛は、蜘蛛男爵が造っていた飲料を生産し始めた。

 そして後は蜘蛛男爵と同様に甲虫との取引を始め、自らに男爵を叙任し、蜘蛛男爵と名乗り始めたのであった。また、誰もがその叙任を認めた。

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