第21話 主任になれました
「いらっしゃい。何か不具合でも」
魔道具屋の扉を開けると、そう言われました
「いえ、魔法を新しく覚えたので、魔道具に追加をお願いします」
「へえ、まだ適性があるのかい。あんた魔導士を名乗れるね。ただ、呪文を覚えられないって所がちょっとだけど」
「ほんと、変態よね」
「ティアさん、管理職パワーです」
魔道具屋にアップデートの要望を伝えたので、修理の間に上司へ連絡を取る事にしました。
「すいません、キンロウです。仕事の報告をしたいと思います。それと、ちょっとご相談が」
『仕事の報告はしなくても良い。把握している。相談とはなんだ』
「部下も増えてきましたし、主任にしては頂けないでしょうか」
『好きにしろ』
「ありがとうございます」
『仕事の事だが、記録を見た限り上手くやっている。だが、遠からず危機が訪れる。油断するなよ』
「分かりました。緊張感を持って事に当たります」
『ではな』
「なんか、ぺこぺこ頭を下げてたけど、なんかあったの」
「喜んで下さい。主任に抜擢されました」
「分からないけど、おめでとう」
「ありがとうございます」
「ほいよ、できたよ」
受け取った魔道具は本の形になっていました。
ふむ、1ページに魔法一つですか。
前の板の方がぱっと見て分かり易かったですけど。
9種類にもなると、こうでもしないといけないのかも知れません。
「では、また魔法が増えたら伺います」
「あいよ」
料金を払い魔道具屋を後にしました。
社員寮に戻ると元ゲリラと元密輸組織の方々がくつろいでいました。
そろそろ、認識を改めないといけないかも。
主任になったのだから、彼らは部下です。
元ゲリラと元密輸組織は辞めて部下と思う事にします。
「注もーく! これから課題を出します。班毎に金貨1枚を支給します。これを増やして下さい。ずるは駄目ですよ。終わったら、レポートを書いてもらいます」
「これから仕事かよ」
「もう夕方近いぜ」
「あなた達には定時はありません。研究職と同様の扱いになります。服務規程を要求しなかったのが悪いのです」
「へいへい」
「おいらもやる」
「タス君もやるのですか。いいでしょう。一ヶ月分の小遣いです。好きに使いなさい」
「うん」
「そうそう、ひどい点数だと合格にはしません。もう一度やって貰います。不合格には罰ゲームです」
「なんか燃えて来た」
「そうだな。競争ってのは良い」
「おっ、良い事を思いついた。賭けないか」
「いいねぇ。俺は自分の班に銀貨1枚だ」
賭けが始まりました。
賭博は不味いです。
法律違反です。
「賭けは禁止です」
「けち臭いな」
「ならこうしましょう。食べ物なら許します」
「しゃあねぇな。俺はパン1個を自分の班に賭ける。くそっ、なんか締まらねぇ」
「仕方ねぇよ。俺は干し肉を5枚」
食べ物ならいいでしょう。
お目こぼしもあるに違いありません。
「私はタスにパン20個を賭けるわ」
「ティアさん、部下への差し入れですか」
「ええ、誰かがタスに期待してやらないと可哀そうでしょ」
「そうですね。思い至りませんでした」
気遣いが私より出来るなんて、ちょっとショックです。
ティアさんもそのうち主任にしてもらいましょう。
「そうだ、干し肉100枚を寄付します。賭けに勝った人の賞金です」
「ボス、話が分かるねぇ」
「オッズ計算はどうなってます?」
「へい、1班がトップで1.5倍です」
「タス君はどうです?」
「タスは20倍です」
タス君は大穴のようです。
「おいら、自分にパン1個を賭ける」
子供のうちに賭け事なんかしていいのでしょうか。
ですが、正月にこたつでトランプをやって、ミカンを賭けるような物です。
大目にみましょう。
さて、罰ゲームは何にしましょうか。
あれですかね。
「言い忘れましたが、期限は明日の夕方までです。頑張って下さい。稼いだ分と金貨1枚は、合格すれば差し上げます」
「おう」
「よしやってやるぜ」
さて、夜の仕事に行きますか。
「ボス、俺達も門番の仕事をするぜ。寝てて稼げるのなら、上手い仕事だ。こういう細かい稼ぎが馬鹿にならねぇ」
「では社員登録に行きましょう」
1班の5人が一緒に来るみたいです。
ギルドに行きます。
部下達が窓口に散って行きました。
「ボス!」
「なんですか? 私の事は主任と呼びなさい」
「主任、奴隷の登録には主人の承諾が必要らしいぜ」
「分かりました。この人は私が保証します」
「損害が出た時はあなたが補填する事になりますが、よろしいでしょうか」
受付嬢がそう言いました。
「ええ、承諾します」
登録が終わりました。
さあ、夜勤です。
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