第20話 3Kの仕事

 ギルドに行くと色々な依頼があります。

 ドミニクは忙しそうなので掲示板を眺めます。

 近場の討伐依頼はないです。

 そうなると、残されたのは街の雑用ですかね。


 家庭教師依頼はパス。

 子守りもパス。

 どぶさらいがありました。

 いいですね。


 汚くてきつそうです。

 依頼を取ってカウンターの列に並びます。


「なんでこんな安い依頼を受けるのよ」

「目についたもので」


「まあ、いいわ。ロックリザードの魔石で成績は右肩上がりだから」

「明日は高額依頼を受けます」

「期待してるわ」


 受け付けを終えたので、依頼主の下に急ぎます。


「この依頼を受けてくれてありがとう。何日も臭くって。酷いと眠れないんだ」

「お任せ下さい。残業してでも終わらせます」

「頼むよ」


 確かに側溝は鼻の曲がるような臭いです。

 ふむ、やりがいがあります。

 ですが、道具がありません。


 困った時の魔道具の教本です。

 掃除の魔道具はと、ありました。

 パスワードも載ってます。


洗浄クリーン


 みるみるうちに側溝が綺麗になります。

 簡単に終わり過ぎです。

 泥などは残っているようなので、すくいますか。


土弾アースブリッド


 攻撃魔法の一つとして載っていたので唱えてみました。

 ふむ、外壁を乗り越え彼方に泥が飛んでいきます。

 どんどん行くとしますか。


 土弾アースブリッドを連打していたら、きらりと光る物があります。

 指輪ですね。

 落し物として、交番に届けないと。


 側溝の泥は全て取り除きました。

 依頼完了のサインを貰い、門番の所に行きます。


「落とし物を拾ったんですが」

「そんなものお前のポケットに入れておけよ」

「それは困ります。落とし主に返さないと」

「じゃあ、ギルドで依頼を出せよ」

「その手がありましたか」


 ギルドに行ってドミニクに相談します。


「金貨20枚ね。売るの?」

「いえ、持ち主に返してあげたいのです」


「依頼を出すのね。どぶさらいの場所で指輪を無くした人の情報を求むでいいわね。指輪の特徴は載せないでおきましょう。きっと騙りが出て来るはずだから」

「よろしくお願いします」


 さて、家は片付いたでしょうか。

 家に行くと、すっかり片付いています。

 それは良いのですが、見慣れない男達が縄を掛けられて、転がされています。


「この人達はなんです?」

「タスの後をつけてきたから、ふん捕まえた」

「おい起きろ。ボスのお出ましだ」


 男達が起こされました。


「ええと、あなた達は何者ですか?」

「くそっ、お前達こそどこの組織だ。俺達の組織に歯向かうと容赦しないぞ」

「大体分かりました。人身売買が密輸のどちらかでしょう」

「くそっ」


 門番に男達を突き出します。

 門番が連れている犬がけたたましく吠え始めました。


「おお、当たりだな。密輸組織の人間だ」

「そっちでしたか。ではこれで」


「待て、尋問に付き合え」

「仕事ですか?」

「ああ、仕事だ。金は弾むぞ」


 仕事では仕方ありません。

 大人しく後をついていきます。


「お前ら、痛いのと痛くないのどちらが良い」


 門番が水の入った桶と鉄串を準備します。

 いけませんね。

 刑事訴訟法でしたっけ、法律に違反してます。


「くそっ、俺は喋らない」

「俺もだ」

「喋ったら殺される」

「どっちにしろ同じだ」

「俺は痛くないのを」


「馬鹿、取り引きしようってのか」

「喋らないけど。たぶん、くすぐりとか、痒いのとかだろ。それだったら耐えられる」

「俺も痛くないやつ」

「俺もだ」

「仕方ない俺もだ」

「ええい、俺もだ」


「こいつら、痛くないのを希望だそうだ。頼むぜ」


 あれは脅しだったのですか。

 そうですよね。

 さすがに鉄串は無いですよね。


 魔道具を使って、手懐けテイムを掛けます。

 男達の額に次々に従属紋が浮かび上がりました。


「ひでぇ、従属させるのかよ」

「みんな舌を噛むんだ」

「命令です。自殺禁止」


「くそう、喋ればいいんだろう。命令なんかしなくたって、喋ってやるよ」

「よし、洗いざらい喋ってもらうぞ」


 最近は簡単な仕事が多いですね。

 今一つ張り合いがない。

 私は部屋を出され、しばらくして呼ばれました。


「後はこいつらを煮るなり焼くなりしていいぞ。裏をとる時間が必要だから、一週間は最低一人を生かしておいてくれ」

「では全員を雇用ということでお願いします」


 社員教育が目下の重労働という気がします。

 重労働大歓迎です。

 20人も部下がいるのですから、主任ぐらいは名乗ってもいいのかも知れません。

 あとで上司に確認しておきましょう。

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