第11話 占有屋は許せません

 さて午後の仕事と参りましょうか。

 ドミニクに話掛けます。


「これから夜までに出来る討伐で、一番高いのはどこですか?」

「それなら、石切り場のロックリザードよ。風の魔剣があれば楽勝だと思うわ」

「ティアさんもそれで良いですか?」

「ええ」


 掲示板からロックリザードの依頼書を剥がし、手続きします。


 あの親切に教えてくれたガルダがやって来ました。


「ロックリザード、やるのか。良い事を教えてやる。背中に飛び乗るんだ。そうするとジタバタするしかなくなる。攻撃し放題だ」

「ご親切にどうも」

「なに、いいって。ロックリザードが死ねば石切り場が再開される。俺達の仕事が増えるって寸法よ」

「では、失礼します」


 ティアさんの案内で石切り場に向かいます。

 石切り場は岩の崖があって石を切り出した跡がみられます。

 胴体が乗用車ほどの茶色のトカゲが沢山のろのろと歩いています。

 ウロコは堅そうです。

 ところで、攻撃する時は機敏に動くのでしょうか。


「まず、私がやってみます」

「そうね。変態だもんね。Bランクも余裕よね」


 教えられた通り背中に乗ります。

 ジタバタもがいて振り落とそうとしますが、吊革無しで鍛えたバランス感覚は伊達ではありません。

 風の魔剣を抜いて起動します。

 そして首にサクッと差し込みました。


 血が噴き出したので飛び降ります。

 しばらくすると動かなくなりました。


「簡単そうね。私にも風の魔剣を貸して」

「いいですよ」


 ティアがロックリザードに飛び乗って首を斬ります。

 問題なく仕留められたみたいですね。


「はぁはぁ、駄目。魔力がもう無い。限界よ」

「なるほどあなたの権限は最下位なのですね」

「分からないけど、弱いって事ね。修行が足りないって事かな。そう言えば魔力の循環をやると魔力が増えるみたい。私は地道にやっていくわ」


 風の魔剣を返却されたので、私が後のロックリザード全てを片付けました。

 収納バッグに全ての死骸を詰め込みます。

 大型トレーラーより収納能力があるみたいです。

 良い買い物をしました。


 門のそばの買取所に行きます。


「おう、今日の獲物は何だ」

「ロックリザード12頭です」

「おいおい、石切り場の奴を全部倒したってのか」

「はい、目に付く奴は片付けました」


「おい、誰かギルドに知らせに行け。石切り場が解放されたって」

「今、行きます」


「悪い、全部の解体は無理だ。1日1頭にしてくれ」

「はい、分かりました。とりあえず1頭分出しますね」


 ロックリザードがテキパキと解体される。

 そうだ。


「魔石を貰えませんか」

「ほらよ魔石だ」


 3センチほどの魔石を受け取りました。

 魔石を抜いた代金を受け取りギルドに帰社します。

 ドミニクの前の列並びました。


「どう、戦果は?」


 私は魔石を出しました。


「金貨35枚ね」

「これが後11日続きます」

「もしかして全部やっちゃったの」

「ええ」

「それじゃ石切り場が再開されるのね。そう言えば幹部が会議室に入っていったけど、それね」


「これから夜の仕事をしたいと思うのですが、何かいいのはありますかね」

「まだ働くの。あんたの奥さんになる人は大変ね。稼ぎの不満はないけれど、いつ倒れるか冷や冷やすると思うわ」

「私もそれが心配なのよ。ドミニクからもきつく言って」


「出来る男は休みの取り方も一流だわ」

「別に一流は目指してないのです。仕事の充足感が満たされれば、文句がありません」

「じゃ、こうしましょ。門番の仕事よ。仕事の内容は待機室で寝る事」

「そんなの仕事じゃないですよ」


「魔獣が襲ってきたら撃退しないといけない仕事よ。夜の仕事では死亡率が一番よ」

「すいません。きつい仕事だと知らなかったもので」

「分かれば良いのよ。行くわよね」


「ええ、今夜はその仕事をします」


 ティアと二人で依頼の門まで行きます。

 そして門番に話掛けました。


「お世話になります。依頼で来ました」

「よろしく」

「おう、普段は寝てていいけど、何かあったら叩き起こすからな。武装したまま寝るんだぞ。靴も履いとけよ」

「分かりました」

「分かったわ」


 待機室の寝台に武装したまま横になります。

 ふむ、仕事スイッチは入っているけど眠れそうです。

 隣の寝台にいるティアの寝息が聞こえてきました。

 ほどなくして私も眠りに誘われました。


 朝になり、起床です。

 昨晩は何もなかったみたいです。

 体がバキバキいう事もないですね。

 ティアは盛んに体を動かしてコリをとっています。

 管理職権限万歳。

 これなら何日でも勤められます。

 明日はトラブルがあると良いのですが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る