第10話 情報を集めるのは大切な仕事です
ドミニクの前に薬草をどっさと出します。
「流石、出来る男は違うわね。この短時間でこの量。新人に見習わせたいわね。デートの前の一仕事。ちゃっちゃと終わらせますか」
ドミニクはテキパキと薬草の山を片付けていきます。
出来る女ですね。
そう言えば私が行った銀座にある店の女の子もみんな一流大学在籍でした。
英字新聞、日経新聞は欠かさず読むとか。
その努力は一流の企業戦士にも引けを取らないでしょう。
ドミニクもそうなのに違いありません。
商売敵とは言えないですが、侮れない相手です。
薬草代が清算されました。
銀貨27枚の儲けです。
どのくらいの価値なんでしょう。
社食の金額と宿代から考えるに。
15万円ぐらいの価値がありそうです。
仕事が全て終わったら日本円に交換してもらいましょう。
今から楽しみです。
ドミニクが着飾って出てきました。
「では行きましょうか。この街に不案内なので、ティアさんに来てもらう事にしました」
「あなたどこの世界の人間? 初めてのデートにどうして他の女を連れてくるのよ」
「いけませんか」
「まあ、女を何人も侍らす人がいるから、別にいいけど」
そうでしょう。
一緒に銀座に行った社長は女の子3人と夕飯を食べた後に店に同伴出勤してました。
「ティアよ。よろしく」
「あなた人の物に手を出さないでくれる」
「私は会社の物です」
「なんか調子狂うわね。こういう時は本命を立てるか。両方に良い顔するものよ」
「喋っていていいの? 昼休みが終わるわよ」
「キンロウさん、行きましょ」
ドミニクと腕を組んで歩きだします。
ふむ、銀座の女とそっくりです。
腕を組むぐらいのサービスはおしぼり代わりなのでしょう。
ティアも競争意識に駆られたのか空いている腕を取りました。
両手に花ですか。
これも仕事の一環ですね。
まだ勤務中ですから。
メインストリートにあるレストランに入ります。
ティアは素早く私の横に座ります。
ドミニクが舌打ちしました。
「向かいの席は話し易いのはご存じ」
「そうですね。コンパでは気になる女の子の向かいに座ります」
「ぐぬぬ」
「私はキンロウさんの事を良く知りたいな」
「企業戦士です。履歴書は会社以外に見せたくありません。個人情報は弱点にもつながりますので」
「仕事ぶりを見ると、経験者なのかなと思うのですけど、どうなのかしら」
「多種多様な仕事をこなして参りました」
「でしょうね。聞いて私、今月はトップを取れそう。それも歴代ぶっちぎりで」
「営業成績ですか?」
「そうね」
「その成績の半分は私の功績なんですけど」
「キングボアの魔石は違うでしょ」
「ぐぬっ。でも大剣と槍の半分は私の功績よ」
「ちっちっちっ、キングボアの魔石は金貨500枚よ。それに在庫の装備が一気にはけたわ」
「不良在庫を押し付けたんじゃない」
「あれは良い装備で値段相当よ」
そう言えば魔剣をまだ一度も使ってませんでした。
鎧も役に立ってません。
収納バッグは大変役に立ちましたが。
そろそろ、ドミニクに役に立ってもらいましょうか
「受付嬢は情報を持っているとお見受けします。害獣の情報が欲しいのですがいかがでしょう。情報によってはお金を支払います」
「嫌だ。私をスパイに仕立て上げる気」
「いえ、法律に触れない程度でどうかなと思いまして」
「そんな情報ならただで上げるわ。その代わりキングボアクラスを討伐したら、魔石を私の所に持って来てね」
「ええ、お約束します」
「やった。これで来月もトップよ」
前菜が運ばれ、スープが運ばれてきて、魚料理が運ばれました。
口直しが運ばれてメインのステーキが運ばれデザートです。
「驚いたわね」
ドミニクが驚愕しています。
何に驚いているのでしょう。
「少しマナーが違っているけど、テーブルマナーを知っているなんて。あなた冒険者じゃないでしょう」
「仕事で覚えました」
「ティアの食べ方が冒険者としては普通よ」
ティアはナイフとフォークに慣れていないようでした。
片手のみで食べていました。
たまに手掴みで。
「なに、私の食べ方に文句があるの」
「いえ、好きに召し上がったらいいのです。私も日本のレストランでは箸を貰います」
「ハシというのは初めて聞いたわ」
「細い棒2本を使って食事するのです」
「優雅そうな食べ方ね」
「作ったらあなたに差し上げます。もちろんティアさんにも」
情報を回してもらえる事になりました。
食事代は高かったですが、その価値はあったと思います。
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