第26話

「気が晴れたかよ」

「さあてね。で、なんでそんなオチをお前が知ってるんだよ」

「ツマンネー話聞かされて寝たあとに夢にジジイが出てきたからな。調子はどうだとか聞いてきたから、ついでに問い詰めた。今夜あたり、そっちにも来るかもな」


 つまりそのオチって、お前の夢の内容ってだけなのでは。いや、古今東西、神が夢枕に立つってのはよくある話だ。あながちただの夢物語と片付けることもできんか。

「……なあ、なんでジジイがアータをここに送ったかわかる?」

「……徳が足りないから適当に飛ばしただけだろ」

「建前は、な」


 俺は風に揺れるケバい髪を眺める。

「確かにアータに大した徳はなかったさ。だから、指定した世界や環境に転生させるわけにはいかなかった。ただ、最後の最後で見せた善行があったから、転生の意思を問うことはできた。マジで評価するところねーやつはそいつの意見なんて聞かないで黙って輪廻に組み込むからな」

「…………」


 がりっ。ミツルが何かを掘り当てたらしい。スコップが硬いものに触れた音がする。

「この世界、あの座標、あの時間に飛ばした理由があるはずなんだ」

「でもランダムって……いや、そうか」


 俺は反論しようとして止まり、うなずく。

「ランダムってのは要するに、神の気まぐれってことだもんな」

 人が無作為にものを選ぶとき、そこに人の意思は介在しない。当然だ。

 

 まさに、神のみぞ知る、なわけだ。

 そこには、神の領域たる確率なるものが存在する。

 言いかえれば、そこには神の意思が介在するのだ。


「で、なんだよ。その理由って」

「アーシが知るかよ」

 発掘したものを雑に転がしたミツルは立ち上がり、「んーっ」と腰を伸ばす。

「よく言うだろ。神のみぞ知る、だよ」


 要するに知らないし知りようもないってこと。

 考えるだけ無駄かな。

「つーか考えようが考えまいが、ジジイの考え知ってどうなるもんでもねーだろ」

 ごもっとも。


「もう日も暮れるし帰んべ」

「ああ、うん。…………うん?」

 俺は手をパンパンやってるギャルにふと思う。


 これはあれか、一緒に帰る流れか。

 下校の時、仲のいいやつらで帰っていくあの感じか。

 いいなあ。


「なぜ涙目」

 目頭を押さえる俺にギャルは引き気味だ。こいつにはわかるまい。この感動が。

 しかも男友達どころか女子だぞ女子! リア充じゃないか!

 こんな外見妖怪でも女子だからな! 多分!

 おっと、なんか心配になってきたぞ!


「お前女だよな?」

「馬鹿にしとんのか」

 よっしゃ! やっぱり女子だ! やっぱりリア充じゃないか! 今この瞬間、俺はリア充なんだ!

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