第24話
「つまりあなたたちは、これが何なのかわかるのですね」
「まあわかりやすく言うなら、ケータイよ」
「携帯……たしかに持ち運べる大きさですね」
「ちーがーうー。だからつまり、ケータイ電話! 電話するやつなの!」
「デンワ……?」
「あーもー! なんでわかんないかなー!」
わかるわけねえだろ。
染めまくった髪をガシガシひっかくギャルの語彙と教養のなさを改めて痛感する。
こういうの、異世界コントとでも呼ぶのだろうか。
「ええとですね……」
このままこのアホギャルに任せてたら一日が終わってしまう。俺は助け船を出すことにした。
「つまり……」
カクカク・シカジカ。
「なるほど。つまりこのスマホなるものは、遠くの相手と会話ができる道具なのですね」
「他にもアプリとかー写メとかー」
「お前は黙ってろ」
せっかくわかりやすくした話をこれ以上ややこしくするな。
「ただ、電源……この道具を動かす魔力が尽きているようなので、今のままでは動くことはないでしょう」
「そうですか」
少し残念そうで胸が痛む。
「どっちにしろ話す相手いないんだしいーじゃん」
こいつには良心の呵責とかそういうのはないのだろうか。腐っても神の子孫だろ。
「それにしても、こんな魔導具は見たことがありません。遠くの相手と話す術はいくつか知っていますが……。話を聞けば、まるで誰でも扱えるかのような。そんな魔法があるとは」
「魔法じゃねえし」
「俺たちの故郷では科学と呼びます。魔法とは違う技術です」
「ははぁ……」
寝耳に水だと言わんばかりの反応。それもそうか。この世界はご覧の通り魔法一辺倒に発展している。しかし、こんな遺跡があるなら――おそらく各地にも似たような遺跡はあるだろうし――少しは科学技術があってもよさそうなものだが。いや、それを教団が抑止しているわけだから……
意図的に教団が科学技術というものに蓋をしている……?
それは本当に、ただ単純に、宗教上の理由だろうか。
もっと実質的な、意図的な……
「科学者」
ミツルが彼を指差す。
「?」
「アータ科学者じゃん。もう宗教屋じゃないんだし、無職じゃカッコつかないでしょ」
「なるほど……科学を扱う者……それで科学者……いいですね、今度からそう名乗りましょう」
少し元気が出たらしい。まあ今までの稼業も失って世捨て人みたいな状況だったからな。わからんでもない。俺らとほとんど一緒。
「お前たまには微妙に良いこと言うな」
「あん?」
そこいらの物語ならここで科学知識を披露して大活躍するところだが、悲しいかな不登校生とギャルに披露できる科学知識なぞあるはずもなく、袖触れ合うも他生の縁ということで、発掘作業を手伝うことにした。
「なんでアーシまで……」
「どうせ飯の時間まで暇だろ」
どうせこの後は飯食って寝るだけだからな。
……なんか色々忘れてるような。
…………まあいいか。
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