第14話

「とりあえず、この街から出よう」

 宿のチェックアウトも済ませた時、俺は二人に言った。

「アテはあんのかよ」

 なんちゃってタピオカ料理に舌鼓をうち、あまつさえおかわりまでしていた間抜けに俺は、

「ないわけじゃない。少し手間がかかるしリスクはある……が、もうここまでいくと贅沢も言ってられない」


 できることなら装備一式整えて転移してすぱっと済ませたかったが、昨日みごとに失敗してしまった。近道や効率など気にしてられない。とりあえずこの場末感ある街からおさらばしなければ。


「まあ、このままこの街でぐだぐだ暮らしていく道もあるんだけどな」

「は? 嫌に決まってんだろバカ」

「私もそれはちょっと」

 二人に速攻反対された。


 うん、ゆる~い日常系路線はやっぱりだめか。

「で、具体的にどうすんだよ」

「馬車を使う」

「運び屋なら昨日バッサリ断られたろうが」


「それはあくまで運び屋が運び屋の客として断っただけだろ?」

「あ……?」

 脳みそタピオカはこれだから。ポカンとしてるミツルに俺はやれやれと首を振る。


「通常、街から街への移動手段はなんだと思う?」

 歩きながらマオに問うと、少女は顎に細い指をあてて、

「やはり馬車だと思います。徒歩を除けばですけれど」


「運び屋の設備を見る限りそうだろうね。問題は、俺達が知らない場所へは運び屋として送れないということ」

「だから詰んでんじゃねえか」後ろでミツルがぶつくさ。ほっとこう。


 運び屋の敷居をまたいだ俺たちを迎えた店員は、さすがに昨日のことを覚えていたようだ。片手をヒラヒラさせた。

「あーダメダメ。何度来ても答えは一緒だよ」

「今日は別口でして」

 ほう、とお兄さんは息を吐く。


「馬車を買い取りたいんです。なんならレンタルでもいいです」

 つまり、運び屋が運び屋の客として運ぶことはできないが、その設備そのものを提供することはできるのではないか。この推測は、かなり正解に近いのではないだろうか。ただしこの場合、色々と手間がかかりそうで、金を払えば解決というわけではないと踏んだので、初日は避けていた。


「そうきたか」

 ガタイのいい彼は感心したように頷いた。

 が、

「あーダメダメ」

 結局回答は初日と一緒であった。


「だめですか」

「結論から言うとね。馬車を貸すことも売ることもできないわけじゃない」

「なら」

 別にいいじゃないか。そう口から出す前に遮られた。


「では確認しよう。あんたたちの中で、乗馬できるものが一人でもいるのかい?」

「…………」

 一応マオに視線を向けるが、彼女は首を横に振った。

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