第2.5話
「パパ! ちょっと来なさい!」
真剣な表情で、在過を呼ぶ妻がムスッとした表情で睨んでいる。何か過去の話の中で、怒らせるようなことでもあったのだろうか?
急に機嫌が悪くなった妻に、在過は不安になりながらも近づく。
「んっ」
「ん!?」
「あーーーチュってした!」
「どうしたんだよ急に」
「どうもしませんっ!」
顔を真っ赤にしながら照れる妻の姿に在過は、嫉妬してくれていた可愛さに苦笑した。
「どうして笑うんですか!」
「いや、最高の奥さんだよ」
「当然です。だって、貴方が望んだ妻ですもの」
「パパ~キコもするぅ」
在過は、娘の頬にキスをした。
「ばっちぃ! 臭い!」
「なんだとぉ~」
ケラケラと笑う娘の姿に、過去の話で嫉妬してくれる妻が今ここにいる。
だから、辛い過去を思い出すことは苦しいが、話をしているとスッキリする感覚も同時にあった。
「それにしても、彼女さんから告白してきたなんて、失恋したばかりの彼女の心は、パパの当たり前の行動がすごく嬉しかったんですね。」
「そうだな、オニオンスープを貰ったことが、すごく嬉しかったと聞いたことがあるよ」
「キコもオニオンスープ飲みたい」
「ママと買いに行こうねぇ~」
「えぇ、だったら僕も一緒に行くぞ」
「パパは飲めないからダメぇ~」
「飲ませてくれよぉ」
ずっと望んでいた家族がいる。
妻と子供がいる生活が手に入った。
そんな夢心地な気分が、在過の全身を優しく包む。
「大丈夫?」
「また泣いてるのぉ?」
在過は、自分でも泣いていることに気づかないほど……嬉しさと悔しさが混じる。
本当は神鳴と家族になりたくて、夫婦になって子供を授かる未来を考えてきた。
でも、今そんなことを思ってしまうのは最低な男だろう。
妻も子供もいるのに、まだ過去の女性を追っているのだから。
だから……、この気持ちに決着をつけるために。また、過去と向き合わなければいけない。逃げ続けた代償は、必ず大きくなって返却される。
「大丈夫さ。幸せすぎて涙が出たんだな。言葉も希心も大好きだぞ」
「私もです」
「キコもぉ~」
「さぁ、続きを聞いてくれ。僕はこれからもお前達と***いくために」
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