#24 一つ部屋の中。


 101号室、僕の居室の前を映しているモニターを確認すると当然ながら警備をする二人の制服を着た婦警さんがいる。大信田さんと多賀山さんはどうやら交代して帰宅したようだ。


「どうしたものか…」


 僕は部屋に引き入れてしまった西野さんの事を考える。こんな時間に男子の部屋にいるというのは問題だ。当然ながら玄関ドアから出ようとすれば婦警さんに見とがめられるだろう。一応、この部屋には緊急避難の為に寮の外に出られる脱出路のようなものはある。しかし、出る事は出来るが入る事は出来ない。一方通行なのだ。


 そうなると寮の外から中に入ってこなければならない。しかし門限の時間はとうに過ぎているから寮の出入りは出来ない。いや物理的に出来なくはないがカードキーを兼ねたIDカードを入口のカードリーダーに通さなくてはならない。しかしそんな事をすれば西野さんがこんな時間に入口から入ってきた事が記録に残ってしまう。それはよろしくない。


「と、とりあえず中にどうぞ」


 さすがに室外に放り出すというのも気が引ける。そもそも引き入れたのは僕なのだ。


 玄関ドアのロックがされている事を確認すると僕は内扉も閉めてふうと息をつく。誰にも見られてはいないよな、それに何かの場合には僕が部屋に誘った事にしよう。


「会いたかった…」


 そんな声と共に西野さんがポロポロと涙を流した。そのまま僕に抱きついてくる。


「西野…さん?」


 世界から男性消失した…いわゆる三毛猫現象が起こってから男性は重要な保護対象となった。うかつに触れようものなら女性は処罰対象となり厳格に裁かれる。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

三毛猫現象 〜男の割合が三万人に一人になった世界〜 ミコガミヒデカズ @mikogamihidekazu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ