#10 バレー部、晴れ舞台に立つ。
「あっ!出てきました、出て来ました!こちら河越八幡女子高校正門前、現場の庄司です!現在、河越八幡女子高校の新一年生『佐久間修』さんが外出するという情報を掴んだ我々は…」
「佐久間さーん、こちらテレビ夕日です!お出かけですかー?」
学校の正門を出ようとするとたくさんのマスコミ関係者がカメラを向けていた。どこからか僕の外出する予定を嗅ぎつけていた取材陣が待ち構えていた。
昨夜のこと…。寮で開かれた歓迎会で部活動の話になった時、今のところ僕には特に興味ある部活がない事を話した。そこから僕の川越八幡高校の時の話になり、当時牛丼屋さんでアルバイトをしていた事を話したら今もその店は存在している事を聞いた。
「ちょっと見てみたいかも」
何の気なしに僕がかつてバイトしていた牛丼の野吉屋に対してそんな事を言ったもんだからさあ大変。
「い、今イこ?すぐイこ?」
一人の女子生徒が興奮した様子でグイグイ寄せてきた。
『はぁはぁと 呼吸を乱す 女子生徒』佐久間修、心の俳句…。思わず一句詠んでしまった。しかし既に寮の門限時刻は過ぎており、当然ながら外出する訳にはいかない。そこで明日の放課後に行きますか…、そういう話になったのである。
ところがそれを嗅ぎつけたマスコミの取材班の存在があり僕は少しだけ衝撃を受けた。たかが男子高校生の外出に撮影隊が来るのかと…。そう、あくまでも少しだけ。それと言うのも…。
□
「えっ!?全校生徒で行くんですか?」
今朝、寮長であり生徒会長でもある梁緒先輩がやってきた。放課後の話かなと思ったら少々予定外な事が起こったという。牛丼屋さんを見に行く散歩めいた外出に女子生徒ほぼ全員が同行希望をしてきたという。連絡がついていない者も数名いるがおそらく全員来るだろうと。
「マジですか…」
学校から歩いて数分、県道沿いの牛丼屋さんを少し見てくる程度の外出に生徒全員が同行したいだなんて…。たしかウチの学校は生徒数が880人くらいだっけ?それがほとんど同行したいだなんて…。僕は大きな衝撃を受けていた。
「やはりマスコミが多いな。総員、第二移動隊列だ!」
放課後、
「第二移動隊列っ!」
「分かった!」
「だいにっ!」
女子生徒の皆さんが呼吸を合わせてただちに隊列を変化させる。同じクラスの太林素子さんや粟原恵さんらをはじめとした女子バレーボール部所属から選抜された高身長の子が僕の周りにつく。丁度、僕を中心に円陣を組んだ感じになる。
「あっ、姿がっ!!」
カメラを構えるマスコミ関係者から戸惑う声が洩れた。それもそのはず、背の高い女子生徒達が僕の周りに集まったからだ。
僕の周りに女子生徒の壁が出来た。視界が
「え、
「こ、こっちも…」
「佐久間君の姿が女子生徒達に完璧にブロックされて…」
カメラクルーらしき人達の声が次々と上がる。
「へへ〜ん、完璧にブロックされてるって〜?」
「ウチらバレー部なんだからさ〜」
「ブロックなんて上手いに決まってんじゃん」
「さあ、このまま行くよっ」
「「うんっ」」
背の高い女の子達が僕を中心に絶妙な位置関係を保つ事で周りからの視線をブロックする事に成功。当然、テレビカメラが僕を写す事が出来なくなる。
「くっ、これじゃ夕方のニュースに
撮影隊から悲鳴が上がった。
「ふふふ、大成功〜!」
「良い気味!」
反対に僕の周囲のバレー部の生徒達はテンション爆上がり真っ最中。しかもそれはだんだんと熱を帯び、さらに拍車をかけていく。
「って
「うん、ヤバいッ!」
「お、男の子と…、佐久間君と街を歩いてるよ〜」
「バレー部やってて良かった…。いや、身長高くて良かった…」
「うん、小さい時から服とかサイズ大きくて可愛いのあんま無かったし…」
「足もデカかったからアダ名が『ビッグフット』って言われたりするし…」
「アタシ、『ゴリ子』…」
「劇だと男役しかねーし…」
「まだ良いじゃん!私、背が高い『木』の役だよ!『木』以外が来たかと思ったら今度は『竹』だし。うっうっうっ…」
「「「「そんなウチらがッ!!」」」」
グワっ!!バレー部の生徒達が拳を握りしめて感動していた。
「ア、アタシ…、寮に帰ったら今日の事…日記に書くんだ…」
「それなんてフラグ?」
「「「あはははは〜」」」
周りの女子生徒達からそんな明るい声も聞こえた。最初は聞いてるこちらも悲しくなってくる『高身長女子あるある』だったけど…。
「それにしても良かったのかな?テレビ局の人…」
「良いんだよ、ああいう連中は」
僕の言葉に後ろにいる梁緒先輩から声がかかった。バレーボール部の生徒達程ではないが、彼女もまた背が高いので急遽名付けられたこの『佐久間修親衛隊』に参加している。あと、バレー部の女子生徒達が万が一にも暴走しないようにお目付役も兼ねているらしい。
「佐久間、あれは君をいけしゃあしゃあと盗撮しているだけだ。それで金を得て飯を食っていく
梁緒先輩は事もなげに吐いて
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