#6 寂しいなんて言わせない。
「よかったね」
「うん」
寮母室を出て第一声、僕と真唯はそんな言葉を交わしあった。真唯の僕の部屋での宿泊、それを
もっとも僕と真唯が
「とりあえず、真希子さんが夜勤の日とかこれで一緒にいられるね」
僕と真唯は似た境遇にあったと思う。
「寂しい思いをさせるな…」
僕が小学生くらいの頃、悲しそうに…辛そうに…そう呟いた父の言葉を思い出す。父は残業なども多く、父子家庭なのでなかなか家族一緒にいられない事を申し訳ないと思っていたのであろう。寂しくないと言えば嘘になるが、それ以外の事は比較的恵まれていたと思う。
真唯もまた母一人、子一人。介護施設で働く真希子さん。真唯が中学生になると夜勤なども担当するようになったとの事。一人寂しく家で寝ていた事もあったんじゃないだろうか。
「真唯、高校を卒業してさ…。そしたら真希子さんと三人で暮らせるようにしたいね」
寂しくなんかさせない。そしてこれは僕のわがままでもあるんだけど…、三人なら僕も寂しくないだろうから…。
□
「それじゃ、お兄ちゃん。また明日ね」
101号室に戻り、そこに置いていた
梁緒さんは生徒会長でもあるそうで、見た感じからも凛とした印象を受ける。真唯と同じように肩のあたりで髪を切り揃えているが、なんだか守ってあげたくなる真唯とは異なり梁緒先輩はかっちりとした印象を受ける。
「それにしても…」
廊下を歩いている時先輩から声がかかった。視線は前に向けたまま、引き締まった横顔が印象的だった。
「君は真面目なのだな」
「えっ」
「寮の自室に女子生徒を招き入れる事だ」
「ああ、それは…」
急な話の展開についていけてなかった頭を追い付かせる。
「当然の事と思いますが…」
「そんな事はない」
あっさりと先輩は否定した。
「他校では許可を取らない者もいるそうだぞ」
「えっ、そうなんですか?」
「ああ。場合によっては気に入ればすぐに自室に連れ込むような場合もあったそうだ。時に自室ですらない、手頃な空き教室などにな」
「それは…。嫌ですね、そういうの」
ほう…、そんな声を洩らして先輩は足を止め僕の方に目を向けた。
「なんて言うか…、本能とか欲求そのまんまみたいな。もちろん、理屈じゃないってのは僕にだって分かりますけど…」
「だが女子生徒の中にはそれこそ強引に接してくる者もいるのではないか?」
「それはありますけど…」
僕は一度そこで言葉を切った。先輩はまっすぐにこちらを見つめている。僕の次の言葉を待っているように感じられた。
「色々あるんではないでしょうか?それこそクラスの女の子が言っていたんですが、
「ふむ」
「それに聞いた話ですが…。女の子から見て、男って二種類のタイプに分かれると聞きました。それなら女の子にとって無理もない事だし、少し強引になってしまう事があるのも分かるような気がするんです」
僕は自分なりに考えている事を先輩に話し始めた。
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