#10 八木対決!その5。究極至高の献立
河越八幡女子高校の学園祭、その名を『
この
□
「おにぎりとは…」
一日の仕事を終えた一年二組担任の
「ふむ…」
一組の担任との教員同士の
「しかし…」
海原遊山子はそれこそが錯覚なのだと考える。健康の為、摂り過ぎに警鐘が鳴らされる『塩分・糖分・脂肪分』、短くまとめて『
一概に摂り過ぎを懸念されるものというのは美味いものだ。事実、本場中国では最も簡単な美食とさえ言われる事もある。
別にチャーハンに限った訳ではないが、飯に塩分と脂肪分が合わせれば単純にそれを嫌う人間は少ない。牛丼しかり、カレーライスしかり。
それゆえに御簾田安仁子のような料理の腕を持つ者がいない一組の面々がこの八木対決で対抗する為には、チャーハンを選んで調理の際に油を使う事で塩分・糖分・脂肪分を含む料理に仕上げる事だ。それなりに食えるものに仕上げれば戦いにはなるかも知れない。もしかするとラッキーパンチが当たると言う事もあり得るだろう。
「だが、模擬店で出すにはチャーハンは不向きだがな…」
模擬店と言っても調理するのは教室ではなく、学校の中庭に屋台スペースを作ってそこで調理と販売を行う。
「机や椅子の無い屋外では確かにチャーハンを食べるには向かぬ。その点ではおにぎりも悪くはないが御簾田の腕には勝てぬだろうて…。これは早くも勝負あったか、我が至高のクラスの勝ちだ。ふははははっ!!」
海原遊山子は愉快そうに笑った。
「…海原先生って時々ああやっていきなり高笑いを始めるのよね」
「栗田先生、あいつのあれは今に始まった事じゃない」
「ええ、まあ…」
職員室の片隅では若い同僚の女性教師と山岡士郎子がひそひそと声を潜めて話していた。
「それにしてもうちのクラスはおにぎりか…」
「山岡さん。いつもののんびりした口調にまだ戻ってないですよ」
「あ、いや。どうもこうやってあいつとやりあってる時は…」
「究極のクラスですか?」
「いや、究極のおにぎりだ。クラスで作る…な」
山岡士郎子もまた海原遊山子がよく口にする至高と同じように究極という言葉をよく使っていた。
「それにしても我が校始まって以来の男子生徒が考えたメニューですか…、おにぎり…」
「駄目だぞ、授業中におにぎりの事ばっかり考えてちゃ」
山岡士郎子が軽口を叩く。
「か、考えてませんっ!!そんな人を食いしん坊みたいに…」
栗田教諭は抗議の声を上げた。しかし、考えていないというのは嘘であった。そのおにぎり…、もしかして噂の新入生が作るのだろうか?
だんだん気になる…、気のないフリしてるけど…。
「好きなの?」
「えっ!?」
「いや、おにぎり」
「…ッ!?も、もうっ!!」
「い、いてっ!何すんだよぉっ!」
高笑いする和服の年配教師に、昭和の雰囲気漂うラブコメ風のやりとりをする若手教師…。これが河越八幡女子高校職員室での日常の一コマであった。
八木対決はどのような展開を迎えるのか…。それは発端を作った彼らの手を既に離れ、教え子達に
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