#4 真唯ちゃんとの関係。
かわいいおにぎりだったなあ…。
そうそう、昼食の時間を終えて僕達の関係に一つの変化が起こった。それと言うのも…。
「あ、あのね、お兄ちゃん。私の事…真唯…って呼んで欲しい…」
「それは良いけど…、どうして?」
「う、うん…。私の事…、真唯ちゃんって言われるとなんか気を使われてるのかなって…」
少し言いにくそうにおずおずと真唯ちゃんがそう切り出した。
□
昼休みも終わりに近づき、僕たちは寮から教室棟へ戻った。一年生の教室は校舎の三階にあるので階段を上った。
「じゃあ、午後も頑張ろうね。お兄ちゃん」
「そうだね。真唯ちゃ…、じゃなかった真唯」
「うん…」
階段を上って正面に位置する一年二組の教室の前でそんな言葉を交わし真唯は二組へ、僕は一組の教室へと分かれる。
休み時間だけあって校舎の中は活気があるがそこは女子校、共学で見てきた昼休みとはちょっと違う。ボクシングで言えば足を止めての打ち合い、じっくりその場にとどまってのおしゃべりをしているようだ。立って話すのか、座って話すのかの差はあるが賑やかなものである。
「あっ!佐久間君だっ!!」
廊下を歩く女子生徒から声がかかった。見覚えはない、少なくとも同じクラスの生徒ではないようだ。
「えっ!?佐久間君ッ?」
「佐久間君だって!」
「も、戻ってきたんだっ!」
一年一組とは反対の方向から声を上げながらやってくる集団には見覚えがある。同じクラスの女子生徒達だ。あれ?クラスにはいないの?
「き、着替え終わってる…」
「そ、そんな…。まさか…」
学生服に着替えた僕の格好を見てクラスの女子達はあからさまに落胆している。
「そ、それよりも…」
「さ、佐久間君。ど、どこで着替えたの?」
「あ、うん。寮の部屋で…」
「………ッ!!」
「りょ、寮…」
「くっ…。着替え…」
ウチのクラスの女子達が完全に魂を抜かれたような表情になっている。なんだろう、なんだか燃え尽きてしまったように…。
「ところでさ、ところでさ!」
一人の女子生徒が声をかけてきた。立っている位置から考えて二組の女子生徒だろう。
「さ、佐久間君…。今、佐久間さんと一緒に教室に来なかった?…ん、あれ…?佐久間…」
何かに気付いたかのように話しかけてきた女子生徒の言葉の勢いが鈍る。
「あ、はい。一緒に来ましたよ。一緒にお昼を食べてたんで」
「「「お、お昼をッ!?」」」
ざわざわっ!!周囲が一気にざわめく。
「そ、そんな。いきなり初日から二人でお昼とか…」
「ふ、二人はどういう関係なの?」
ぐぐっ!周囲の女子生徒達が身を前に乗り出すようにして僕の
「えっと…、真唯ちゃ…真唯は…」
「「「「「真唯ッ!!!?」」」」」
「な、名前でっ!?」
「うらやまっ!!」
僕の話し始めると過敏なまでに女子生徒達の反応がある。ど、どうしたっ!皆、そんなに身を乗り出して…。
でも、まあしっかり返答しないとな。僕は真唯の手を取って聞き取りやすい声でハッキリと言った。
「僕の…、大切な人です」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます