#3 キタコレ!イベント『お弁当』。


  寮の部屋に真唯ちゃんがお弁当を持ってやって来た。


「さあ、入って」


 僕は真唯ちゃんを招き入れ、さらに警備をしている浦安さんと崎田さんに声をかけた。


「僕達はこれから中で昼食を摂ります、浦安さんと崎田さんも中でどうですか?


「気遣いありがとう。だが、大丈夫だよ。もうすぐ瀧本と武田が交代でやって来るからその時に昼食を取らせてもらうよ」


「そうよ。せっかく妹さんが来てくれたんでしょ?二人、家族水入らずで食べると良いわよ」


「あ、はい。ありがとうございます。じゃあ真唯ちゃん、どうぞ…」


 二人の言葉に甘え、僕は真唯ちゃんを部屋に招き入れ昼食にする事にした。



「真唯ちゃん、美味しい。ありがとうね」


 真唯ちゃんが作ってきてくれたお弁当を食べながら僕はお礼を言った。おにぎりと唐揚げ、卵焼き大好物だ。これを嫌う人ってあまりいないのではないだろうか、そのくらい鉄板の組み合わせではないだろうか。


「うん。中身、シャケで良かった?」


「鮭、好きだよ」


「良かった、中身の具をどうしようか考えたんだけど好みとか分からなくて。それに男性消失現象が起きてからお米の消費量がガクンと減ったんだって」


「そうなんだ。でも、そうだよね。人口が半分になっちゃったら…」


「それもあるけど…、お米はどちらかと言うと男の人が好むみたいで…。女はどちらかと言うとパン好きが多いかな。全粒粉とかの…」


「へえ、パンを…」


 緑茶に口を付けながら話を聞いていた。


 なんでも十五年前の男性消失現象が起きてから日本では米を食べる人が目に見えて少なくなったそうだ。


 当時から健康志向と言われて単純に白米以外にも雑穀を混ぜて炊くとか、全粒粉パンとかはあったけど…。


「健康ってそれまでの人生の積み重ねなんだって。女はなるべく健康を維持して元気な赤ちゃんを産むようにって。それにダイエットとか興味あるものだし…」


「ああ…」


 思い至るフシはある。中学の時とか女子が『マジ痩せたい』とか『アタシ、水飲んだだけで太るタイプだし』とか言ってたもんな。まあ、他の女子が言うには『そう言うヤツほど食ってる』とか言ってたけど…。


「だから皆必死なんだよ。綺麗になりたい、可愛くなりたい…って。そうしたら男の人が自分を選んでくれるかも知れないでしょ?」


「な、なんとなく分かる…ような」


 男の人の数が減ってるんだから…、そりゃあ恋愛の競争率も高くなるよなあ…。中学時代にクラスの女子の誰かが『1グラムでも軽ければ正義!』みたいな事を言ってたし…。


「あっ!でも、それならさ…」


 ふと気付いた事がある。


「なあに、お兄ちゃん?」


 真唯ちゃんが小首をかしげて僕を見た。肩の上あたりで切り揃えられた髪が揺れた。


「真唯ちゃんは安心だね。こんなに可愛くて、美味しいお弁当も作ってくれる優しい女の子なんだから。男子なら好きにならない訳がないよ」


「おにい…ちゃん…」

 

 あれ?


 喜んでくれるかと思ったんだけど…、真唯ちゃんの動きが止まってしまったぞ…。


……………。


………。


…。


 その頃…。職員室にて。


 体育教師の出井女でいおは何かに促されるかのように呟いていた。まるで神がそうさせたかのように…。


「…『世界ザ・ワールド』の…、時が止まった…」


 □ ◼️ □ ◼️ □ ◼️ □ ◼️


 【あとがき】


 真唯のイメージは…


 ウマ娘で言うとニシノフラワーです。実装されないかなあ…。

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