#10 女子生徒達の感じ方。
男性と接した事がなく動画や紙面でしか見た事がない、そんな女性が年々増えている。地球規模の社会問題である。
日本国内でもそれは例外ではなく、男性消失現象が起きてから女性は男性を見る機会がとにかく失われた。世界各国は下がり過ぎた男性出生率をとにかく上げる為にあらゆる手段を講じた。遺伝子操作を伴う人工授精もその一つである。
それまで宗教観や倫理観の面から生命の選別については様々な議論、反対が有ったが人類という種の危機の前には推進しようという声の方が圧倒的に大きい。世界は道徳より種の保存を選び、保守的と言われた日本もまた世界の流れに追随したのである。
しかしそれでも男性出生率の目に見える程の好転は無かった。さらには人工授精により生まれた男性には一つの欠点があった…。
□
「うん、やっぱり違うよぉ〜」
僕をまじまじと見つめるクラスの女子達、なんだかジリジリと近づいてきている感覚がする。
「佐久間君てさ、
「う、うん」
「だよねえ。やっぱ
「うん。アタシ中学ン時、人工授精の男子が学校にいたんだけどさあ…」
「なにそれ、うらやま!」
「そんなでも無いよ〜。確かに悪くないんだけどぉ、生きてるマネキンみたいでさ。なんかー、グッとこないんだ。人工って感じ」
「へー」
女子達は何やらワイワイ話し始めた。
「でもさ、佐久間君は
「どゆこと?」
「なんだろ、お腹の下の方がジワ〜って来るって言うか〜」
「何それ?ムズムズする奴?」
「あ〜、そんな感じそんな感じ!!」
「あっ、じゃあ同じ〜」
「分かるわ〜」
よく分からないけど、僕は何かが違うらしい。そう言えば僕以外にも男の人はいるんだよね。まだ、会った事はないけど。
「でさ〜、佐久間君…」
どうやら僕への質問タイムが再開したようだ。それからしばらく僕はクラスメイトへの対応を続けた。一時間目が終了し休み時間になると近くのクラスからも見物人までやってくる。このクラスだけ凄い人口密度だ。
「こうやって注目されている間が花…かな」
入学当初で物珍しいから来てるんだろうし、見慣れれば自然と離れていくだろう。それこそ今日中にも。
「…そんな風に思ってたんだけどなあ」
入学から十日もするとさすがに学校中から見に来るという事はなくなったものの、それでも見に来たりする人はいた。そしてクラスメイト達もまた何かと話しかけてきてくれた。そんな日々が何日経っても続き、常に誰かが僕の近くにいる日々が続いたのだった。
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