#9 転入生の恒例行事。
「きりーつ!れーい、ちゃくせきー!」
少し早めに一時間目の授業が終わった。
「はーい。これで終わりにしますけど他のクラスはまだ授業中ですからね。教室の外に出たり騒がしくしたりしたらダメですからね」
担任の山岡先生が注意を呼びかける。
「外に行かなきゃ良いんだよね」
「そもそも行く訳ないじゃん」
「そーそー、だって…ねえ?」
「「「佐久間く〜ん」」」
クラスの女子生徒達がやってきた。
□
「ほら〜、佐久間君が困っているからみんな勝手に名前を言わない。佐久間君がクラス全員の名前を覚えるより、みんなが佐久間君の事を覚える方が早いんだからね。これから毎日過ごすクラスの仲間なんだから少しずつ覚えていってもらえば良いのよ。もちろん西野さんもね」
授業時間がまだ終わっていないからだろうか、教室内に残っている山岡先生はそんな声をかけてくる。
正直助かった、いきなり沢山の人に来られてもその場で全員の名前を覚えられる自信はない。
そんな訳でクラスの女子達29人対僕という奇妙な形の質疑応答が始まった。
「ねえねえ、佐久間君。テレビとかで特集されてたけど十五年前にこの学校の生徒だったのは本当なの?」
「う、うん。間違いないよ」
グイグイ来る女子生徒達に僕は受け身の態勢になりながら返事をしていく。隣の席の西野さんも一応こちらの話を聞いているようだがクラスの中では一番消極的だ。
「じゃあさ、じゃあさ!行方不明だった十五年間の記憶が無いのも?神隠しにあった…って言うのもホント?」
「う、うん」
「わ〜、マジなんだ!」
「そうだよ、テレビでやってたじゃん。記憶とか本人の話にセーゴーセー…だっけ?それがあるし、歯の治療痕から本人に間違いないって」
「整合性ね。
そう言って女子生徒達はどっと盛り上がった。初対面、軽い下ネタが会話開始から五分もせずに飛んで来たぞ。これが女子校というやつなんだろうか…。女同士だと意外としてるって聞くけど…、ホントだったんだ。
下ネタを話した事が無い訳ではないけど、女子を交えて話した事なんかない。軽く盛り上がった女子達を見てるのも照れるので僕は何気なく彼女達から視線を逸らした。
それはたまたまだった。たまたま左側に逸らした視線を向けた時、隣の席に座っている西野さんが目に映った。
「………」
そこには先程よりは積極的に…、とは言ってもクラスの女子生徒達よりは明らかに消極に…。僕を見つめている西野さんの姿だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます