#6 ロード・オブ・ザ・バイク(後編)〜修の帰還〜
国道に出たバイクは東に進路をとった。荒川を渡る大きな橋が見えてくるとその直前の交差点を右に曲がった。
田畑混じりの集落を駆け抜けると荒川縁の土手に出た。それに沿うように走る道を南に向かった。
「下手に町中を走るより信号も無いこの道はスムーズだ」
ヘルメット内のインカムからそんな多賀山さんの声が漏れてくる。
「これからどこへ?」
僕は多賀山さんに尋ねた。
「なあに…、良いトコさ」
そんな返事が返ってきた。
□
「アレックス…」
着いたのは一軒のバイク屋さんだった。もっとも正面からではなく裏手側。多賀山さんは『ついてきな、プリティ』と言うと、慣れた様子で裏口から中に入っていった。
近くに車を停めた一山さんと大信田さんもやってきたので三人で中に入ると多賀山さんと布ツナギを着た五十代に入ったくらいの女性が僕たちを迎えた。
「誰を連れ来るかと思えば…。お前もたまには気の利いた事するんだな」
その女の人はいかにも
「ここはなプリティ、旧車…まあいわゆる古いバイクが多い店でな…」
「馬鹿野郎、古いって言うな! キャブ
そう言って多賀山さんの話を遮った。
「人に紹介されんのは性に合わないから自己紹介させてもらうぜ。私はコイツの叔母で
「ああ、バイク見せてやってくれよ。興味があるみたいだからさ」
「良いぜ。だけど大丈夫か?ウチはスクーターとか無いぞ?」
「あ、はい。僕が見たいのはあの辺とか…」
そう言って僕は気になっているバイクを指差した。
「あれが良いのか?」
「はい、あの90年代から2000年に入るあたり…。あの辺のが見たいです」
「あ?規制が入ってパワーダウンしてる時期じゃねーか?」
「え、ええ。だけどパワー以外にも魅力あるバイクが多い時期と思うんで…」
僕がそう言うと修岐子さんはおかしそうに笑い出した。
「そうか、そうか。色々…、色々か…。よし、好きに触って良いぞ!気に入ったモンがあれば
「はい!ありがとうございます!」
僕はお礼を言うとすぐにバイクを見に行った。僕が生まれるよりも前に生産されたものもある。それがここには並んでる。僕は早速一台目のバイクを見始めた。
……………。
………。
…。
「三毛猫現象…。男がいなくなっちまった世の中だが、そのおかげか乗り手のいなくなったバイクが溢れてな…。部品取りには事欠かなかった」
「だから今でも乗れんだよな」
「ああいう若いヤツがバイクに乗る、良いじゃねえか。この店を継いだ頃にゃ乗るヤツなんかドンドン減ってきててなあ…」
「ああ。乗り手が増えるってのは良い事だ」
そう言って修岐子は鋭かった目元をゆるめるのだった。
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