#5 ロード・オブ・ザ・バイク(前編)。〜修の帰還〜
佐久間修が河越八幡女子高校から脱出しておよそ一時間後…。河越八幡警察署内では熱い議論が交わされていた。
「やはりここは寮のオレの部屋が…」
「いえ!寮ならマクラが二つある
「ウチどうかな。実家だし…。今夜、親もいないしさ…」
「ホ、ホテルは?市役所のほうじゃなくてさ。こ、国道16号沿いの…ラ、ラブ…」
「い、いっその事…、町中から脱出してテント張って…」
「えーっ!?大自然の中で…?アンタ外派?」
「むしろ、学校の寮に再潜入した方がかえって安全なんじゃない?」
「校内かあ…。アタシ、高校ン時の制服どこにしまったかなあ…」
「お前ら!アタマの中は猿並みかあッ!」
龍崎署長の特大カミナリが落ちた。
□
佐久間修、河越八幡警察署に帰還する。
この一報は警察署内を震撼させた。修が警察施設を出て学校内で新生活を始める、それによりどこか意気消沈していた河越八幡警察署内であるが予期せぬ修の帰還により過去の熱狂が再燃。いわば佐久間修ロスに陥っていた警察署内が再び湧いたのである。
一度失った佐久間修…、天然男子が今再び…。その燃え上がる炎は以前のものより遥かに大きく、さらに激しいうねりとなって警察署内を吹き荒れる。比較的若い婦警が多く配属されている事もあり、警察署内は湧いていた。それはもう、これ以上ない程に…。
「クソッ!こいつら、使いモンにならねえ!」
龍崎署長は思わず吐き捨てる。だが、次の瞬間には指示を出していた。
「
経験ある三人の部下を呼んでいた。
「とりあえずはこれでよし…。あと
それだけを部下に伝え、部屋の端にあるロッカーからウィスキーのビンを取り出してグラスに注ぐ事なく一口飲んだ。口内のアルコールがピリピリと頬の内側の粘膜を指した。
「ふうっ!」
喉を焼くようにしながらアルコールが駆け下りる感覚に一息ついた。酒量が増えたな…、龍崎署長はふとそんな事を思った。
元あった場所にウィスキーの瓶を隠すと何気なく窓辺のブラインドを少しばかり指で開く。バララッ、薄い金属が曲がる音が響いた。
多賀山刑事が駆る装備を外した白バイ。その後には例の少年が乗っている。その後ろには覆面パトカー、おそらく
「下手に署内にいるより外の方が安全か…、また酒の量が増えそうだ。だが、それでも…」
退屈するよりはマシか…。龍崎署長は椅子にどっかりと座りシートを後ろに倒した。このまま少し寝るか、そんな風に考えながら…。
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