幕間 ゴールデンウィーク。

#1 家族交流。


「「お邪魔しまーす」」


「あ、ようこそ。と、言っても河越八幡警察署の好意でお借りしている部屋ですけど…」


 僕が寝泊りしている部屋に真希子さんと真唯ちゃんがやってきた。二人は着替え等を持ち込み、布団はレンタル…いわゆる貸し布団というやつだ。真希子さんの仕事が明日休みの為、この機会に三人一緒に過ごそうという事になったのだ。



 研修は終わったが、いまだに僕は埼玉県警の寮にいる。進学希望の河越八幡女子高校は歩いて通える距離にあり、生活の基盤を変えなくても良いのではないかというのが主な理由だ。


 また、埼玉県警からも研修は終わったが寮に引き続き住みたいのであれば遠慮せず使って欲しいとありがたい打診があった。そこで僕は遠慮なく部屋をお借りしている。


 しかしタダで借りるのは申し訳ないので寮の掃除など出来る事をやらせてもらっている。


 そんな研修後の生活で署長さんからご家族と一緒に過ごしてはどうかと打診があった。そこで真希子さんと真唯ちゃんを部屋に招き、家族水入らずで一日一緒に過ごそうという事になったのだ。



「でも驚いたよ。お兄ちゃんが河越八幡女子高校はちじょを志望するなんて」


 真唯ちゃんが開口一番そう言った。


「うん。河越八幡女子高校は元は通っていた高校だからね。それに…」


「それに?」


「真唯ちゃんも通ってるし。やっぱり家族一緒が良いよ」


 そう言うと真希子さんも真唯ちゃんも嬉しそうな顔をした。


 それから僕達は早い時間に布団を敷いた。修学旅行のように布団にうつ伏せに寝そべり、掛け布団から頭だけ出して色々な話をした。以前、河越八幡警察署で再会した時に話したが時間に限りがあるし中々ゆっくりと話せなかった。だけど今日はゆっくり出来る、そんな訳で早くもくつろぎムードで会話を楽しんだ。


 真唯ちゃんを真ん中にして三人並んで寝ている。家族三人、子供を真ん中にして一部屋で寝る事を川の字になって寝ると言うけどまさにこれがそうだなと実感する。なんでもないような事が本当に貴重なんだ、そんな風に思う。


 ゴールデンウィークの谷間の平日、五月一日に河越八幡女子高校への入学志望に対する返答が来る予定だ。家族三人で暮らせたら良いな、そんな事を思いながら僕は眠りについたのだった。

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