#13 土曜日は◯◯◯の日。
「おはよ〜、佐久間君」
「今日は私が右腕だからね〜」
「んで、アタシ左〜!」
一夜明けて土曜日の午前7時30分、警察寮前で僕は出勤する婦警さん達とハ◯エースに乗車していく。すっかり体調も落ちついた久能さんもいる。そして護衛の為に両側から婦警さんに腕を絡められる。いつものパターンであった。
昨晩の寮の食堂では歓迎会で話題になった事や今日の合同稽古について話す。非番日なのに警察署に向かっている人には憂鬱以外のものではないようだ。
「ところで今日は署に行って何をするの?夕方までヒマにならない?」
僕の左横にいる婦警さんが聞いてきた。腕を組みながらそんなやりとりをしていると、まるで付き合っている彼女がいたらこんな風な距離感なのかなと思う。もっとも仕事で僕を護衛してくれているのだから誤解は禁物、下手に接触したらセクハラ現行犯だ。
「今日は食堂に行こうかなと思ってまして」
「食堂?土曜日は休みだよ?」
「はい、なので今回も昼御飯を作っていようかと」
「「「えっ!?」」」
□
河越八幡警察署には大勢の人がいた。通常通りの勤務をする署員の皆さん、そして合同稽古の為に近隣の署から集まった警察関係者の人々。さらには自主研修会の名目もある合同稽古なので本来なら非番である婦警さん達が加わる。もしかすると他の署の皆さんも非番だけど駆り出された人がいるのかも知れない。うーん、社会人って大変だ。
「な、なあ大丈夫なのか?前回より軽く五十人…いや、百人近く増えてそうだぜ?」
美晴さんが心配そうにやってきた。
「ま、まあ大丈夫かなと…。今回もカレーですし…。ご飯を炊いて、カレーを作っておけば良いし…」
「そうだけどよ…、大変だろ?」
「さすがにやると言ってしまいましたしねえ…。しかし、まさか全員が食べたいと言うとは…」
「ホントですわね。というよりそもそも合同稽古の参加者が倍増していますわ。おそらく修さんが寝泊りした柔道場というのがマスコミを通じて知られてるのが大きな要因ですわね」
「え?尚子さん、それはどういう…?」
「連日連夜マスコミが常駐していたように修さんに関する注目度合いはまさに時の人と言うべきもの。中にはこの河越八幡警察署を聖地と呼んでいる人もいるくらいですわ。おそらく昼食に修さんのカレーが振る舞われる事が外部にもれてマスコミが殺到しますわよ」
「あっ、そう言えば朝イチで来てた
「無理もありませんわ。修さんが過ごした場所ですもの」
何ですか、その熱心な方々…。
「ならアレだな、騒ぎになる前に買い出し行くか?」
「それが賢明ですわね」
そんな訳で美晴さんと尚子さんは買い出しに出かけていった。僕も行こうかと思ったが、同行するとさすがに目立ち過ぎるという事で二人にお願いした。
署内にはいつもより多くの人の気配があり、集まった人の多さを実感する。さて、カ
レーを作る前に出来る事をやっておこう。
「ふー、やっぱり重い」
お米をといで内釜を持ち上げると腕に
炊飯にお釜を総動員する、電気炊飯器にガス炊飯器をフル稼働だ。その間に保温機を用意する。5升サイズの保温ジャーを準備、タイヤの付いた台に乗せた。
カシャンッ!!
ガス炊飯器から音がした、炊き上がりを知らせてくれている。さすがにガス炊飯器、1升のご飯を炊いたというのに早い仕上がりだ。
急いでご飯を保温ジャーに移す、空になった内釜で次の炊飯の為に米をとぐ。さあ、どんどん炊いていかないと。
そうやって炊飯をしていると、調理場の入り口のドアをコンコンとノックする音がした。
「あっ、はーい!」
美晴さん達が買い出しから戻ってきたのだろう。そう思って返答し、ドアを開けるとそこには制服姿の久能さん。そして…
「来ちゃった…」
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