#13 【閑話】女子達ヒミツ研修。


 修の作ったカレーライスを堪能した河越八幡警察署の女性警察官達。その日の夕方、瀧本美晴は武田尚子と他三名の同僚を寮の自室に招いた。


「え〜、これより『天然男子と親密になるには』研修を始めます。現在、河越八幡警察署にはシュウ…佐久間修君が滞在している訳ですがぁ〜、彼とより親密にになる…これを目標に色々考えていこーぜ」


「今日、修さんのカレーライス…つまり手料理をいただいた事で修さんと私達との関係はそれなりに進展していると言えますわ。ですが、この次の週末には修さんの男性向け復帰プランは終了…同時にこの署内からの退去も意味しますわ。そうなると修さんと一つ屋根の下という夢のようなシチュエーションは今後なくなる…、修さんと何らかの進展をしておけばその後もお付き合いが継続されるかも知れません!」


「そうだ!オレ達には時間がーんだよ、時間がよォ!だからヤるしか…、ヤるしかねえンだよ…。進展…、あわよくば既成事実ってヤツを作っちまえば…」


「コホン!!美晴さんの身もフタも無い言い方はともかく、修さんとの仲を進展させようにも私達は男性と接した事があまりに少な過ぎますわ。ですから経験は…」


「「「経験ッ!!?」」」


 経験という単語を尚子が口にした途端、その言葉に婦警達が大きく反応する。


「ああ、もうっ!!あなた達、エロ連想ワードに反応しすぎですわっ!経験はこれから積むとして、まずは男女の恋愛知識を頭に叩き込むのが大事ですわ!ですから、旧時代の男性が好んだ恋愛をテーマにした資料を通販で取り寄せて用意しましたの!」


「そっ、そうか!これで男の子がどんな女の子を好きになるかとか…」

「あ、あと、自然な男女交際までの流れとか…」

「交際したら…す、する事とかさ…」

「「「ゴクリ…」」」


「そーいう事だな。ま、とにかく見てみよーぜ?んで、見終わったらお互い実際にやってみてよォ…。んじゃ、まずはこの恋愛ゲームからだな」


……………。


………。


…。


 アニメDVDを見終わった五人。


「うーん、朝一番に起こしに行くのかぁ…」

「勤務開始前なら…」

「で、でも、アレにどう対処するの?」


 美晴と尚子を除いた三人が何やら戸惑っている。


「よしっ!じゃあオレが男役やるから、尚子が女役な。んで、こういう時にどう対処するか考えながら予行演習といこうぜ!」


 美晴はそう言って掛け布団をかけて寝る演技をした。人の婦警は壁際に下がった。尚子はと言えば部屋から出て、再び入ってくる素振りをする。


「お、おはよう。修さんっ!朝ですわっ!あ、あれっ?まだ寝ていますのね!まったくお寝坊さんなんですからっ!わ、わたくしが起こして差し上げますわっ!」


「う、う〜ん。なんだ尚子か。もう少しだけ寝かせてくれよ…」


 ぎこちなく修の名を呼ぶ尚子、そしてイケボがさいわいし妙に男役が上手い美晴。


「まったく…。ほら、起きろ〜っですの!」


 ばさあっ!!


 尚子が美晴の掛け布団を勢いよくはぎ取る。


「きゃああああっ!!な、何でがそんな風になっていますのっ!」


「こっ、これは生理現象で…」


 両手で顔を覆う尚子、同様に下半身を隠そうとする美晴。意外と芸が細かい。


「バカバカバカッ!!いやらしいですわっ!」


「し、仕方ないだろう。す、すぐにはおさまらないんだし…」


「お、おさまらない…?じゃ、じゃあ、わたくしが…お、おさまるようにしてあげても良いんだからねっ、ですわ!」


「「「おおおお〜〜!!」」」


「はい、終了〜!!いやー、尚子良かったぜ。幼馴染おさななじみ属性が無いところを自前のですわ口調とツンデレで押し切るとは大したモンだ!!んじゃ、次は…」


「今度はこのDVDですわ!!」


……………。


………。


…。


「うわー!!ザックリいったなー!」

「あそこで『死んじゃえ』はヤベーよ!ナタだぜ、ナタ!」

「いや、お腹をかっさばく方がよりヤバい!」

「そうそう!妊娠初期じゃまだ赤ちゃんって判別出来ないよー」


……………。


………。


…。


「こ、これが触手…」

「エロゲすげえ…」


「「「ゴクリ…」」」


 カチッ。…カチッ。静まり返った部屋に尚子がマウスをクリックする音が響く。


『ら、らめえええっ!!』


 美晴達がプレイしているエロゲ、グラフィックやテキストだけでなく、音声もある。


「こ、この『らめえええっ!!』って要所要所に出てくるね…」

「こ、こういう事を女の子が言うと男の子って嬉しいのかな…」


「お待ちなさい!それだけと決めつけるのは早計ですわっ!」


「「「えっ!?」」」


「実はまだ他にもあんだよ…。エロゲ…」


「こっ、これだけじゃないの?」


「ええ…。他にも『御奉仕系』、『調教系』。残念ながら今回手に入ったのはこれだけですが…、でも…」


「ああ、長い夜になりそうだぜ…」


 五人の勇者達はその夜、一睡もする事なく月曜の朝を迎えたという。全ては想像するしかなかった天然の男性の生態を知る為に。


 しかし、その為に集められた資料はす非常にかたよったものだったのである。







 

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