第2話


「いいこにしてたら、びょうきのなおったママがむかえにきてくれるの」


 サンディは、施設でもいい子にしていました。


 病気を治したママが、いつかサンディを迎えに来てくれることを信じて。


 けれど、施設にいる子供達はそんなサンディを馬鹿にして、とても意地悪なことを言うのでした。


「バッカじゃねぇの? 捨てられたんだから、迎えに来るワケねーじゃん」

「お前さぁ、いつまでそんなこと言ってんだ? いい加減現実を見ろよな」

「親が迎えに来て、一緒に帰った奴なんてここには誰一人いやしねぇんだよ」


 そんな風に言われても、サンディは諦めないで挫けませんでした。


「ママはむかえにきてくれるわ。まだすこし、ぐあいがわるいだけだもん」

「いいこにしてれば、きっとだいじょうぶ」

「みんなは、ママがむかえにきてくれるあたしがうらやましくてイジワルしてるだけなのよ」


 サンディは意地悪なことを言われても、自分を励ましていい子にして頑張り続けました。


 児童養護施設では、里親になってくれそうな人に見染められる為に、子供達は自分の容姿を磨いたり、なにか技術を身に着けたり、勉強を頑張ったり、面談に取り組んだりと、各々が日々努力しています。


 施設も、オーディションのような会合を開催して、孤児を引き取ってくれた人から寄付金・・・を貰う為、様々な人に施設の子供を勧めます。


 そんな風にして、施設を出る努力をしている子達と、子供達を施設から出したい大人達からも、ママを待続けているサンディは浮いてしまっていました。


 そんなある日のこと。


「アンタ、まだママがここに迎えに来るって信じてるの? バッカじゃない? そんなアホな子って、アンタくらいなものよ。そもそもさ、アンタのママのビョーキって、どう聞いたってヤク中なんだけど。ああ、ヤク中って知ってる? 違法な薬を、勝手に使う悪い奴のことよ。薬欲しさに犯罪でもなんでもする、クズな奴ら。入院って言ってるみたいだけど、それも怪しいわ。更生施設だとか、刑務所の間違いなんじゃないの? まぁ、間違いなくアンタを虐待した罪で、逮捕は確実だけど」


 と、サンディよりも年上の女の子が、サンディのママを信じて待つ気持ちを踏みにじって笑いました。


 意地悪な言葉に、サンディは施設へ来て初めて声を上げて泣いてしまいました。


「なに泣いてんのよ? あたしはアンタに、親切にゲンジツってやつを教えてあげただけよ」


 女の子はサンディの泣き顔を見てそう言うと、どこかへ行ってしまいました。


 そうやって、心無い言葉に打ちのめされたサンディが失意で落ち込んでいるときのことでした。


「是非ともこの子を養子に迎えたい」


 と、言ってくれる人が現れたのでした。


 サンディを養子にと望んだのは、とてもお金持ちの一家でした。


 何度も施設に足を運び、サンディに面談をして、自分達が如何いかにサンディを家族にしたいと願っているかを熱心に語るのでした。


 サンディは、とてもとても迷っていました。

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