寒空の下で

寒さに凍えてた君を

僕はその日見つけた


夜の寒空の中

コートも着ずに震えてる君


何故と聞く

指を刺した垣根を分けて覗くと

草むらに

コートが敷いてあり

そこに子猫たちが固まっていた


今年は特に寒さの滲む年で

それだけで子猫たちが生き延びれるかは

少し疑問だったが

親が戻るかもしれないものを拾うのも

なにか残酷なような気もして


君を僕のコートで包み込み

街へ歩き出した


途中、君の知り合いに彼氏扱いされたけど

僕はあえて否定はしなかった


子猫を思う優しい心と

どこか幼さが残る顔は

決して悪いものではない気がしてた


僕は心で苦笑いする

クリスマスも近づくこの12月になって

僕をふった彼女は

その足で新しい彼氏とその仲間に紛れて

飲みにでも行ったのだろう

後姿がまだ焼き付いている


ふられてまだ1週間もたってないのだから

至極自然だろう

苦笑いしたのは・・・

彼女はセクシーで情熱的だった


僕はいつもリードされっぱなしで

こんな風に

包むようにコートに入れて

歩く真似などしたことなかったからだ


好みがどちらかというと

実際はわからない

交際を申し込まれたのも向こうからだったし


今ものこの子も

コートを着ずに震えてなければ

通りすぎただろう


家まで届けると

両親がでてきてお礼を言われる

なんとなくくすぐったい気もするが

悪い気分じゃなかった


お礼に上がりたいという声に

住まいを教えて後にした


君が大人になるには少し時間がかかる

でも・・・

僕は最良の人を見つけた気がしてた


コートの中で心臓の音さへ聞こえそうな

緊張感を

優しさでほぐしてあげたいと思った


後日親に連れられてきた君は

ドキッとするくらいかわいらしくて

本当にすごい拾いものをした気分だ


この子が大人になり切ったら

どんなに美しいだろう

僕は手折らないように

大事にしようと心に秘めて

君と接し始めた


あれから10年の月日がたつ

君の美しさは

いつも周りがうらやむ


でもね

僕は知ってる

君が美しいのは

あの日のままの優しさと

美しさをもった心のせいだと



寒空は10年の月日を経て

いつも毎年、暖冬を伝える

寒くなると言っても

あの日の寒さはない


僕も青年とは言えなくなったけど

君は嫌がりもせず

プロポーズを受け入れてくれた


あの日、置いてきた猫の代わりに

君が飼いだした猫が

病気で死んで

悲しみの中慰めるように

一緒にいる時間が多くなり


今はもう離れてる時間のが短いけど

君がコートをいつも1枚余分に持ち歩くのを見るたびに


僕はあの頃の光景を思い出すのだ

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