第3話


「……それって、これのこと? です。♪~」


 もう一人の小さな小鳥さんがハミングをして、メロディーを歌いました。


「ええ。そのお唄よ。わたくしは、そのお唄が聞きたかったの。歌ってくれる?」


 微笑んだわたくしを、


「っ……こもりうたなら、おやさしいハハオヤにでもうたってもらえよっ!?」


 小鳥さんが睨み付けました。けれど、


「こもりうたってなぁに? それは、お願いしたらお母様が歌ってくださるの? でも、残念だけどお母様は領地にいらっしゃるから、このお家にはいないの。今度お会いできるのは、社交シーズンだと思うから……今は無理だわ。ねぇ、こもりうたって、なぁに?」


 わたくしの質問に、小鳥さん達は困ったように顔を見合わせました。


「……ほんとうに、こもりうたをしらない、ですか?」

「? ええ。有名なお唄なの? 知らないと、恥ずかしいのかしら?」


 お勉強が足りないのかもしれないと、わたくしは思いました。高貴な女性は、流行に敏感でなくてはならないのだと教わっています。


 こもりうたを知らなければ、叱責されてしまうのかしら? と。


「……たぶん。しらなくても、だいじょうぶ、だとおもう。です」

「あら、そうなの?」

「はい。こもりうた、しらないこ。ほかにもいる、です。……ねぇ、うたってあげて」


 小さな小鳥さんが言うと、不機嫌な小鳥さんが溜め息を吐いて大きく息を吸い、その喉から歌声が響きました。


 それは、安心するような、眠たくなるような、わたくしの魅せられた……優しくて美しい歌声。


「ありがとう、歌ってくれて嬉しいわ」


 わたくしが笑顔でお礼をすると、小鳥さんは顔を赤らめてそっぽを向いてしまいました。


「別に……これが、ぉ……仕事だからなっ」

「そう、おしごと。です」


 小さな小鳥さんも頷きます。


 こうしてわたくしは、自分を慰めさせる為だけに小鳥さん達を手に入れたのです。


 小鳥さん達のお陰で、わたくしの心は安らぎを得られました。


 ――――小鳥さん達へと、どんな犠牲を強いたのか知りもせずに――――


♩*。♫.°♪*。♬꙳♩*。♫

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