第三部 IVレポート5

 公開放送版のラジオ『GOO♪ラジオらす!』。

 その準備をするみんなを横目で見ながら、わたしは光の線を見上げていた。

 綺麗なはずなのにどこか歪で、不快で……夏樹さんじゃないけどずっと見ていたら気持ちが悪くなりそうだった。

 みんなには黙っていたけど、わたしにはアレの正体がわかった気がした。

 わたしとアレは多分、対を成す存在なのだ。

 わたしは『IV(インナー・ボイス)』。

 内なる声に耳を傾けるような人にしか見えない存在。

 それはきっとわたしが非感染者の繋がりが具現化した存在だからだ。

 竹流とヒカルを見ていればわかる。

 非感染者は表面的によりもむしろ内面で繋がっている。

 信頼、絆……それらは全て人の内面的な繋がりだ。それがわたし。

 内面的な繋がりなので人の型枠を越えることはない。

 だからこのような少女の姿で……人の形で生まれることができたんだと思う。

 対してアレは感染者達の繋がりが具現化したモノ。

 人が外側に求めた繋がりが具現化した存在だ。

 誰かといつでもどこでも繋がっていようとした人々が生み出したモノ。

 そのため制限なくどこまでも広がり続け、

 あの様な歪な姿になっているんだろう。

 まるで人の飽くなき欲求そのものにも見えた。

 アレはわたしの半身。もう一人のわたしの姿。

「ねぇアイヴィー、パイプ椅子運ぶの手伝って」

 ヒカルに呼ばれ、わたしは「うん、いま行く」と返事をした。

 わたしはわたしとして生まれたことを、

 竹流やヒカル達の輪の中にいられることを、

 そんなみんなと笑い逢えることを嬉しく思う。

 だからこそ……。

 アレはわたしがなんとかしなきゃいけない気がした。

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