第一部 ある少女の独白4

【ある少女の独白4】


 あの抜け穴を見つけたのは本当に偶然でした。

 屋上へ向かう階段は途中でカギの掛かったドアと塀に阻まれます。

 カギは看護婦さんしか持っていません。

 病院だから下手な人が屋上に上がるのを防ぐためでしょう。

 ただ本当に階段の途中で仕切られているため、

 階段の手すりの所に僅かな隙間があったのです。

 大人は通れなくても子供ならギリギリ通れます。

 私はそこを抜けて屋上へとたどり着きました。

 空はあの日のように高かったです。

 相変わらず、腹立たしいほどに雲一つ無い夕焼け。

 屋上には無数の物干し竿がありました。

 夕方ということもあって、もう何も干されていません。

 階段の所でシャットアウトしているせいか、

 屋上には転落防止用の金網みたいなモノはありませんでした。

 私の頭ぐらいの高さの手すりがあるだけ。

 私はその手すりの上に腰掛けました。

 何となく足をブラブラさせる。

 少し体を傾けるだけで、今度は上手く……。

『それが……あなたの願いなの?』

 え?

『本当にそれがあなたの願いなの? 望みなの?』

 どこからともなく聞こえてきた声。周りを見渡しても誰もいません。

 不思議ですが、その声は自分の内側から響いて来たように思えました。

 ……私は……私はただ……

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