第2話


「それは、当然のことではありませんか?」


 これだけじゃあ、やっぱり納得してくれないわよね……『婚約解消か白い結婚、愛人を許せ』だなんて。本っ当に気は進まないけど、話を続けましょうか。


 はぁ……


「当然だけど、当然どころじゃないのよ。あなたも知っての通り。今うちの国、王位継承権を持つ男子が二人しかいないじゃない? そのうち、一人はこないだの風邪で真っ先に倒れた七十過ぎたお年寄り。これじゃあ実質、王位継承権のある男は、王子一人きりと言っても過言じゃないわ。陛下も頑張ってはいたんだけど……ほら、うちは姉妹王女達しかいないし。降嫁した王族の産んだ子達も、見事にみ~んな女子ばかりよ」


 現国王と王太子、くだんの倒れたお年寄りを除くと、この国の王位継承権を持つのは王女いもうと達と、既に嫁いだ王姉おば王妹おばの子供達の女子だけがたくさんいる。


 ちなみに、他国へ嫁いだ王族がその国で産んだ王子は除外しての話、ではあるけど。


「そう言えば、そうでしたね」

「そうなの。一応ね、ここ二、三十年程で王族に連なる男子が生まれたこともあったらしいのよ? でもね、みんな早くして亡くなってしまったみたいで、誰一人として育たなかったんですって。しかも、全員が正真正銘の病死。暗殺や、政治的判断なんかは一切無いのよ。純然たる自然死」


 ここまで不自然さが無いのも、逆に凄いわ。


 この国では、王族男子の少なさは数十年前から問題になっていて、側室が推奨されて来た。そして妊娠が判明すると、是非とも出産してもらうべく、派閥など関係無く保護されるくらいだ。

 そうして産まれたのが男子だった場合、女児の比ではなく、それはそれは大切に育てられる。ある意味、派閥を越えた一致団結ね。無論、女児が大事にされないというワケではないけれど。


 王室を挙げての王族男児の保護。だというのに、皆が幼くしての病死。

 この事態を鑑みるに、もうこの国の王族の男子自体が、子供特有の病に勝てない程に虚弱になっているということだと思うよねぇ……


「驚愕の貧弱さよ」

「それはそれは、その……なんと言いましょうか……非常にマズい事態、ですね」


 言葉に詰まる婚約者。


「そう。本気でマズいのよ。かなり」

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