第2話
何故、勝算も資金もないのに、これ程の大口を叩けるのか。それについて語ろう。
私が、お笑い芸人を目指すと語っていた頃、多くの大人は笑った。嘲りも入っていたはずである。他人が笑う夢を語りなさい、という教えがある。
若かりし頃の私は、何も知らなかった。
携帯電話やパソコンに書いた拙いネタだけが先行していた。
漫才の間は、詰めてなんぼみたいなところがある。そのネタの中に何パターンの笑いを盛り込むかが勝負だったりもする。一つのパターンをしつこくやるコンビが多くなったが、本当はポケットの数が勝負だったりする。いくつの武器を持っているか。
そういう意味では、うちの相方には数多のネタが入っている。そんな引き出しがあったのか、と唸らせるところが、彼にはある。
私の武器は「受け」である。相手が投げたボールをどう受けて、如何に返すか。
それをツッコミと呼んだりもする。只、年相応に声も出なくなってきた。小声でツッコむことしかできなくもなってきた。よく通る声が欲しくても、発声練習をするしか方法は無い。
そこで養成所という発想が生まれるのだが、この事は相方には伝えていない。漫才師という病気にかかった患者のいう事だから、当てにしないで欲しいのだが、夢を叶えるのであれば、東京ではなかろうか、と思案している。
神戸の片田舎で考えていることだから、真っ当な答えではないが、真っ当な答えだと思っている。
兎に角、東京の地を踏んで、それから作戦を立てても遅くはない。
まずは、相方に会う事である。住みにくい土地に憧れて、神戸を捨てた時、私は、何かが変わると思っている。芸人を踏んで、タレントになるのかは、定かではないが、先ずは漫才で基盤を作ろう、というのが、私の作戦である。
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