第6話伝わらない言葉
―雪花―
最初は中々話には入れなかったけどみんながフレンドリーで自然と話に入れるようになった。
現在――――――
「綾人と唯葉どこに行ったんだ?」
翔はみんなに聞いた。
「まぁまぁ二人ともお盛んなんだから今ごろは……」
芦田先輩はニヤニヤした顔で意味深な発言をする。
「そうね……あの二人良い感じだったしね!!」
春乃は少し考えてから言った。
「あのーすみません?綾辻君と白石さんはどういった関係なんですか?」
純粋な気持ちで聞いた。
「やっぱ気になるよね〜〜!!」
薄気味悪い笑みを浮かべながら芦田先輩は言った。
みんな何故か私の方を見てニヤニヤしてくる。
(????……)
その時だった……
大勢の客がレストラン街から飛び出してくる。
「みんな逃げろー〜!!」
「んーどうなってるんだこりゃ……?」
「とりあえず私聞いてくる……」
春乃は事情聞きに走ってこちらに逃げてくる女の人に話しかけた。
「何かあったんですか?」」
「ナイフを持った学生さんが学生さんに襲っているのを見たんです。」
「そうなんですか?ありがとうございます!」
「いえ、とにかく逃げた方がいいです……」
短い会話を終わらせ、みんなに伝えにいく。
「どうだった?春乃ちゃん?」
芦田先輩は問い掛けた。
「うんとね。なんかナイフ持った学生が学生を襲ってたんだって!!」
「マジか??アイツらは無事なのかな?」
翔は不安そうな顔をしながら言った。
「心配だよね〜。少し電話掛けてみるね。」
芦田先輩のスマホの画面にはLINEで唯葉と表示されている。
「プルル……プルル……ブチ……」
「あ、唯葉ちゃん?そっち大丈夫??」
「はい……大丈夫です。後で合流します……ブチッ……」
元気のない声で返事が返ってきて、すぐに切れた。
「なんか元気無さそうな声してたよ??」
「綾人がなんかやらかしたのかもな」
「まぁ事件に巻き込まれてないから良かった。」
と春乃は安心した表情で言った。
でも私は少し胸騒ぎがしていた。
いや、正確にはもう一人の私が何か言っているような気がした。
「………たか。」
―綾人―
はっと僕が我に返った時にはタンクトップの男も金髪ピアスも気絶していた。
(何が起こったんだ……)
「綾人く……ん?」
その唯葉の怯えていて、今でも泣き出しそうな表情を見て確信した。
僕が彼らをやったんだ……そして、僕は気づいてしまったんだ。
何故だか気分が良いことに。
「唯葉……怖い思いさせてごめん。」
僕は一歩二歩近づいていく……
だが、唯葉一歩二歩と後退する。
「本当の綾人くんはどっちなの?……」
僕は足を止める……そう、僕も今自分を見失っていてその言葉が胸に突き刺さる。
「わからない……けど……僕は唯葉には理解して欲しいんだ。」
「意味わからないよ……でも私は綾人君を信じたい。信じてこれからも一緒にいたい。」
僕たちはお互い向き合い、言葉では伝わらない何かを伝えようとしていた。
そして、唯葉は手を差し伸ばし、唯一の関係になった。
あれから数時間……
警備員が僕を襲ってきた二人を捕まえ、一件落着となった。
しかし……そのあと事情聴取を受ける羽目になった。
「えーと君が襲われたから正当防衛で殴ったと。」
「そうです。急に襲われたんですから。」
「本当かなぁ??学生だからトラブルとかあったんじゃないの?」
「それはありません。面識無いんですか。」
唯葉はそう言った。
今話している警部はかなり疑い深い……名前は葛葉マサルという。
正直しつこ過ぎて嫌いだ。
「まぁそういうことにしてあげるよ。」
(いや……ほんとのことなんだけど……)
そして、事情聴取をし終え、唯葉とまた二人っきりになった。
「もう夕方になったなぁ。」
事情聴取から解放されたが茜色の夕焼けが広がっていた。
「そうだね。昼食も取れなかったもんね。」
でも何故か唯葉は嬉しそうに微笑んだ。
「ねぇ、最後に観覧車に乗らない?」
僕たちは観覧車に乗り、夕焼けの美しさを眺めながら無言でいた。
だけど、僕は話したいことがあった。
だからこれはチャンスだと思い、口を開いた。
「唯葉伝えたいことがあるんだ。今までずっと言えなかった。けど今言わなきゃ前には進めない。」
この時の自分は告白紛いな事を言っている自覚が無かった。
だが唯葉は僕が告白をすると決心したような空気感があったらしい。
唯葉は顔を夕焼けのように真っ赤に染めた。
「待って!!私から言わせて!私も前に進みたいの!!」
そして、二人は決心する。
「私は綾人君の事が……」
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