第4話デート開幕
「どうしてこうなった……」
僕は今の状況に唖然としていた。
「おーい!!綾人次ジェットコースター乗ろう!!」
翔はいつもと違い、短髪の髪にワックスをつけてセットして、服装はいつもの半袖短パンのバリバリのスポーツ系じゃなく、黒のサマージャケットに白色のアイスTシャツそして黒のハーフパンツというコーディネートだ。
「わかったよ……」
「いやぁ〜デート楽しいね綾人君!!」
「綾辻君、本当に私も来てよかったの?」
可愛らしい優しい声音と白髪が似合う
「大丈夫だよ。」
なるべく優しいトーンで返す。
(はぁ……結局過去も今も変わらずってか……)
こうなった経緯は昨日に遡る。
「確かエレベーターが壊れてて」
と話しながら玄関のドアを勢いよく開け、エレベーターを見る。
(あれ……さっきまで壊れてたはずなのに)
先程の故障中の看板がなくなっていた。
「業者さんの修理が終わったみたいだね。」
「そうだな。」
深く考える必要がないと判断し、エレベーターに乗り込み、10.9.8……階へと徐々に下がっていく。
「ねぇ…話しって何?」
「後で話す。」
それから無言で駐輪場まで向かい、唯葉と二人乗りした。(良い子は真似しないでね!!)
唯葉は軽く僕のワイシャツを握りしめる。
時々身体が触れ合い緊張感が増しながら自転車を漕いだ。
学校に向かっている途中には生徒たちが下校する雑踏に囲まれていた。
あちこちから「うわぁリア充だぁ。羨ましい。お似合いだわ。」とコソコソ話しているのが聞こえてくる。
「私たち恋人見えてるみたいだね」
唯葉は少し微笑んだ。
「そうかもな。」
僕は腕時計で時間を確認し、5時20分を回ろうとしていたのでさらに力強く漕ぎ加速させた。
―部室―
部室に着き、ドアを開けた。
「やっときた!!遅いよ綾人!」
椅子から立ち上がり、春乃が不満そうな顔でこちらを見上げる。
「悪い……その遅れた。」
「まぁ良いけど……唯葉来てくれたんだ!!」
春乃は唯葉に抱きつき、頭を撫でている。
「それで話って何??」
「私も気になるぅ!」「俺も!!」
芦田先輩は全く関係ないし翔に至っては楽しそうに笑っているのが腹立たしい。
「えぇーとその………」
何故か言葉が出てこなかった。
大事なことなのに素直に謝罪の言葉が浮かばない。
僕は内心焦り、少し変な汗をかいてしまう。
「私と明日デートするんですよ!!」
唯葉は嬉しそうに微笑んだ。
(多分察してくれたんだろう……昔からの付き合いだ僕が素直じゃないやつだって知っているから。)
また助けられてしまった。
自分が改めて情けなく、業腹この上なかった。
「ああ、そうなんだ。」
「成る程!つまり二人の成り行きを見守って欲しいってことだよね?」
春乃は何故か安心した顔で言ってきた。
「うん!だからデート成功する様に一緒に来て欲しいんだ!!」
唯葉はそう言うと、
「成る程ね!わかったわ!明日はみんなで遊園地に行きましょう!!」
と芦田先輩は納得した表情で頷きながら言った。
「後は、綾人君の嫁さんも連れてきたら??」
芦田先輩はニヤニヤしながら言ってきた。
「嫁じゃないですよ。ただの友人です!」
「おかしいな!?いつも放課後二人きりで何しているのかなぁ??」
本当この先輩は苦手だ。
「確かに!転校してきてからあの子綾人君以外の人と話さないよな?しかも別嬪さんだよな!もうこの世にあの様な美女が存在してたなんてな。」
翔が追い討ちをかけてくる。
唯葉の方を向くと笑いながら見てくる。
怖くて直視できない。
「わかった。誘ってみるよ。」
「私もあの子と話してみたかったんだよね!」
春乃も賛成していた。
「じゃあ明日の9時遊園地入り口前集合!!」
完全に仕切りの主導権を芦田先輩に奪われた。
家に帰宅した後、僕は雪花に電話を掛けるために翔がいない場所、つまり外に出た
外は薄暗い中ベールほど薄い雲かかった月、星々が空一面に輝いている。
気温は日ざしが出ていた時間帯とは違く、丁度いい涼しい風が吹いている。
プルルゥ……プルルゥ……プルルゥ…
コール音が携帯電話から鳴り響く。
「もしもし?明月です。」
「もしもし綾辻だけど今大丈夫?」
「はい、私転校生だからルームメイトがいないので大丈夫です。」
「転校生ってそういった事例があるのか。」
「はい。えーと……放課後の話でしたっけ?」
「すまん!放課後の本題なんだけど明日に回せないかな?」
「明日ですか?明日は休日で学校なかったような……」
僕はなんて事情を説明したらいいのか困惑した結果…
「友達のみんなが明月さんと話したいって言ってて。仲良くするために遊園地に行こうって話してたんだ。」
最初は本音だが最後は大嘘をついてしまった。
「そうなんですか。でも私大人数が苦手で……」
「僕もそこまで得意じゃないけど意外良い人多いよ。まぁ無理しなくても大丈夫だけど。」
と気を遣いつつ少しあいつらの印象良くする。
「わかりました。頑張ってみます!」」
覇気のある声で言った。
「じゃあ明日9時に遊園地の入り口に集合で!」
「はい!わかりました!おやすみ!」
「おやすみ!」
プツン…
なんだが彼氏と彼女が明日デートに行くみたいな会話しているが実際は唯葉とデートの約束だったんだが……
「はぁ……結局謝罪できなかったな……」
夜空を見てため息をついた。
―遊園地―
「浮かない顔して大丈夫?熱中症?」
心配して声を掛けてくれたのは唯葉だった。
「うん。大丈夫だよ。」
ぼーっとベンチに座っていたらいつの間にか唯葉と二人きりになっていた。
「みんなは?」
「えーとジェットコースター2週目かな!」
少し唯葉は笑った。
「じゃあ約束したから二人で一緒に回るか?」
唯葉は意外な発言に驚いていた。
自分でも驚いている。
もしかしたら今日の僕なら素直に慣れるんじゃないかと……
「うん回る!!」
彼女は少し頬を赤く染め、にっこり満面の笑みを浮かべた。
そして、唯葉が僕の手を取り、握りしめ、歩き始めた。
その手の感触は柔らかく、小さかった。
僕はドキマギした状態でこの今ある一瞬を楽しもう。
だから、これが終わったら全てにケリをつける。
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