第2話噂は不幸を呼ぶ
僕は彼女の案内係をしていた。
「でどこか行きたいところあったりする?」
「そうですね。あそこに行きたいです!」
彼女が人差し指で指した方向には学園内にあるデパートだった。
「いいよ。ついでに晩飯でも食べよう。」
僕はとりあえず晩飯をファミリーレストラン(お手軽価格)のお店に入った。
店内は冷房が効いていて涼しい。この時間帯は店内がよく賑わっている。
「いらっしゃいませ!何名様でしょうか?」
「2名でお願いします。」
「畏まりました。席をご案内します!」
案内された席に座るが彼女は不思議そうな顔でこちらを見つめている。
「どうかした?もしかしてファミレス嫌いだった?」
「いえ、ファミレス?っていう店なんですか?私初めて入るので…」
僕は驚愕した。ファミレスも知らない人がいるんだ。
もしかしてお嬢様だったりするのかもしれん。
気品もあるしな。
―白石唯葉―
私は目撃してしまった。綾人が可愛い女の子とファミレスに入るところを…
まさかデートじゃ無いよね?
私の気持ちまた伝えられないで終わるの嫌だよ。
「どうしたの結葉浮かない顔して?」
「いや、綾人君ぽい人が今ファミレスに女子と二人で入ってた。」
「マジか!あいつも隅に置けないな。見にいこうぜ」
翔は乗り気らしい。
「邪魔をしないなら私も行っていいかな」
春乃はちゃんと綾人の条件を飲み込んだらしい。。
「私も邪魔しないなら。」
「よし、じゃあ潜入するか!」
とりあえずファミレスで少し近い席にした。
「何話してるのかな…」
「まぁとにかく聞いてみよう…静かにしろよ……」
―綾辻綾人―
10分前……
「そういえば自己紹介まだだったな。ぼくは綾辻綾人って言います。貴方は?」
「私は……明月雪花みょうげつゆきはって言います。名乗るの遅れてすみません。」
「いえ、こちらこそ。」
「なんで急に僕と行動しようと考えたんですか?」
僕は問い掛けた。
「実は、本当のことを話そうと思いまして。」
「本当のこと?」
あの意味のわからない発言の真相がわかるのか。
「私は二重人格なんです。それでそのもう一人の私が私の身体を乗っ取り綾人さんに接触したんだと思います。」
「僕に?それに、今の君はどっちなんだ?」
「今は恥ずかしがり屋の私です。」
正直二重人格って急に言われても想像できないが空気を悪くする訳にはいかない。
「成る程。それでなんで僕にもう一人の雪花さんは接触しようとしたんですか?」
「たぶん同じようなものが綾人さんにもあるんだと思います。もう一人の私と同じ存在が。」
そう言われたも頭の回らない僕はその時は話半分に聞いていた。
「私がこの高等学校に転入したのもこれが原因です。急で申し訳ないですが一緒に二重人格を治していただけませんか?」
よくわからないけど困ってる人がいるなら助けるのが僕のモットーなのでこう言った。
「力になれるかわからないけど僕でいいなら協力するよ。まず何すれば良い?」
彼女は顔を赤く染めながらこう言った。
「私のパートナーになって下さい!」
―白石結葉―
私たちはとんでもないことを聞いてしまった。
しかもファミレスで告白するなんて…
私は胸が痛くなった。
また告白できなかった…私は一生想いを閉ざしたまま終わるのかな…
「今の告白だよな?いつからあいつと彼女いつからそういう関係だったんだろ。今日の事は秘密にしようぜ。」
「私も初めて知った。あの子誰なんだろう?」
「とりあえず帰るか!唯葉どうしたんだ?まさか!?」
私は気付かないうちに涙が溢れ落ちていた。
そして、走ってその場から立ち去った。
(上手くいかないね…私)
―綾辻綾人―
「パートナーってどういう事?」
雪花は口下手だった。
「えっと…放課後一緒に行動して欲しいんです。。」
間際らしい言い方するなぁ。
「わかったよ。じゃあ放課後どこに行けばいい?」
「それじゃあ図書館とかどうですか?」
確かに図書館は人があまり来ないから打ってつけだな。
「良いね。そうしよう!」
彼女と約束を交わし毎日放課後は一緒に行動する事になった。
―放課後―
「そういえば君が転校してきた原因が二重人格でなんでこの高校なんだ?」
僕は二重人格について書いてある文章の本のページをめくりながら聞いてみる。
彼女はっと我に変えり、
「そういえば…忘れてました。ある噂をネットの掲示板で見たんです。」
「ある噂?」
彼女は碧眼の瞳で真剣な眼差しでこちらを見てくる。
「はい。それはこの学校には不可解な噂が2つあるんです。」
「これは私がネットの掲示板で見つけた話なんですが一つは、毎年この学校の生徒が一人死ぬんです。それも身体の一部が欠損した状態で。」
その後も雪花は話し続ける。
「私は先輩たちにそれは本当なのか聞いたんですが知らないと言われました。」
「そのネットの掲示板でイタズラの書き込みとかじゃないのか?」
「私も最初はそう思ったんですが友達で心当たりある人が一人いました。その説明は後でします。」
雪花はあまり人と話すのが得意じゃないので少し疲れている。
「少し休憩するか?」
「はい。お願いします。」
「わかった!10分休憩しよう。」
雪花は一息付くと鞄から携帯電話を取り出した。
僕も雪花に倣ってポケットから携帯電話を取り出し、携帯電話を見ると一件のメールが届いていた。
迷惑メールで身元不明だった。
「今すぐ屋上に来い。」
と表示されていた。
(一体誰からのメールなんだ…)
「ごめん。少し屋上に行く用事が出来た。少しそこで待っていていくれ。」
「わかりました。戻ってきたら続きを話します。」
彼女は微笑みながら手を振った。
僕は屋上を目指して階段を駆け上がっていく。
学校は2階は図書館で四階が屋上だ。
屋上に着き、周囲をを見渡す。
刻々と色を濃くしていく夕暮けは僕の眼前に広がる。
「やっときたね!待っていたよ。」
「迷惑メールを送ったのは君か。」
僕の目の前には夕焼けと同じ茜色をした髪の毛が目立つ少女が立っていた。
「私は雪花の友達の夕日茜ゆうじつあかねって言います。掲示板について知ってる謎の美少女です!!」
「普通は自分で美少女って言わないぞ!」
僕はツッコミを入れる。
「じゃあ私は可愛くないの?…」
涙目で訴えかけてくる。
(あざといがまぁ可愛いっちゃ可愛いんじゃないですか?)
「うーんまぁ可愛いじゃない?」
なるべく興味なさげに言う。
「なんとも思ってないでしょ?まぁ良いけど…本題に入りましょう。」
さっきの涙目演技じゃないか!
茜はコホンと咳払いをした。
「雪花から話は聞きましたか?」
「ああ、人が毎年一人死ぬって話は聞いたよ。もう一つはまだだけどな。」
「成る程!まだ二つ目の噂は聞いてないんですね。」
と言いながら困った表情でこちらを見てくる。
「まぁいいでしょう。一つ貴方に忠告があります。Aクラスの相澤領あいざわりょうには関わらない方が良いですよ。」
不敵な笑みを浮かべた彼女は最後にこう言い残した。
「ちなみにネットの掲示板は何者かによって削除されたよ?じゃあまた今度三人でお茶しましょう!」
茜はあざといウインクをして屋上の階段から降りていった。
図書館に戻る頃にはちょうど10分過ぎてた。
「ごめん、遅れた。」
そこには元カノの月夜雪つきやゆきが雪花の隣の席にいた。
「綾辻君相変わらずだらしないね!」
笑いながら月夜雪は僕を見る。
「一部始終見てたけど彼女ほったらかして10分以上何してたのかなぁ」
(こいつ嫌味たっぷりに言うなぁ…)
「冗談だよ!ただ謝罪しようと思ってて。」
さっきまでからかいにきてたのかと思ったけどどうやら違うらしい。
「最近図書館にいるのをよく見かけてたから声を掛けようって思ってね。そこで、綾辻君と仲が良い雪花さんが一人でいたから話しかけたんだ!」
「はい、そうです。」
雪花のために休憩挟んだのに疲れた表情をしている。
酷いことするなぁ…
「で、用件は?」
「えーと、中学校の事はごめん。本当は綾辻君を利用しようとしとた。」
「どういうこと?」
「オブラートに包んで言うと金ヅルよ!」
「全く包んでないし、つか金ヅルって…」
僕は流石に引いた。
雪の隣の雪花は引き気味になっている。
「あの時はクラスカーストにしか興味がなかったの。綾辻君はいつも上位に位置にいたし、顔もカッコいいし勉強とスポーツもそこそこできてたし、金も…ね!」
「僕の外見にしか興味ないじゃないか。」
僕は呆れていた。
「だから綾辻君。私と別れて正解だったんだよ…」
少し彼女は悲しそうな表情を浮かべている。何かを全て終わったような…あの時「だらしない人嫌い」と言った時と同じ表情だった。
「後ね、あの子たちにも感謝した方がいいよ。全て綾辻君のために色々私の計画の邪魔をしてたんだから。」
「確かに、いつも邪魔されたな。てっきり僕の邪魔して楽しんでたのかと思っていたよ。」
内心ごちゃごちゃしていた。
確かに、僕と春乃、唯葉はあの時から空回りし、気持ちのすれ違いが溝を深めてしまった。
「そうね。お互い思い合ってれば通じるなんていうのは幻想だよ。私と綾辻君も一緒。だから……」
「わかってる……だからもう一度話し合わないとな!という事で勝手で申し訳ないけいがちょっと行ってくる。もう一つの噂は夜に通話で話そう!明月。」
雪花はなんとなく察してはにかみながら
……
「わかりました。綾辻君!」
僕は急いでいつも通ってたはずの部室に向かった。
―月夜雪―
彼の背中を見るたびにあの時の出来事を思い出す。
お祭りの時下駄の鼻緒が切れた時彼におんぶされた時の出来事。
あの時の背中の熱量が身体に伝わった時私の黒い心を浄化されていく感覚になった……
でもね結局変われなかった。
だって私は夜に染まった雪だったから……黒い心は溶かしきらなかった。
「どうしたの月夜さん??」
「ごめんなさい少し取り乱してしまって……今日は帰りましょうか。」
「そうですね。もし良かったらまたお話ししませんか?」
(明月さんは優しい人だね。もし変われたら友達になりたいな……)
「ごめんなさい。だけど、いつかまた話しましょう。」明月さんは不思議なそうな顔をしている。
「はい。またいつか!」
―部室―
「今日も綾人は彼女とデートかよ。瑛人と留衣もだし!リア充ばっかだ!!」
新田翔は今日も暇そうにしながら皮肉を言った。
「バスケはどうしたの?」
春先春乃はるさきはるのが問う。
「なんか最近バスケのコートが取られちまってさ。あのバドミントン部の何だっけ?一年で主将の相澤領だっけか?」
「あ〜噂聞いたことある。相澤君に逆らった奴は必ず潰すんだって。その後相澤君の命令は絶対になるんだって!!」
芦田碧あしだあおいは言った。
「さすが先輩物知りっすね!!」
いやいや〜と照れている先輩がいたが急に真面目な顔になる。
「最近、唯葉ちゃんも部活来なくなったし心配だわ。」
「そうですよね。」
「だな。」
…………………
気まずい雰囲気になった。
「ガラガラ〜〜ーー!!」
ドアが勢いよく開けられた。
「ハァハァ!!」
僕は全力疾走で息を切らしていた。
「春乃と唯葉いるか?」
周囲を見渡したが唯葉がいない。
「唯葉はどこだ??」
「お前いきなり来たかと思うけど二人にだけしか用がないのかよ!!」
翔がしょぼくれているが付き合っている暇はない。
「唯葉は多分帰宅したよ。」
「わかった!俺が連れてくる……少し待っていてくれ!!」
みんな動揺していたが僕は全力疾走で寮であるマンションに向かった。
「一体何だったんだ?」
「さぁ」
身体が火照り汗が滴り落ちる。
運動不足のせいか息が切れ、苦しくなっていく。
ようやく十階建のマンションに辿り着き、十階に向かうためエレベーターに行くが故障中の看板があった。
(嘘だろ??!……)
僕は急いで1.2.3………階へと駆け上がっていく。そして、ようやく十階にたどり着いた。
「ハァハァハァハァ…………」
もうバテバテで死にそうになったが呼び出し鈴を押した。
「ピンポーーン!」
「唯葉。お前を向かいに来た!!」
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