小話詰め合わせ

 某サイトでの感想返信として載せた短編を纏めました。記憶を辿りつつお読みいただければと思います。


 11話


 ~女性社員視点~


 待ちに待ったお昼休み、誰よりも早くPCを片付けて食堂に向かった。定食を選んで席に着けば、直ぐにいつものメンバーが集まってくる。皆考えることは同じらしい。


「それで、どういうこと?」

「高野さんと山崎さんが一緒に出勤してきたって本当?」

「たまたま一緒になった、とかじゃないんですか?」


 朝一でチャットが届いてからずっと気になっていたことを聞けば、ほかのメンバーも質問を重ねる。みんなも気になっていたみたい。


「たまたま一緒にって事は無いな」

「なんで??」


 確信があるって事?


「山崎さんがエレベーターの角に高野さんを誘導してたし、凄く優しい目で高野さんの事見てたもん。それに……」

「「「それに??」」」

「高野さんが……侑、ありがとう。またね、って」

「うっわ!!」

「名前呼び!?」

「しかも呼び捨て……」


 これは確かに、たまたま一緒になった、ってことは有り得ないわ。高野さんと山崎さんが知り合いだなんて聞いたこと無かったけどな……


「あの2人が接点あるなんて知ってた?」

「知らない」

「私もです」


 やっぱり誰も知らないよね……2人が知り合いだったからって何? って思われるかもしれないけれど、あの2人は別。


「ただの友人だと思う?」

「朝の感じだと付き合ってる、って言われても違和感ない」

「うわ、見てみたいです!」

「2人がもしそういう関係だったら荒れるんじゃ……?」


 高野さんは男性人気が凄くて、でも媚びてるって感じは全くなくてキリッとしていてかっこいいから女性社員からも慕われている。山崎さんはそれはもう整ったお顔で、クールだけど優しくて女子からの人気が凄い。


「でもさ、あの2人が相手で自分の方が、って自信持てる人がどれだけいるかって感じじゃない?」

「確かに」

「山崎さんのこと好きな女子は諦めるだろうね。高野さんを好きな男性陣は性別の事もあるし俺の方が、って言う人が出てきそうだけど」

「山崎さんと男性社員で高野さんの取り合い!? やば……!!」


 まだ付き合ってる、って言う確証がある訳でもないのに盛り上がってしまった。実際どうなのか分からないけれど、2人揃っている所を見られる日を楽しみに待っていよう。


 ~キスマーク発言その後~


「侑? キスマークそんなに許してたの?」←侑を見下ろしつつ

「え、その……どうしても、って言われた時は……また嫌な思いさせちゃってごめんね」←しゅんとするワンコ

「……おいで」←侑の可愛さに負ける玲依


 12話


 ~玲依に諸々暴露された侑の心の声~


「玲依ちゃん助けてー! ……玲依ちゃん、それ何杯目??」

 あれ、なんか玲依ちゃん酔ってる……? え、トロン、としてて可愛い。


「え? いつから日本酒??」

 さっきが2杯目なら3杯目ってこと?? ビールも結構飲んでたよね? 玲依ちゃん、お酒強いの……?


「待って!? 待って!! 玲依ちゃんダメだって!!」

 ん? って首を傾げてて可愛すぎるけど、これは確実に酔ってる……


「ん。玲依ちゃん、ちょっと飲みすぎたね」

 ぎゅーは? とか可愛すぎるでしょ。……あ、寝た。早……子供みたいで可愛い……え、ほんと可愛すぎて無理……


 15話


 ~佐藤くん視点~


「佐藤くんお疲れ様。ありがとう」

「いえ!! お疲れ様です!」


 仕事を終えてエレベーターに乗ると、高野さんが見えたからドアを開けたまま待てば笑顔でお礼を言ってくれた。課は同じだけれどグループが違うから接点がほとんどないのに、名前(名字だけど)を覚えていてくれて嬉しい。


 何か話しを、と思っても緊張してしまって話しかけられない。高嶺の花だし、男の俺から見てもイケメンな先輩も相手にされてないって話だし。


『1階です』


 エレベーターで二人きりなんて今後無いかもしれないし、もしかしたら奇跡が起きるかもしれないよな、と話しかけようと決意したけれど1階に着いてしまった。タイミング……


 先に降りてもらえば、ありがとう、とまた言ってくれて颯爽と歩いていった。はぁ、綺麗でかっこいいな……って見送ってる場合じゃなかった。


「あの、高野係長!」

「……ん?」

「明日1日研修なので……一日早いですが、お誕生日おめでとうございます」

「ありがとう。研修……そっか、川上さんと同期だっけ」

「はい」

「しっかり学んできてね」


 川上……毎日高野さんと一緒に仕事が出来るとか羨ましい……代われ。

 この流れで駅まで送らせてもらえたりなんてしないかな、と送ろうとしたけれど断られてしまった。迎えって誰が、と思ったら高野さんから荷物を受け取ったのは山崎さん。……山崎さん??


 山崎さんを見上げて笑う高野さんの顔は女の子、って感じで普段のキリッとしている姿とは全然違った。


 駅とは反対に歩き出した2人をボーッと見ていれば衝撃の光景……え、高野さんから腕を絡めに行った……は?? どういうこと?? 混乱した頭のまま、明日川上に聞いてみようと決意した。


 ~翌朝の佐藤くん視点~


 昨日見た光景が忘れられずに迎えたお昼休憩、同期が集まるところに行けば川上の横が空いていた。


「お疲れ。川上に聞きたいことあるんだけど」

「お疲れー。聞きたいこと?」

「昨日高野係長と帰りが一緒になったんだけどさ……」

「あ、振られた?」

「振られてねーし」


 そもそも告白してないっての。


「送ろうとしたんだけど迎えが来てるって断られて……」

「なんだ」

「驚かねーの?」

「迎えに来た人によっては驚くかも」

「……山崎さん」

「そっか」


 この反応、何か知ってるな……


「もしかして何か知ってる?」

「休日出勤終わりに迎えに来てたよ」

「休日出勤終わり……」

「迎えが来てる、って聞いてたから誰かなって思ってたら山崎さんで、お互い微笑みあってて、なんかもうお似合いだった」


 思い出しているのかニヤニヤしている川上の言う通り、確かに醸し出す空気が甘かったような……休日にも会う仲って事だもんな……


「なになに? 誰と誰がお似合い??」

「あー、高野さんと山崎さん」

「あの2人って接点あるの?」

「昨日の夜山崎さんが迎えに来てた」

「え、今日って高野さん誕生日だよね……?」

「うわ、誕生日を一緒に過ごす仲だったりするの……?」


 後から来た同期が話に混ざってきて、さらに盛り上がる。あの時間に迎えに来てたってことはそういう事なのか……? 友達同士で腕を組むのって普通なのか……? 男同士ではまず無いけど女性は手を繋いだりするって聞くもんな?? 


「なあ、女友達と腕組んだりする?」

「する!」

「私はしないかなー」

「そうか。うん、そうだよな! することもあるよな!」

「佐藤、大丈夫……?」


 心配そうに見られたけれど、きっと気の合う友人、ってことだよな。うん、そうに違いない。そうであってください……


 21話


 ~玲依が起きた後の話~


 インターホンの音で目が覚めて、少しすると侑が戻ってきた。


「あ、玲依ちゃん起きたんだね。おはよう」

「おはよ」

「ちょうどご飯届いたよ」


 リビングに行けば、前に食べたいと言っていたサンドイッチのお店の袋が置いてあった。覚えててくれたんだ。


「玲依ちゃんが前に食べたいって言ってたお店ってここで合ってた?」

「うん。合ってる。覚えててくれたんだね」

「へへ、良かったー!」


 テーブルに並べてくれて、照れくさそうに笑っている。


「さ、食べよ!」

「どれも美味しそう。侑はどれがいい?」

「うーん、悩む……」

「半分こする?」

「する!! ……はい、玲依ちゃんの分」

「ありがと」


 私が食べるまでじいっと見つめられて、美味しい、と伝えれば嬉しそうに笑って侑も食べ始めた。あ、美味しかったみたい。ぱあっと笑顔になる侑は相変わらず幸せそうで可愛いなぁ。


 23話


 ~ある日の企画課~


「うん、いいと思う。これで進めて」

「はい。あ……」

「ん?」

「いえ、ありがとうございました」

「うん。よろしくね」


 係長に承認を貰い席に戻ったけれど、気になるのは髪を耳にかけて資料を添削してくれた時にちらっと見えた紅い痕……虫刺されか、それとも……?


 ちらちら係長を気にしていたら同僚から怪訝そうな視線向けられた。他に気づいている人は居るのかな?


 お昼休憩明けに別件で相談があって係長の席に行けば、直ぐに時間を取ってくれた。資料を読むのに髪が邪魔だったのかまた耳にかけようとしたけれど、ハッと止まって手を下ろした。それから何事も無かったかのように資料を確認してくれて、アドバイスを貰った。


 お昼に同期の方から何か言われたのかな……? 隠すってことは、虫刺されじゃないっぽい?

 係長の恋人ってどんな人なんだろう? きっと年上で大人な包容力ある人なんだろうな。


 25話


 ~実家編~


「れーちゃん! ゆなも入るー!」

「うん、一緒に入ろっか」


 姪っ子の由奈が一緒に入る、と言ってくれたから2人でお風呂場に向かう。由奈の服を脱がせて、さて自分も、と思って気づいた。え、私これ脱いで大丈夫?


 ……4歳だし、虫刺されってことにしよう。うん。そうしよう。


「ねー、れーちゃん、なんか赤いよー?」

「これ? 虫刺されかなー」

「えー、そんなにさされちゃったの? でたらおくすりぬってあげるね!」

「あはは、ありがとう」


 洗い終えて湯船に浸かりながら、心配そうに見てくる純粋な由奈に罪悪感……


「ママにおくすりもらってくるー!」

「ちょっと由奈待っ……!!」


 まだ拭き終わってもいないのに走り去った由奈……仕方ない、大人しく薬塗ってもらうか……


 とりあえず上は下着でいるとして……下は履いちゃっていいかな。太ももとか際どいところは見られてないと思うし。


「もってきたよー!」

「ありがと……って千紗姉も!?」

「おー、これはまた、随分刺されたねー?」


 千紗姉、ニヤニヤしすぎでしょ……


「なんで千紗姉も?」

「由奈に聞いたられーちゃんが沢山虫に刺されちゃって大変! って言うから面白……心配で」


 今面白そうって言おうとしたよね?


「あ、私とお母さんしか聞いてないから安心して」


 それは安心できることなのか……シスコンな兄に聞かれなかったのは良かったけど……

 薬を塗り終えた由奈は満足気に出ていったけれど、何故か残る姉……


「……なに?」

「で、どんな人? 連れてきたら良かったのに」

「あー、まだ付き合い始めたばっかりだし、歳下だし……」

「これだけ痕ついてれば歳下だろうなと思ったけど……いくつ?」

「22」

「思ってたより若いわー。玲依が歳下を選ぶとは」

「もういいでしょ」

「はいはい、紹介してくれるのを楽しみにしてるわー」


 ルンルンで出ていった姉を見送って、帰省前はキスマーク禁止令を出そうと心に誓った。



 その後の2人


 ~翌朝のバカップルの会話~


「侑、おはよう」

「れーちゃんおはよ。首痛くなかった?」

「全然。侑は腕痺れてない?」

「……大丈夫」

「その割に手の位置動いてないけど?」

「あ、ちょっと、触らないで!?」

「やっぱり痺れてるんじゃんー」

「ちょ、ほんとに、ダメだって!!」

「フリかな?」

「違うって!! わー、いた、痛いって!!」

「ふふ、ごめんね? 侑が起きた時に起こしてくれて良かったのに」

「だって……」

「ん?」

「腕枕で安心したように寝てくれるとか幸せだったんだもん」

「え……」

「引いた?」

「ううん、嬉しい」

「れーちゃん、動けないからちゅーして?」

「うん」

「あー、ぎゅってしたいのに動かないやー」

「ふふ、ぎゅー」

「すきー!!」


お読みいただきありがとうございました!!

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