11.お泊まり②
「侑」
「ごめんなさい……」
目の前にはぐったりした玲依ちゃん。まだ何も言われてないのに、反射的に謝ってしまった。ちょっと、いや、かなり? 無理させました……
好きな人に触れるのがこんなにも幸せなんだって初めて知った。浮かれすぎてキスマークも付けてしまったし、もう無理だという玲依ちゃんを攻め続けてしまった。
「侑、体力ありすぎ……毎回こう……? これから私大丈夫かな……?」
「いや、私も初めてで……」
不安そうにされてしまったけど、私自身驚いてるというか……
「え??」
「こんなに抑えられなかったことなんてないし、キスマークだって付けられることはあっても付けたことなんてない」
玲依ちゃん、可愛かったなぁ。服を着ていてもスタイルがいいな、と思っていたけれど脱がせたら予想以上で、それはもう素晴らしいものをお持ちでした……
「侑。もう無理だからね」
「あ、ごめん。触るだけ」
裸の玲依ちゃんを見ていたらまた触れたくなってしまって、自然に胸に手が伸びていた。柔らかー
「ねえ、服着ていい?」
「もうちょっとだけ」
「変態」
「うん。玲依ちゃんの胸に触れるなら変態でいい」
「いいんだ……」
ちょっと冷たい視線にゾクゾクする。本格的に変態かもしれない……
「ゆーちゃん、ぎゅーして?」
服を着て、玲依ちゃんを腕枕していれば甘えた口調でお願いされて、玲依ちゃんを強めに抱きしめた。可愛すぎる……
少ししてキスをしようと覗き込めば眠かったのか玲依ちゃんはもう寝ていた。
眠い時の玲依ちゃんは甘えん坊になるのかな。しっかりしてる時とのギャップやば……!!
明日は玲依ちゃんに合わせていつもより早い時間に起きるし、私も寝ないと、と思うのに全然眠くならなくて、ぐっすり眠る玲依ちゃんをずっと眺めていた。
「侑。ゆうー? ゆーちゃん。起きられる?」
「ん? 朝??」
「うん。朝。ご飯できてるから顔洗っておいで」
いつの間にか寝ていたみたいで、玲依ちゃんの優しい声で目が覚めた。幸せ……
顔を洗ってからリビングに行けば、玲依ちゃんが朝ごはんを運んできてくれた。朝ごはんを食べるなんて久しぶり。
「玲依ちゃん、ありがとう」
「ううん。食べよ」
「いただきます。わ、美味しい!」
「ふふ、良かった」
いつも私が食べる様子を嬉しそうに眺めているけど、楽しいのかな?
「ご馳走様でした。お皿洗っちゃうね」
「いいの? ありがとう」
ご飯は作れないけれど、洗い物はできる。玲依ちゃんって苦手なことあるのかな?
洗い物を終えてリビングに行けば、玲依ちゃんがメイクをしていた。人のメイクってじっくり見ることがないからなんか新鮮。リップを塗る仕草がなんかエロい……
昨日の玲依ちゃんを思い出してしまってまた触れたくなって、自分の感情に戸惑うけど、玲依ちゃんに見惚れてる場合じゃなかった。私も早くメイクしないと。
「準備できた?」
「ばっちり!」
「よし、行こ。あ、忘れてた。侑、ちゅーは?」
玲依ちゃん、上目遣いでそれはダメでしょ……今日仕事休んじゃダメかな?
「してくれないの?」
「する!! 玲依ちゃん、好き!!」
「んんっ……ゆ……っ、ふぁ……」
「……んっ、ごめん、リップ取れちゃった。玲依ちゃんエロい……仕事行きたくない」
「侑、朝からこんなキスはダメ」
「えぇ……だって玲依ちゃんがしてって」
触れるだけのキスしかダメだったってこと? でも玲依ちゃんが可愛いから……
「あんなキスされたら私も仕事行きたくなくなるじゃん……」
「えっ、玲依ちゃん……って待って!?」
恥ずかしかったのか私を置いて玄関に行ってしまった玲依ちゃんを慌てて追いかける。朝からこんなに幸せでいいのかな??
並んで歩きながらたわいもない話をしていると、会社が近づいてきた頃に玲依ちゃんのスマホが鳴った。
「侑、ちょっとごめんね……もしもし? うん。もう着くけど……分かった。すぐに行くから状況だけ纏めておいてくれる? よろしくね」
「トラブル?」
「うん。ごめん。ちょっと急がないと」
玲依ちゃんは対応を考えているのか、真剣な横顔がかっこいい。奈央がキリッと、って言っていた意味が分かった。こんなの、もっと惚れるんですけど……
会社に入れば、一緒に出勤してきた私たちに驚いたような視線が集中した。玲依ちゃんは全く気にしていないけれど、男性社員からの熱い視線が凄い。この人は私のですからね?
フレックスタイム制だけれど、この時間帯に出勤する人がそれなりに多くて混み合うエレベーターに乗って、角に玲依ちゃんを誘導して前に立つ。玲依ちゃんの方が下の階で良かった。
玲依ちゃんのフロアに到着するまでに何人か降りて少しスペースに余裕が出来たけれど、男性社員に見せたくなくて位置は変えなかった。
「侑、ありがとう。またね」
「うん」
玲依ちゃんが降りる階で横にずれれば、笑顔を見せて足早に事務所に向かっていった。はぁ、可愛い……
仕事を始めて少しすると奈央からチャットが届いた。開けば、金曜の定時後集合、と書いてある。もう奈央の耳に入ったのか……
会社では会うことは無いけれど、連絡は毎日取って迎えた金曜日、目の前にはわくわくした表情を隠さない奈央の姿。
「侑、月曜日に高野さんと一緒に出勤したんだって?」
「うん」
前と同じ居酒屋でご飯を食べながら、奈央がニヤニヤしながら聞いてくる。
「知ってる? って聞いてきてから2ヶ月くらい? 何があったの!?」
「まあ、色々ありまして……付き合うことになりました」
「え!? いつから?」
「先週日曜から」
「過去のことは?」
「話して、受け止めてくれた」
「うわ、やば……!! 良かったね……!!」
興奮状態の奈央が落ち着くまで待っていると、玲依ちゃんからメッセージが届いた。玲依ちゃんも同期と飲みに行くことになったみたい。
「高野さん?」
「うん。玲依ちゃんも同期と飲みに行くって」
「玲依ちゃん……!!」
「今度紹介するね」
返信を送ろうとしたら、玲依ちゃんから電話がかかってきた。
「ごめん、出ていい?」
「うん」
「もしもし? 玲依ちゃん?」
『ごめん、同期2人が侑に会いたいらしくて……一緒になんてダメかな?』
「待ってね。奈央、玲依ちゃんと同期の人も合流してもいいかな?」
奈央が良ければ私は全然いいんだけど。
「もちろん! 楽しみー!」
「玲依ちゃん、大丈夫だよ。場所分かる?」
『うん。分かる。これから行くね』
電話を切れば、もう奈央はそわそわしている。
「これから来るって。今度、って言ったけどこの後紹介するね」
「どうしよ、会社からここまでなんてすぐじゃん……心の準備が……」
「店員さんに3人増えるって伝えてくる。隣空いてるから大丈夫だと思うけど」
隣の席を確保したところで、ちょうど玲依ちゃんが入ってきた。
「玲依ちゃん、お疲れ様」
「侑、ごめんね」
「ううん。私の同期にも紹介したかったし」
申し訳なさそうな玲依ちゃんの後ろには興味深そうにやり取りを見ている女性2人。
「まとめて自己紹介しよっか。案内してくれる?」
「うん。こっち」
玲依ちゃん達を連れて戻ったら奈央びっくりしそうだな……
「奈央、お待たせー」
「ううん、席取れた……? って朱音さん??」
「あれ、奈央ちゃんじゃん」
ん? 奈央の知り合い……?
「朱音、知ってるの?」
「うん。同じ部署の後輩」
「あ、そうなんだ」
玲依ちゃんも知らなかったのかびっくりしてる。これはどういう順で自己紹介するべき……? 玲依ちゃんを見れば、頷いてくれたから任せることにした。
「じゃあ、私から時計回りで自己紹介しよ。企画課の
「玲依の同期で奈央ちゃんと同じ営業1課の
「広報課の
「営業1課の
「総務の
こんなに早く玲依ちゃんの同期に会うとは思わなかったけど、私の知らない玲依ちゃんの事を沢山教えて貰えたらいいな。
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