第14話 次の地へ……?
口の中を甘ったるくした後は、商店街をぶらぶらして時間を過ごした。
七瀬は熱海周辺の観光スポットをいくつかピックアップしてくれていたが、「これじゃ熱海旅行になってしまうわね」と次の地へ行くことになった。
ミーハー旅行者の俺たち的には、今回の旅は広く浅く。
世界一周旅行みたいに、色々な県の有名所を押さていくほうが良いよねという方向性になった。
というわけで熱海駅前広場に戻ってきた。
午前中、ハタチのギャルとわちゃわちゃした家康の湯が視界に映ると、懐かしい気分が胸に到来する。
「(……短い間だったけど、楽しかったな)」
足湯、海鮮丼、温泉、ぷりん、商店街。
観光時間は数時間だったが、濃密な時間を過ごすことができた。
特に瑠花さんとの邂逅は衝撃的だった。
普通に過ごしていたら出会えないような人と出会えて、とても新鮮な気持ちになった。
告白の結果が聞けないのが惜しいが、仕方がない。
一期一会というのはそういうものだ。
思い出の残滓を手繰り寄せるように、ふと、家康の湯に目をやる。
まるで瑠花さんがそこにいるような錯覚を覚えるほど、彼女のとやりとりが鮮明に思い起こされて……。
「お、また会ったね、かーくん、りっちゃん!」
セミロングの金髪、首元を開けたブラウス、腰にクリーム色のカーディガン。
快活な笑顔が嬉しそうに煌めく。
錯覚じゃなく、実体がそこにいた。
「……行くわよ、高橋くん」
七瀬が面倒事は御免だと言わんばかりの表情で先を急ごうとした。
「ああー! ちょっと待ってりっちゃんー!」
ばしゃんっと足湯から上がった瑠花さんは、靴下も履かず七瀬に追い縋って抱き着いた。
「ちょっ、離れなさい!」
「やだー! 離れない! 会いたかったよーりっちゃん!」
「あっ、こら! 変なところ触るな!」
すりすりと頬ずりする金髪美少女と、頬を赤くし息を荒げる黒髪美少女。
嗚呼、神よ。
熱海の地に綺麗な百合の花が咲きました。
「いい加減離れなさい! 私にそういう趣味はないから!」
七瀬が百合の花を毟り取った。
「とっ、というか、告白はどうなったのよ? 結果によってこれは浮気行為に該当するわ!」
うおおおおい!
それ一番慎重に触れないといけない話題だろ!
ハッと、七瀬が口を押さえる。
多分、咄嗟に出てしまったんだろう。
ぴたりと、瑠花さんの動きが止まった。
ゆっくりと、七瀬から身を離し、ぽつりと言った。
「ダメだったよ」
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