第8話 再びの危機



 それは偶然だったのだろう。


 買い出しの最中に道を歩いていた私は、不運だったようだ。


 以前私を捕まえていた盗賊の一人と鉢合わせてしまった。


 どこかの牢獄に囚われているはずの盗賊だが、風の噂で何人かが脱獄したと聞いた。


 だから、その内の一人だったのだろう。


「お前はっ、あの時の宝石を出す娘! 容姿は変わってるけど、毎日ずっと見てきたんだ、間違いねぇ! 貴重な金づるを逃してたまるか!!」


 そうして、お金に困っていた様子の盗賊に、私はまた攫われてしまったのだった。


 脳裏によみがえる過去の光景。


 またあんな目に遭うのかと絶望しそうになっていたけれど、すぐに騎士の男性が助けに来てくれた。


 盗賊に殴られそうになっていた私の元にやってきてくれた彼は、とても頼もしかった。


「もう大丈夫だ。駆け付けるのが遅くなってすまない」


 その時、彼に助け出された私は、その胸に抱き着いて泣いてしまった。


 両親に再会した時以来の大泣きだった。


 生きている限り、これからも辛い事や悲しい事があるのだろうけれど、もう絶望に膝を落とす必要はないのだと思えた。


 窮地に落ちている自分を助けてくれる人がいる事が、とても心強く感じられたのだ。


「君がいなくなったと聞いて、いてもたってもいられなかったんだ。怪我もないようでほっとした」

「助けてくれてありがとうございます。本当に。貴方は私の体だけでなく心も救ってくださいました」


 だから、同じように苦しんでいる人がいたら、今度は私が助けてあげようと思った。


 私が攫われたその場所を詳しく調べていくと、私と同じような境遇の人達がたくさんいる事が分かった。


 その人達も、盗賊に攫われてしまったらしい。


 どこかの組織に売られて、お金に代えられてしまう所だったようだ。


 だから、私は彼等を保護する事にした。


 そして今まで働いて得た給金で、その人達の役に立つ事に使おうと決めたのだった。


 将来は、私の目の前にいるような、不幸な目に遭っている人達を助ていきたい、とそう思った。


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