第6話 前向きな追放の提案



 そうして私は、今度こそ元の家へ帰る事ができたのだった。


 慣れ親しんだ屋敷の前に立った時は思わず、涙ぐんでしまった。


 出迎えた使用人がバタバタするのを眺めながら感慨にふけっていると、最後に会った時より少しだけふけてしまった両親が、こちらへやってきた。


 久々に再会した両親は驚いて、そして喜びながら私を抱きしめてくれた。


「よく無事でいたわね。もう一生会えないかと思ったわ」

「お帰り。怪我はないのかい? 生きていてくれて本当によかった」


 そして私は、たっぷり一時間も、両親の腕の中で涙を流してしまった。

 小さな子供の頃に戻ったように、次から次へと感情があふれ出してくる。

 なかなか涙が止まらなくて大変だった。


 そこで、私は自分が長い間泣いていない事に気が付いたのだ。


 けれどもう、泣くことができる。

 何かを望む事を、考える事を我慢しなくても良いのだ。


 送り届けてくれた騎士にむけて、両親はとても丁寧にもてなした。


 そして、互いの屋敷の場所を教えて、別れる事に。


 彼が去っていく後姿を見送った時は、とても名残惜しかった。






 

 故郷に戻った私が落ち着いた頃、両親が提案してきた。


 加護を持っている私は、この先また危険な目に遭うかもしれない。


 だから、実力のある人に守ってもらいながら過ごす方がよいだろうと。


 そう言ってそこで、私を助けてくれた傭兵の、ではなく今は騎士になっている男性の元へ行くのが良いのではないか、と言われた。


 彼なら何かあっても助けてくれるだろうし、不当な扱いをする事もないはずだから、と。


 両親は私の意見を尊重してくれるようだ。


 どうしたいか自分で決めて良いといった。


 私は二人の提案に賛成だった。


「私もあの人の傍にいたいです。でも、守られるばかりは嫌です。だから何かお礼をしたくて」


 それはこの先の事を決める大事な話。


 だから、私達は互いにじっくり話し合ってから、結論を出した。


 出した結論は常識外れもの。


 それは、貴族の家を追放されたことにして、使用人として彼の力になるというものだった


 宝石の加護を持つ少女の名前は、おそらく有名になってしまっている。


 見世物にされた私の事は、多少ねじ曲がっていたがこの国にも届いていたようだ。


 だから可能ならば、元の名前や貴族の身分は捨てた方がいいという事だ。







 両親は一応、この国までとどいた「宝石を出す娘」の噂を確かめようとしたらしい。


 しかし、いざその国まで行ってみると、見世物にされている娘は別人だったため、人違いだと思って帰ってしまったらしい。


 おそらくそれは、私が体調を崩していた時の事だろう。


 美術館にいた時、何度か病気になってしまった事がある。


 そういった日は、身代わりの人間が展示される事になっていた。


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