第4話 異国でも利用される
親切な傭兵の手によって然るべき場所に送り届けられた私は、保護された時に事情聴取された。
私は一応、宝石の加護の事は黙っていたけれど、捕まえられた盗賊達が喋ったのだろう。
力に目をつけられた私は、また人に利用される事となった。
私が保護されたのは、故郷の国とは別の国。
その国の要人達は、みな自分の事しか考えていなかった。
彼等は、自分達の立場や権力を使ってやりたい放題するような者達で、私が宝石を出せる力を持っている事を知ると目の色を変えた。
「宝石を出せるなんて、珍しい娘だ。私の所で飼わせてくれ」
「何を言ってるんだ。独り占めする気か? 私に譲ってくれよ」
「いや、私にこそふさわしい。こんな見た目も美しい娘、めったにいないぞ」
その後は、珍獣のように観察され、ペットのように扱われながら、お金持ち達の家を渡り歩くようになった。
盗賊達の元にいた頃は、ボロ布をまとった薄汚い娘だった
だが、栄養のある食べ物と、暴力に怯えず睡眠がとれるようになった事で、貴族として生活していたころの見た目に戻っていたという影響もあったかもしれない。
私は生ける宝石だと言われた。
だが彼らの傲慢な行動は、ペット扱いだけでは終わらなかった。
「宝石が出せる娘なんて国の良い宣伝材料になるぞ! この娘を美術館に飾ろうではないか!」
「良い考えだ! きっと人がどんどん集まってくるに違いない」
「観光の目玉にしよう!」
暴走した彼らの欲望は、そんな信じられない所へ行きついたのだった。
要人達の間で見世物にされた後は、その国の者達や他国の者達の見世物にされてしまった。
美術館に飾られるようになった私は、それからも理解できない考えにふりまわされた。
「なぜいつもそんなつまらない顔をしているのだ? 笑え! 展示されている時間は笑みを浮かべていろ! その娘に笑顔の練習をさせれば、見に来た連中はもっと喜ぶに違いない。おい、なぜそんな顔をする! 笑い方も知らんのか!」
「踊りの練習をさせてみればどうだ? 金ならいくらでもある、とびっきりの教師を探そう。なに、いやがっても無理やりいう事をきかせればいい。きっと良いショーになるはずだ」
「楽器の演奏をさせてみたら良いのではないか? 音楽があるとより一層華やかに見えるだろう」
彼らは自分達の要求を無理やり私につきつけてきた。
私が言う事を聞かないと怒鳴り散らし、人から見えない部分を殴り、痛めつけ。何度も辛い罰を与えられた。
私は、彼らの元から何度も逃げようとしたが、それは毎回失敗してしまう。
荒れくれ者達の拠点で監禁されていた頃よりは監視が緩かったけれど、それは何の救いにもならない。
脱走しようとした事が分かったら、その後酷い罰を与えられるのだから。
希望を見せられた後に、そこから落とされた時の絶望感は大きかった。
何度も失敗するうちに私は、抵抗する気力がなくなってしまっていた。
もうこれ以上ひどい目に遭いたくない。
だから、今の状況を我慢して耐えようと思う様になったのだ。
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